リョウオモイ
無名
リョウオモイ
僕は恋をしている。
いや、叶わぬ恋なのは分かってはいるが夢くらい見る権利はこんな僕にでもある!
別に結婚する訳でもないし「可愛いなぁ〜」って思うのは個人の自由だ。
あ、僕の名前はシュウ。
大学生だが友達がいない、“薔薇色のキャンパスライフ”なんてもんは幻想の幻想で何もキラキラしたものは無くスクールカースト最底辺からカースト上位陣の輝きをプラネタリウムのように拝んでる毎日。
絶妙に中肉中背な体型と顔も平凡なこともあり周りからは裏で「ザク」って言われてる。
誰が量産型じゃ。
そして想いを寄せているあの人はユイさん、大学のマドンナ。
僕と同じ大学3年生の21歳、友達も多いし綺麗でスタイルも抜群、ネットでフリーモデルもやっててインスタとTwitterのフォロワーは結構多かった気がする。
“Theスクールカースト上位陣”というような人間だ。
常に笑顔で優しくて、本当に綺麗だよなぁ……
ああ、ごめん話を戻すね。
事の発端は去年の2月
別にやましい事もしてなかったし、その時までしっかり話した事も目を合わせた事も無かったんだ。
でも、あの時は妙に不思議な感じだった…
「あ、あの……シュウ君……だよね?」
「へっ!?あ、あああのはい。シュウです」
「急にごめん!ちょっと驚かせちゃったよね…?」
「(ラブコメ漫画みたいなセリフ言う人、本当にいるんだな…)え、えいや、そんな驚いてないっす!な、なななんか御用でも??」
「ふふっ、いやもうすぐバレンタイン近いからな〜って思って!はいこれ」
手にはピンクの箱に可愛いリボンが付いていた。
「うぇっ!?あ、ありがとう…ございます……」
「あれ?シュウ君同い年だったよね!?
なんで敬語になっちゃってんの笑」
「いや、な、なんか急だったんで…あ、いや!
きゅ、急だったから……」
ユイさんはお腹を抱えて笑っていた。
「本当面白いねシュウ君笑、関係ないけど好きな色とか好きな物ってあるの?」
本当に関係ないな、そんなキラーパス焦るだろ。
「えっいや…青色とか好きですね、、、」
「青色か〜、意外とクールな色好きなんだね!
答えてくれてありがと!チョコの感想、今度教えてね〜!」
そう言ってユイさんは次の講義に向かって行った。
か わ い す ぎ る だ ろ ぉ ぉ お お お !
その瞬間、人生で初めて“一目惚れ”を経験した。
大学に入った時から「可愛いなぁ〜」とは思っていたけど、まさか人生初チョコがそんな人から貰えると思わんやん!?!?
まあ、お母さんと妹から貰ったのはノーカンだとして、
ユイさんとしっかり接した事なんて、入学式から3日経ったくらいの時にハンカチを席に忘れてて慌てて「忘れてますよ!」って届けた時くらいしか接した事がない。
もちろん、まともに目も見れなかったし絶対挙動不審だったのも自覚してる。
でも数年ぶりの会話がバレンタインチョコとは思わんやん!?
嬉しすぎて午後の授業はすっぽかしてルンルンで家に帰った。
家に帰り貰った箱を開ける、しっかりチョコだ…
その瞬間、嬉しさの余り人生一のキモいニヤケを発揮した。
もはや何かの罰ゲームでもいい。
「ザクにチョコあげてこいよ〜〜wwww」とかで嫌々あげたチョコでもいい。
僕は“好きな人からチョコを貰えた”という事情に対して嬉しくなった。
それからと言うものユイさんの事で頭がいっぱいになった。
お昼の食堂で友達とご飯を楽しそうに食べる姿、空き時間に講義の復習をする姿、授業が終わって図書館や本屋で本を読んでいる姿。
絶妙にバレないように最新の注意を払いながら美しい姿を正面から拝ませて頂いた。
「ん!?気のせいか…」
そう、こういうストーキング行為には“誰かに見られてるんじゃね?”的な感覚が常に付き纏う。
「おい!ザクが大学のマドンナをストーカーしてたぞ!!!」なんて事がバレたら僕は社会的に死んでしまう。
だが、気になって振り返るが大体が気のせいで終わる。
何度かユイさんをストーキングしていくうちに僕は自分で決めていた超えてはいけない一線を越えてしまった。
ユイさんの家まで着いて行ってしまったのだ。
「僕は…最低だ。」
そう思いながらもしっかり最寄駅から12分歩いたマンション2号棟の202号室なのを確認した。
このストーキング行為がバレたらチョコの恩を仇で返してしまう、だがやめれなかった。
ユイさんの全てを知りたかった。
そして僕は、ある決心をする。
今度部屋に入ろう、と……
チョコを貰ってから約2週間後
「シュ〜ウ君っ!驚いた??」
可愛いかよ、尊いかよ。
「うぉっ!、あ、驚いたっす!」
「あ〜〜、また敬語〜笑」
これもはや付き合ってんじゃね?
