第4話 孤立

 <栗平 春姫 視点>


模試のあと全校で行われたスポーツ大会。

川野辺高校で毎年行われているイベントで、男子はバスケとサッカー、女子はバスケとバレーボールが行われている。

例年この時期に行われるのは、新入学やクラス替えしたばかりのクラスの結束や生徒間の親睦を深めるきっかけになるようにとの思いで実施されているらしい。


私はバレーボールにエントリーした。

バスケも苦手ではないけど、ちょっとばかり背が低いから不利なのよね。

結局155cmからは身長が伸びなかった。

まぁバレーボールも同じ様なもんだけど、中学の時はそれなりに得意だった・・・はずなんだけど、チームの中で一番背が小さいせいか狙われてしまい・・・


「きゃっ」

「ちょっと栗平さん大丈夫?狙われちゃってるから仕方ないかもだけど、さっきからずっと落としてるじゃん」

「栗平さん スポーツ何でも得意だって言うからスタメンに入れたのに全然じゃん。もう交代しよ」

「ご ごめんなさい・・・」


私は、佐和と交代した。佐和は私よりも背が高いし中学ではバレーボール部だった。でも・・・私の方が上手かったはず。

それなのに佐和は相手のサーブを綺麗に返したりトスを上げてチャンスを作るなど見事な活躍を見せていた。

皆が佐和を絶賛している。

何だか屈辱だわ。何で私がこんな目にあうのよ。


と、応援席に居た有坂が声を掛けてきた。


「よっ栗平。何だか残念だったな」

「ふん。ちょっと体調が悪いだけよ」

「そうかねぇ」

「何よ」

「あれ見てみろよ」


コートを見ると今度は佐和がサーブを決めていた。

クラスの歓声も更に大きくなる。


「あいつ部活で頑張ってたからな。栗平があいつとバレーボールしたのって随分と前だろ?あいつの事を下に見てるようだけど、あいつ背も伸びたし3年間部活で頑張ったんだから。お前とも差はついて当然だろ」

「そ そんなの・・・・」

「それにこの間の実力試験。お前成績落ちただろ?」

「な なんで」


順位とか誰にも言ってないはずなので。


「おまえ学校以外で勉強とかあんまりしないし、高校は同じ様なレベルの生徒が集まってくるんだ。中学時代なら授業だけで何とかなったかもしれないけど普通に授業受けてただけじゃ中々いい点数とか取れないぜ」

「あ 有坂はどうだったのよ! 前は私より点数悪かったじゃない」

「まぁ俺もそれ程点数がいいってわけじゃないけど、大和の奴に勉強の仕方とか色々と教えてもらってたからな。模試も平均点よりは良かったぞ」

「大和が?」

「ああ。あいつお前の機嫌が悪くなるからって言わなかったみたいだけど毎回試験は10位以内には入ってたぜ。確か1位も取ったことがあるはずだ」

「・・・うそ。あいつがそんないい点とれるはずが」

「嘘ついても仕方ないだろ。僕もだけど千歳や佐和もあいつに勉強見てもらってたんだぜ。だからあいつには感謝している」

「千歳と佐和が大和に?うそ」

「まぁあいつらは3年になってからだけどな。僕が頼んであいつらの勉強も見てもらったんだ。3年になってからあいつらの成績上がっただろ?」


確かに千歳も佐和も3年生になってから成績は上がっていた。

てっきり塾にでも通い始めたんだろと思ってたけど、大和が教えていたの?

何でよ。私が大和に勉強教えてたんじゃなかったの?

知らなかったのは私だけ?偉そうなこと言って大和に勉強教えてた私がバカみたいじゃない・・・・


結局、接戦だったけどB組は2回戦敗退。

サッカーも2回戦で敗退となった。ただ、バスケは男女ともに学年優勝を果たし2年生との準決勝に進んだ。が、バスケ部のエース級を抱える2年A組に負けてしまった。

有坂と仲良くしてた鮎川と大室、それに栗田。あの3人はバスケ部ということもあり凄く活躍していた。何だか私には輝いて見えた。


---------------------------

そして全国模試、スポーツ大会が終わり高校初めての中間試験。

それなりに勉強したつもりだったけど、今回も平均点より少し上程度の点数だった。

屈辱だったのは千歳が数学で私よりも点数が良かったことだ。


「私よりも点数低いなんて春姫さん調子悪かったんですね」

「そ そうかもね。ちょっと熱っぽかったし」

「それは大変。お大事してくださいね」


そう言いながら、この間連絡先を交換した川北中出身の女子のグループに合流していった。何やら楽しそうに会話している。

何なのよあいつ。友達だと思ってたけどちょっと私よりいい点数取ったくらいでいい気になって。

それにしても大和の奴が居なくなってから、何だかイライラするのよね。

そうよストレスが溜まってるから、あいつで発散できないから勉強に身が入らないのよ。全部あいつが悪いのよ!


「どうしたの?春姫ちゃん。何だか顔怖いよ?」

「佐和うるさいわよ。あんたもどうせ私をバカにしたいんでしょ!」

「そ そんなことないよ。友達でしょ?」

「ふん!」


泣きそうな顔をしている佐和を置いて私は教室を出て行った。

何だかクラスのみんなの視線が冷たい。

何よみんな私が何したって言うのよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る