僕は彼女が嫌いなはずだ

ひろきち

僕は彼女が嫌いなはずだ

第1話 決別

僕の名は、鶴間 大和。

4月に倉北学園に入学したごく普通の高校1年生だ。

残念ながらよくあるラノベや漫画の主人公の様にチートな能力は無いし、特段イケメンというわけでもなく、中肉中背なフツメン。いわゆる一般人だ。

・・・まぁ強いてアピールポイントを言うならば成績がそこそこ良いってことくらいかな。


そんな僕だけど、今この高校に入学し清々しい気分に浸っている。


理由は二つ。

一つ目は、倉北学園が男子校だからだ。

誤解しないで欲しいが、男子が好きというわけではない。

あいつが絶対に来れないから嬉しいんだ。

そして、もう一つ。

ここには、栗平 春姫が居ない・・・・


この春姫の居ない環境で僕の新しい生活が始まるんだ。


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僕の幼馴染 栗平 春姫(はるひ)。

スポーツも成績も優秀。明るくてクラスでも人気者。

見た目も可愛い部類に入るいわゆる美少女だ。


お互いの家は離れていたけど、母親同士が同じ職場の同僚で保育園も同じだったことから、彼女とは小さい頃から一緒にいることが多かった。

そして、小さい頃から可愛かった彼女に僕は淡い恋心を抱いていた。

思えば初恋だったのかもしれないな。

よくある"大きくなったら僕のお嫁さんになって"というお約束のセリフは言った記憶は無いけど(多分)、僕は彼女が大好きで、子供ながらに彼女の頼み事は何でも聞いてあげていた。


が、小学校、中学校と年齢を重ねるにつれて、彼女の頼み事の内容はエスカレートし、いつしか僕が頼みごとに失敗すると罵倒するようにさえなった。

そして、僕にお礼を言うこともなく、中学校の後半では彼女のストレスの捌け口として頼むのではなく無茶な命令ばかりされるようになっていた。

もっともこれは僕に対してだけ。

学校での春姫は優等生を演じていて、いつでも人気者だった。

何でも言う事を聞いて甘やかしてきた僕も悪かったのかもしれないけど、僕と彼女の関係はあきらかに昔と変わってしまっていた。


そしてあの日も・・・・


「ちょっと大和!折角私が部屋に来てあげてるんだから少しは相手しなさいよ!」

「お菓子とお茶はさっき出しただろ。

 そもそも今日は忙しいって言ったじゃないか。それなのに・・・」

「大和のくせに生意気よ。可愛い幼馴染の私が来てあげたんだから光栄に思いなさい」

「・・・・はいはい」


本当うるさいなぁ。呼びもしないのに勝手に来たんだろうが。

この日は、大手ソフトメーカーが主催するゲームプログラムコンテストの締め切り日。僕はコンテストに応募するプログラムの最終デバックで忙しかった。

昔からゲームは好きだったけど、中学に入って受けたコンピュータの授業でプログラムに興味を持ち独学で勉強した。

そして将来SEになることを目標に色々なコンテストに応募を続けている。

と春姫が僕の作業を後ろからのぞき見してきた。


「さっきからパソコンで何やってるのよ。どうせエッチな画像とか見てるんじゃないの?」

「って、おいやめろって」


マウスを奪い勝手に操作を始める春姫。

そして・・・

"春姫が悪い"とは言いきれないかもしれないけど、マウスの動きに反応したのかパソコンが突然ブルースクリーンになり再起動をはじめた。


「ああ!!嘘だろ!なんで!」


思わず叫んでしまった。デスクトップはコンテストに応募するプログラムのデバック処理を行っているところだった。自動保存されていればいいけど、もしされてなければ昨日徹夜で対応したデバックは水の泡だ・・・