僕の脳内で天使と悪魔が大喧嘩をする。
「あ、ご、ごめん!そういえば伝えるの遅くなっちゃったけどチョコ…美味しかった……よ。」
最高にキモい口調で感想を伝える。
「本当に!!!!!良かった……」
大学中にこだまする勢いで叫んだ。
「(おいおいおい、俺との関係がバレちまうじゃねぇか……)」
そんな調子に乗った発言をする悪魔の自分を脳内で殴り倒した時、こんな事を言われた。
「ねぇシュウ君、今度勉強教えてくれないかな…私のウチとかで良ければ……?」
は?行くに決まってんだろ。
「えぇっ!?あ、あの行きます!」
即答だった。
「ふふっ、じゃあ…部屋が片付いたら日程決めようね!」
人生の勝ちが確定した。
あの大学のマドンナが!?
スクールカースト最底辺の俺と!?
ソウイウ関係!?!?!?
「ゴミ屋敷みたいな部屋でも大丈夫っす!」
咄嗟に叫んだ。
ごめんな、イキりチャラ男共
こんな奴が先駆けするのは不満だろうが、
これは“世界が決めた運命”なんだ……
ただ人間とは欲深いもので幸せのちょっと先に行きたくなってしまうものなんだ。
「ダメだ……どうしても抑えきれん…」
背徳感を背負い、僕はまたユイさんの後を追う。
駅を降りて12分、2号棟の202号室。
しばらく地上から見上げていたら急に玄関を開けた。
どうやらゴミを捨てるらしい。
計画通りだ、このマンションのゴミ捨て場はエントランスを出た外にある。
つまりエントランスの自動ドアが開いた瞬間、このマンションのセキュリティは格段に下がる。
想像通りのガラ空きセキュリティに目を付ける。
ユイさんがゴミを持ってエレベーターに乗る、
エレベーターから降り正面玄関が開く、しかも運良く帰宅してきたファミリーがいる。
「俺の勝ち…」
小さくガッツポーズし、ファミリーの一員のような雰囲気を醸し出しながらエントランスを突破する。
ゴミを出すだけなので202号室の鍵は開けっぱなし。
神は味方してくれたのだ。
そして破裂しそうな心臓の高まりを抑えながら部屋に入る。
部屋の中は想像を超えるものだった。
壁一面に僕の写真が貼られており、中にはストーキングしてる最中の僕の写真やマンションの位置を確認し帰ろうとしている僕の後ろ姿などが貼られていた。
青色のフチをしたパソコンのデスクトップ画面にも僕の写真。
見覚えのあるハンカチがパウチされ、青色の額縁に入れられていた。
キッチンにある調理器具、箸、皿など必ず青色かもしくはワンポイントで青のデザインが書いてあり、冷蔵庫に貼られている講義の日程表には僕と被ってるところが真っ青に塗りつぶされていた。
「なんじゃ…これ……」
机の上にはチョコのレシピが書いてあった。
よーく見ようとしたその瞬間、扉が開く音がした。
はっ!帰ってきてしまった。
ユイさんと目が合う、いるはずのない僕が部屋にいる。
そしたらユイさんが口を開く。
「掃除してからって言ったじゃん。」
真意は分からない、けど絶対に僕に対して言う言葉として適切ではない。
「えっ、あ、あああの……すいません!」
「あーー、また敬語ー。」
冷や汗が一瞬で出てきた。
「見られるの恥ずかしかったから掃除したかったのに……イメージ台無しじゃん」
「へっ……え?」
「・・・シュウ君……驚いた…??」
「いや……あの…本当すいません!!!」
僕は靴下のまま駆け出し、逃げた。
その時の記憶はよく覚えてない。
チョコのレシピに「血」って書いてあったことと、部屋を飛び出す直前「絶対逃がさないからね」的な事を叫んでいた事だけは何となく覚えてる。
あの時、神が味方したのは僕だけじゃなかったんだ。
それ以来、大学には行っていない。
奨学金やら貯金を片手に満喫とかネカフェを転々として得体の知れない“恐怖”から逃げている。
この“リョウオモイ”のラブストーリーは思っていたよりディープだったみたい。
これを見ているお前らは少なくとも俺みたいにならないでほしい、あんまりないと思うけど。
雑に書き綴ったけど、とりあえず一旦離脱する。
多分、ユイさんが近くまで来てる。
また余裕見つけたら生存報告とこの更新するな、ほんじゃまた。
2019/12/24(火) 22:18:54.16 ID:syu_gam7eq0y
それ以来、彼の投稿は未だ掲示板に更新されていない。
リョウオモイ 無名 @a_stro7
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