第2話 明暗
桜咲く4月。
今日は始業式だ。
無事に入学式を終えた僕はこれからの高校生活に期待し家を出た。
家から高校までは川野辺駅前からバスで15分程度。自転車でも歩きでも通える距離だけど朝は駅前から高校の送迎バスが5分間隔で出ている。
しばらくは色々な通学手段を試して、自分に合ったコースを選ぶつもりだ。
ということで、家を出て駅に向かって歩いていると、あまり聞きたくない声に呼び止められた。朝から縁起が悪い・・・
「大和!!」
「ん?何か用か春姫」
僕は振り返らず歩きながら返事をした。
「ちょ ちょっと待ちなさいよ!私を見なさいよ。何か言うことあるでしょう。」
通勤・通学で人が多い中、大声で騒いでいるので注目を浴びる。
正直面倒になったので立ち止まり春姫を見た。
川野辺高校のブレザーの制服に身を包んだ春姫。
自分で美少女とか言うだけあって、まぁ普通に可愛い。
春姫も性格がもう少し良ければな・・・
中学でもみんなの前では猫被ってたけどわかる奴にはわかってたみたいだしな。
実際、陽キャグループの奴らは僕と春姫を見て気が付いていながら話を合わせていた奴もいたし、他のクラスメイトも春姫を避けてるやつもいたもんな。
「で、なんだ?」
「なんだって・・・私の制服姿見て何もないの!」
「ああ 似合ってるな。用事ってそれだけか?」
僕が機械的に"似合ってる"と言ったにもかかわらず、春姫は何やら一瞬嬉しそうな顔をした。が、すぐにいつもの春姫に戻った。
「ふん。私に制服が似合うのは当たり前でしょ!
それよりこれから朝は私が駅まで一緒に行ってあげるわ。
ありがたく思いなさい!」
「ああ ありがと。でも遠慮しとく。じゃ遅刻しちゃうから行くよ」
「ちょ ちょっと待ちなさいよ!なんでよ!」
「この間言っただろ。僕に関わるなって。
春姫も僕なんかに関わってないで、お似合いの素敵な彼氏でも作って一緒に学校行けばいいだろ。僕みたいな陰キャは放っておいてくれ。じゃな」
春姫は追ってこなかった。
立ち止まったまま俯いている。
ちょっと言い過ぎたかな・・・・でも僕も変わるんだ。
春姫にとっても僕は居ないほうがきっと幸せになれるはず。
「大和・・・・」
----------------------
高校生活が始まって約1か月。
仲の良い友人も何人か出来たし、学校案内にあったコンピュータ部にも入部した。思った通りというか先輩や顧問の先生の知識は中々のもので、凄く勉強になっている。それに同じような趣味の人も多くてここでも友達が出来た。
ちなみに中学の時は、春姫に付き合わされてテニス部に入っていた。それなりに成績は残していたと思うけど、春姫からはテニス部のレベルを下げる邪魔者って言われてたし、いつも春姫が横に居たせいで他の部員ともほとんどコミュニケーションが取れなかった。
まぁ正直テニスが好きだったわけでもないし、家でプログラムを書いてたりゲームしているときの方が楽しかっからどうでもよかったんだけどね。
それにしても同じ部活動でもずいぶんテンションが違うものだ。
今は学校もだけど、部活に行くのが凄く楽しみだ。
僕の行動を阻害する春姫は、もう隣りに居ない。こんなにも生活が変わるものなのかって感じだね。
帰宅し明日の授業の予習をしているとスマホにメッセージが届いた。
[ピポン]
有坂からだ?中学卒業以来だな。
有坂は小学校からクラスが一緒で仲がよかった友人だ。
僕と違って明るく爽やかなイケメンで、陽キャグループに居たやつだけど、意外とオタク趣味も持っていてよくアニメや小説の話とかもしていた。
中学のテニス部でも一緒だったし僕と春姫の関係についても知っていて、随分前から距離を置いた方がいいってアドバイスもくれていた。
[久しぶり。そっちの学校どうだ?]
[友達も出来たし中々楽しいぞ。それに新設校だけあって設備がとにかく新しい!]
[いいなぁ~ こっちは体育館は新しいけどそれ以外は設備も古いしなぁ。
友達は僕も出来たぞ。それに女の子は可愛い子が多いんだ。
実を言うと僕もこの間、同じクラスの子に告白して彼女出来たんだ。 山下さんっていうんだけどもう可愛くて]
[それはおめでとう!仲良くやれよ。うちは男子校だから彼女はまだ先かな。
で、どうしたんだ今日は?彼女自慢だけじゃないんだろ?]
・・・・・・・・ん?なんだこの間は、聞いちゃいけないことだった?
[流石だな。正直お前に話すべきか悩んだけど、やっぱり話した方がいいな。
最近栗平とは会ってるか?]
[春姫か・・・いや。始業式の日に家の近くで少し話したけど、しつこいから僕に関わるなって言ったんだ。そうしたら、その後連絡も来なくなった]
[そうか。じゃ完全に関係は切れてるんだな]
何かあったのか春姫に。
[あいつどうかしたのか?]
[栗平なんだけどな、クラスで孤立してる]
[え?春姫が?あいつ中学の時は陽キャグループで女王様気取りで騒いでたじゃないか?高校では違うのか?]
[最初のうちは同じだったかな。ただ、あいつ中学の時のノリで女王様的な振る舞いしてな。川野辺は進学校だから、そういうのって受けが悪くて]
[でもあいつ成績だってよかったしスポーツだって・・・]
[中学まではな。高校になれば同じようなレベルの生徒が集まるんだ。栗平って努力するタイプじゃないだろ?この間実力テストがあったんだけど、それ程いい成績じゃなかったみたいだ。それに体力測定も人並みだったみたいだし。]
[で でもあいつ黙ってれば結構可愛いし]
[さっき言っただろ・・・可愛い子が多いって。それに最初偉そうなこと言ってたから見た目が良くても印象は悪いんだよな]
[お前も中学の頃は栗平にこき使われてた被害者だし、助けてやれとか言うつもりは無いけど、幼馴染だし知らせておこうかと思ってな]
春姫が・・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます