第2話 フラッシュバックは悪魔と共に

僕は重たい足を引きづりながら、やっとの事で着いた大きな校舎を見上げる


ここ聖堂高校は私立の中でも歴史は古いらしいが流石に校舎にガタが来ていたのか今年度に校舎を新しく建設が行われたらしい

確かに入学生全てに渡されていた冊子の中の写真とは似ても似つかないほど豪華になったのはそういうことだったのだとぼんやりとした思考でゆっくり理解する


しかし今の僕には些細な事だと早々に思考を切り替え、校舎に入り靴箱の誰も使っていない端っこを拝借し手早く、しかし可能な限り遅く靴を履き替えていく


靴を時間をかけながらも履き終えてしまった僕は1年生の教室がある本校舎の5階フロアへと亀のようなスピードで階段を上っていく


思考は濁り、今までの人生でこれ程、足が重いと感じたことは無いぐらい足が重くなる


まだ僕はと嫌でも感じされられ僕は無意識に顔をしかめていた


階段を一段一段上るごとに

クラスメイトとなる人達は優しいだろうか?

こんな僕を受け入れてくれるだろうか?

表面上の僕じゃなくてもっと深いところの僕を知っても...........

考えれば考えるほどあの悪夢が俺の中で色付いていく......


グルグルと悪い方向へと加速していく思考を止めることが出来ないまま、いつしか僕は5階フロアへと到着していた


僕は階段の踊り場から少し身を乗り出し、事前に配布された冊子に小さく書かれた7組 10番という字を教室に振ってある番号と照らし合わせる


7組の場所を分かった僕は意を決して階段の踊り場から足を踏み出す

するとすぐ近くから馬鹿みたいに大きな声でスマホ相手に騒いでいる女子生徒が目に入る

もうチャイムは鳴っている筈だからヤンキーの類いだろうと目を伏せる

さっきまでは、いっぱいいっぱいで気が付かなかったのかと自分自身を叱るのと同時に出来るだけ見ないで刺激しないように隅をそっと歩こうと決め踏み出した時......


「あれぇ? 笑

君ってもしかして ?」


粘っこいような金切り声で僕の名前をそいつが呼ぶ

僕は踏み出した足がピタッと固まった

その瞬間、時間が止まったかのように校舎内がピタリと静かになる

嫌な汗が全身から滲み出て、じっとりと背中を濡らしていく

心臓ははち切れんばかりに脈動し強い恐怖を伝えて来る


でも、そんなはずは無い

だって......なんで、なんであいつが......ここに?

支離滅裂な言葉が口から漏れた


「なんで......なんでここにいるの......?」


自分でもこんなに弱々しい声が出せたのかと驚くぐらい怯えた声でその声の主に問いかける


そんな姿を見て気を良くしたのか視界の外でニタリと笑う感覚が僕の五感を嫌という程、逆撫でする


そして、一言そいつは僕に言葉を投げつける


「この学校に来たのは偶然だったけどぉ、今はこの学校に来て良かったと思ってるよぉ? 君もそうでしょ? いつきくぅん?」


「あ...........」


その言葉を聞いただけで僕は呼吸が荒くなり、酷い酩酊感に似た何かに襲われ正常に立っていられなくなった

過呼吸になり意識が遠のく中、悪魔のように口を歪ませたそいつは僕に悪夢を植え付けた張本人


浅霧 絵梨花あさぎり えりかその人だった



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


意識が無くなった樹の耳もとで悪魔はこう囁く

「今度は逃がさない。また、私といっぱい?」と。

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