「と ところで大和。受験勉強進んでるの?試験はもうすぐよ。

あんたは頭悪いんだから私の倍は勉強しないと高校なんて合格できないわよ・・・・」

「・・・・」


涙目で慌てている俺を見て、流石に何かまずいと感じとったのか必死に話題を変えてこようとしている春姫。

ちなみに酷い言われようだけど、僕は一応学年10位以内には毎回入る成績を取っていて、むしろ春姫より成績は良かったりする・・・・

ただ、自分より下と思っている僕の方が成績が良いとわかると確実に荒れて面倒なことになるので毎回適当な順位を告げていた。


まぁそれはそれとして、謝罪の一つもない春姫に対して、今日の僕は怒りを感じていた。こんなに怒ったのは久しぶりだったかもしれない。


「帰れよ」

「え?」


いつもより低めの声で僕は脅かすような雰囲気で再度言った。


「帰れって言ってんだよ。邪魔だから帰れよ!」

「な なによ。私が居たら邪魔だって言うの?

 あんたみたいな不細工、私が居てあげないと一生ひ「一人でも構わないからとっとと帰れ!」


僕は彼女を無理やり部屋から押し出し部屋の鍵を閉めた。

春姫は、しばらくドアを叩きながら僕に罵詈雑言を言っていたが、しばらくすると諦めたのか帰って行った。


それから数日僕は春姫に話しかけられても無視し口をきかなかった。


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そして1週間が経過した金曜日。

今日は受験当日。僕は"一人"で受験会場に向かった。

試験は少し予想してた問題と違ったけど、概ね回答を埋めることが出来た。


帰宅後に自己採点した限りは多分合格だ。

少し気が早いとは思ったけど、高校に入ってからの事を考えながらベッドに寝転んでスマホを弄って時間を潰した。

とノックも無しにドアが開き春姫が入ってきた。


「ちょっと大和!あんた今日何で先に行ったのよ!」

「何でって言われても」

「あんたは私の男除けでもあるんだから一緒に行かなきゃダメでしょ!」


何だよその男除けって・・・

そういえば、随分前に告白が多くて困るから男除けに恋人のふりをしてとか言われた気もするな。あれってまだ続けてたのか?

だいたい、学校では近づくなとか言うし前は一緒に居るのもウザいとか言ってなかったか?それなのに男除けっておかしいだろ。


「いいだろ別に。それに先にって言うか受験会場がそもそも違うし」

「え?ちょっとどういう事?大和も川野辺高校を受験したんじゃないの?」

「・・・僕は倉北学園を受けたよ」

「な!何でよあんたそんなこと言ってなかったじゃない

 私が居ないとあんた何にもできないんだから私と一緒に川野辺高校に来なさい。2次募集も確かあるはずよ!」


何やら慌ててまくしたてる春姫。

相変わらず横暴だな・・・

僕の意志は関係ないのかよ。


「受験先は特に聞かれなかったから言わなかっただけだ。

 お互い高校生になるんだ。進路とか思うところもあるだろ?

 それに前に話したと思うけど、僕は将来プログラマーになりたい。

 倉北は新設校だけど、僕の好きなコンピュータ関連の部活や設備も充実しているんだ。まだ合格発表前だけど受かったら僕は倉北に行くよ」

「そ そんなのプログラムなんて家でも出来るでしょ・・・」

「そうだけど、倉北はプログラムに精通した先生もいるみたいだし色々勉強できそうだからね」

「そ そんなの・・・納得いかないわ!」

「納得いかないと言われても困るけど、前に春姫も言ってたじゃないか。

 不細工な僕がそばにいるのが鬱陶しいって」

「そ それは・・・・」


僕だって、毎回不細工とかキモイ、ウザいとか言われていい加減我慢の限界だったんだよ。


「僕と別々の学校に行けば丁度いいんじゃないか。

 僕が居なくなれば、きっと春姫にもお似合いのイケメンな彼氏ができるさ」

「・・・そ それでいいのあんたは?」

「ああ 彼氏が出来たらお祝いしてあげるから、僕にはもう関わらないでくれ!」


僕は幼馴染な女の子と決別した。

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