第9話 依頼
家に帰りシャワーで汗を流しベッドに寝転がっていたらいつのまにか寝てしまっていた。久々に激しい運動をして疲れたんだな。
時計を見ると21時を過ぎたところだった。
随分寝たみたいだが、リビングに行くとまだ両親は帰ってきていない。うちの両親は研究職で土日含め帰りが遅いことが多い。春姫の両親も同じ研究所で働いていて母親同士は同じ部署に居る。
その関係もあり僕と春姫は一緒に居ることも多かった。
春姫・・・大丈夫かな。
関わるなとは言ったけどやっぱり気にはなるんだよな。
僕はキッチンで軽く食事をした後、ソファに座り今日一日を思い出していた。
久々のテニスの試合。
試合で勝ったことは中学の時にもちろんあったけど、勝った後で皆があんなに自分を称賛し喜んでくれたのは初めてだった。
『何だか気分良かったよな』
それに・・・・試合の後、春姫以外の女の子と初めて友達になれた。
和泉さん。
中学の時は春姫に邪魔されてあんまり話とかできなかったんだよな。
と、スマホに和泉さんからメッセージが届いた。
[今大丈夫?]
[うん大丈夫だよ]
[今日は試合お疲れ様。凄くカッコよかったよ]
[ありがとう。褒められ慣れてないから何だか照れるな]
[鶴間君らしいね。それから友達になってくれてありがとね]
[それは僕のセリフだよ。僕こそ友達になってくれてありがとう]
[ふふ・・・私だって負けないんだからね]
[ん?負けないって何を?]
[何でもないよ。じゃまた連絡するね。おやすみなさい]
[うん。おやすみ]
なんだ負けないって?
疲れていたのか、考えているうちに僕はまた眠りについてしまった。
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月曜日
いつもの様に学校へ行き、特に大きなイベントもなく6時限目まで授業を受けた。高校の勉強は難しいけど、全国模試も中間試験も自分なりには納得のいく結果だった。部活も本格化するだろうけどまぁ両立も何となるとは思っている。
放課後。今日は本来はテニス部の活動日だけど、土曜に試合だったということで休み。久々に早く帰れるので、本屋にでも寄ろうかなと考えながら下校の準備をしていると隣のクラスの秦野が教室に飛び込んできた。
「おい鶴間!」
「ん?何だ秦野?」
「何だか校門の前で川野辺高校の女子生徒がお前を呼んでるらしいぞ?」
「僕を?」
「ああ。なんでも凄い美少女らしいんだけど、もしかして彼女か?」
「・・・いや僕彼女とか居ないんだけど」
もしかして和泉さん?
いやでも、僕の高校に来るとか一言も言ってなかったし・・・もしかして。
何やら騒ぎになってしまっているという事なので、僕はとりあえず校門まで行ってみることにした。
「あ!」
「大和!遅いよ」
美少女と聞いて、もしかしてとは思ったけど男子校には不似合いな美少女 春姫がそこに居た。
「・・・遅いって言われても来ることも聞いてないしそもそも会う約束もしてないだろ。僕に何か用なの?」
「そ その・・・・」
「何?」
なんだ珍しく歯切れが悪いな。
それに少し頬を赤くしてるし。
「私にも勉強教えてくれないかな・・・」
「え?」
「だから、勉強教えて」
「べ 勉強って僕が教えなくても春姫って成績良いだろ?」」
「そんなことない・・・それに有坂に聞いたわ。
大和の成績が実は私なんかよりも良くて千歳や佐和の勉強も見てたって」
「え、あ、まぁ・・・確かに船橋さんや下北さんの勉強は見てあげてたかな」
有坂の奴バラしちゃったのか・・・
でも、言い方はともかく春姫が僕に勉強を教えてくれだなんて・・・
そんなに追い込まれてるのか。
「でも僕なんかより、同じ川野辺高校の人に見てもらった方が試験対策とかやりやすいんじゃないのか?」
「や 大和に教えてもらいたいのよ・・・・・
それに・・・教えてくれたらその日の夕飯は私が作ってあげるから。大和の両親も帰りは遅いでしょ?」
春姫が僕に夕飯を作ってくれるだって?
中学の調理実習では結構な料理の腕前を披露してたらしいけど僕は作ってあげるばかりで、いまだに作ってもらったことは無いんだよな。
どうしたんだ?今日の春姫は。。。。
「ど どう?これだけ頼んでも駄目?
や やっぱり"僕に関わるな"とか言うの?」
少し挙動不審に震えながら泣きそうな顔で僕を見つめる春姫。
うぅ・・・見た目が可愛いんだからそれは反則だ。
それに・・・・今の春姫って。
「わ わかったよ。教えればいいんだろ」
「いいの!ありがとう大和!」
「あ あぁ。で、いつから教えればいいの?春姫も部活とかあるだろ?」
「大和に合わせるよ。大和だって部活あるでしょ?いつなら帰り早い?」
「そうだなテニス部は月曜と水曜、火曜と金曜はコンピュータ部だから早く帰れるのは木曜かな。部活の日だと早くても19:00位からかな」
「じゃさ とりあえずは木曜からでいいかな。大和の家まで行くから」
「え?あ あぁわかった。じゃ今週から?」
「うん よろしくね!じゃ今日は一緒に帰ろ!」
「え?あ あぁ・・・」
何だか話の勢いに流されて勉強会の約束しちゃったけど・・・春姫を家にって大丈夫だったかな。今日みたいな感じなら大丈夫だろうけど。
でも、今日の春姫って何だかいつも強がってた昔の -僕が彼女を好きだったころの- 春姫みたいだったな。
隣りを見ると僕と帰れるのが嬉しいのかニコニコしながら歩く幼馴染が居た。
僕は彼女をどう思ってるんだろう。
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