第12話 敵手
[なあ 有坂。最近春姫に何かあったのか?]
[ん?なんだ急に]
勉強会が終わった日の夜。
僕は有坂とラインで連絡を取った。
[悪い話じゃないんだけど、僕に対して妙に素直というかデレて来るんだよな]
[そうなのか?でも大和って栗平とは距離を置いたんじゃなかったっけ?]
[そうだったんだけど、有坂から春姫が孤立してるって話を聞いてたから無下にも出来なくてな。それに・・・・今の春姫は正直それほど嫌じゃない]
[まぁ元々距離を置く理由が栗平の我儘や罵詈雑言だったからな。それが無いなら普通に可愛い大和君の初恋の人ってところだよな♪]
[うっ・・・まぁ間違いじゃないけど。って話を戻すけど何か知らないか?]
[詳しくは知らないけど、和泉さんの影響じゃないか?]
[和泉さん?なんで?]
[和泉さんって、この間の親睦試合の行動見ても確実に大和の事好きだろ。普通試合後の選手に部外者が近づいたりしないぜ。目の前に大和を狙う恋敵があらわれて焦ったんじゃないか?今迄みたいにしてたら大和を取られるって]
[春姫がか?]
[だと思うぞ。にしても和泉さんも結構可愛いし大和は今がモテキだな]
他人事だと思って。。。
でも、そうかまぁ確かにそれなら何となく合点もいくけど・・・
それに和泉さん。結構積極的というか僕への態度もあからさまだったもんな。
悪い子じゃないと思うし友達にはなったけど・・どうしたらいいんだ僕は。
[あ、それから大和。僕もお前に礼が言いたかったんだ]
[僕に?]
[そうだ。お前に完敗して以来、豪徳寺の奴が練習に真面目に取り組むようになったんだ。恥ずかしながら今のところ部内の練習試合は全敗状態だよ。以前の豪徳寺になら3戦して1勝くらいはいけたんだけどな]
[え~と、僕より有坂の方が全然テニス上手かったじゃないか。それで全敗なの?]
[そ。元々僕らの地区じゃ川北のテニス部が一番レベル高かったし豪徳寺はそこのエースだったから川野中の部長だった僕や、お前んとこにいる川南中の秦野なんかと比べても実力的には断然上なんだよな]
[・・・やっぱり豪徳寺って僕の事マークしてたりする?]
[あぁ次の親睦試合ではストレート勝ちするって気合入ってるぜ]
[何だかお腹痛くなってきたんだけど、当日休んでいいかな・・・]
[ま、大和も素質あるって阿部さんに言われたんだろ?あの人結構凄い人なんだぜ。しっかり練習見てもらえば良い勝負できるんじゃないか]
[そうだといいんだけど・・・]
[まぁそんなに暗くなるなって。あ、若菜からメッセージが来た。
悪い大和続きはまた今度!]
[彼女からの連絡か。ありがとな遅い時間に]
はぁ。。。この間の試合は豪徳寺も練習不足なうえに僕の事を下に見ててくれたから何とかなったけど、有坂が全敗するようなレベルになったら本当にストレート負けするかもしれないぞ。
どうしよ。とりあえず阿部部長と藤崎先輩に相談かな。
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<栗平 春姫視点>
大和・・・やっぱりカッコよかったなぁ~♡
私は勉強会から帰宅後、今日の事を思い出しながら1人スマホを弄っていた。
私が作ったご飯を美味しいって言ってくれた。
ちょっと嬉しいかも。
それに私のお願いを聞いて勉強も教えてくれた。
教え方も凄く上手かった。
ただ問題の答えを教えるだけじゃなくて自分で考える様にコツだけ教えてくれるのよね。あれなら千歳や佐和の成績が上がったのも頷ける。
今日はタイミングを逃したけど今度会ったら今まで馬鹿にしてたことも謝らなくちゃ。
それから和泉さん。
彼女にも感謝しなくちゃ・・・彼女が居なかったら私は変われなかった。
だけど、急に私が素直な感じになって大和は変に思わなかったかな。
最初の内は絶対変な感じで見てたよね・・・
でも、もう大和が私から離れていくのは嫌だしこれ以上嫌われたくない。
私が変わればきっと大和もまた私の事を・・・
[ピン]
和泉さんから?
[こんばんわ。今いいですか?]
[ええ大丈夫よ]
[今日は2人きりのところお邪魔してすみませんでした]
[ 気にしないで。あんまり考えてなかったけど抜け駆けって言われちゃうとね]
[ありがとうございます。でも、栗平さんは幼馴染ってだけでも私より有利なんですから2人きりとか私も焦りますよ]
[そんなことないわよ。私はあいつに酷いことしてきたんだし、会ってもらえただけでも今は嬉しい位よ。むしろ和泉さんの方が真面目な大和からすると理想のタイプかもしれないし]
[わ わたしがですか・・・私が鶴間君のタイプ?]
[そ。だから私が大和の幼馴染といっても好感度は和泉さんとあんまり変わらないわよ。むしろ私は嫌われてるかもしれないし]
[そ そんなことないと思います。栗平さんに勉強を教えてる時の鶴間君凄く優しい目で栗平さんを見てました]
[・・・ありがとう。和泉さんって優しいね。
でも何だか変な感じ。ちょっと前までほとんど話とかしたことなかったのに]
[そうですね。私からしたら中学の頃の栗平さんは雲の上の人でしたしw]
[今はそんなことないわよ。だから、どっちが大和と付き合う様になっても恨みっこなし。私だって大和の事が好きなんだから遠慮はしないからね]
[はい。私も頑張ります!]
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