第10話 後悔
<栗平 春姫視点>
テニス部の親睦試合が終わった後、和泉さんはまた大和と話をしていた。
そして、和泉さんが大和と別れて校舎に戻るのを見た私はその後をつけた。
私の大和に馴れ馴れしく話をするなんて許せない。
和泉さんは図書委員の仕事で学校に来ていたらしく図書室へと入っていった。
図書館のカウンターに座る和泉さん。
幸い図書室には彼女以外は人が居ないようだ。
私は図書室に入り、カウンターに座る和泉さんを上から見下ろすような形で詰め寄った。
「前に大和には近づかないように言ったわよね」
「え?あ、く栗平さん?」
突然現れた私に驚いているようだ。
間をおかず、私はそのまま畳みかけた。
「どういうこと?あの時はわかりましたって言ってたわよね」
「・・・・」
「だんまり?答えなさいよ!」
「あ、あの時は栗平さんなら鶴間君にお似合いだし、栗平さんの想いの強さには敵わないと思って身を引いたんです。栗平さんが怖かったからじゃありません。
でもここ数年の栗平さんはおかしいです。鶴間君は物じゃありません。罵声を浴びせたり無茶苦茶なお願いをしたり・・・あれじゃ鶴間君が可哀相です!」
「な なによわかった風に! 大和は私が居なくちゃダメなのよ!」
「何でですか!鶴間君は一人でも大丈夫です。それに今の栗平さんに鶴間君は任せられません!」
何なのこの子。前は大人しい子だと思ってたけど随分反抗的じゃない。
それに私に大和が任せられないなんて。
「和泉の言う通りだ。その位にしとけ」
図書室の扉が開きテニスウェアを着た有坂と山下さんが入ってきた。
「有坂!何で?」
「校舎に走ってくお前を若菜が見てたんだ。若菜にはお前と大和の事も話してたからな。慌てて僕に教えてくれたんだ。
正直嫌な予感しかしなかったからこうやって追いかけてきたんだよ。
大体お前自分で何言ってるのかわかってるのか?前にも言っただろ、あいつは頭も良いしお前が居なくても立派にやってける。今日の試合だって活躍してたじゃないか。むしろ僕にはお前の方が大和が居ないと駄目に見えるけどな」
「・・・・・」
そんな事わかってるのよ・・・・・
私が言ってることが無茶苦茶だってことくらい・・・・
「わかってるわよ・・・私だってわかってるのよ。
あいつは私が居なくても全然平気だって。頭も良いし運動神経だって良いんだから・・・だけどあいつは小さい頃からいつも私だけを見てくれてた。私が困ってるといつも助けてくれた。私にとってあいつはヒーローで王子様だったのよ。
でも中二になったくらいから、あいつ女の子に告白されるようになってきたんだ。大和は毎回断ってたし私も信じたかったけど不安だった。だから・・・その頃からあいつに言い寄る女の子に嫌がらせしたり大和にも辛くあたってたのよ。
でも段々大和へのあたりが自分でも加減できなくなっちゃって・・・結局嫌われちゃった。
それでイライラして挙句に他の人にも・・・千歳や佐和にも強く当たって。
結局大切な人達を失った。馬鹿だよね私」
こんな事、誰にも話したことなかった。話せる人も居なかったんだ。
ほんと馬鹿だよね私。自業自得だよ。
何だか情けなくて涙が止まらなくなってきた。
有坂の言う通りだ。私こそ大和が居ないと駄目なんだ・・・
「・・・お前大和の事が好きなんだろ?」
「わ わたしは・・・・・」
「前に大和が言ってたぜ。栗平の罵詈雑言は強がりの裏返しだって」
「え?」
「あいつわかってるんだよ。お前の事。僕達のグループで女王様気取ってたのも自分を維持するために随分無理してたんだろ?あいつも気にしてたんだぜ。
ただな、あいつも人間だ。罵詈雑言や無茶な頼まれごとが続けば疲労もするし嫌にもなる。ちゃんと謝って素直になればあいつも許してくれると思うぞ」
「・・・・そ そうかな。許してくれるのかな」
私、散々酷いことしてきたし"僕に関わるな"って。
あんなに怒った大和初めて見た。
「栗平さん。今の話聞いてて思いました。
やっぱり栗平さんはあの頃のままで鶴間君が大好きなんだって。
でも、今回は諦めません。私も鶴間君の事が好きです。
だから・・・これからはライバルですね」
「和泉さん・・・・ありがとう。
私も大和が好き。だからもう一度大和と話してみる。素直になってみるよ。
だから・・・負けないわよ和泉さん」
「ふふ こっちこそ!」
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翌週月曜日
私は授業が終わると大和が通う倉北学園に向かい校門のところで大和が出てくるのを待った。
そして・・・ちょっと素直になってみた。
「私にも勉強教えてくれないかな・・・」
「わ わかったよ。教えればいいんだろ」
「いいの!ありがとう大和!」
大和にちゃんとお礼を言ったのって凄く久しぶりな気がする。
勉強会楽しみだな。
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