【息抜き】2008年作品 『死協和音』(残酷、暴力描写あり)
これは、私が、中学二年生の夏。自由研究の課題として提出した作品である。
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祖父に貰ったWindouws95のノートパソコンを用い、タイピングソフトでの文字打ち練習と、小説執筆に励んだものである。夏休みの自由研究ということもあり、1カ月の休みを使って、祖父に添削してもらいながら、無事完成まで至った、完成作品としては短編であるが、処女作となる。
深夜2時15分
「言ってたんだ。殺せって…。声が聞こえたんだ。本当だよ…。」
その場に崩れ込むように倒れた。
警察に通報があったのは一時間前の事。
「あはははははははははははははははあははははははははははははは☆」
地獄と化した工場跡地で、俺だけが笑っていた。
幾度も幾度もナイフを突き刺しながら。
今日未明に藍瀬良町で起こった少年少女殺人事件
五人死亡し、凶器はまだ見つかっていない。
逮捕されたのは連続殺人犯とされる地元の中学校の生徒。
事件後、警察に出頭し自首。その場で逮捕となった。
容疑者は「殺せと言われた。」という供述を繰り返している。動機は他に見当が付かない。
成績優秀で、誰にでも明るく、家族関係も良好で、友達関係も良好だったらしい。
そんな事していたなんてありえない。と、容疑者の両親は涙ながらに警察に訴えるように言っていた。
容疑者に指示したとされる主犯者はまだ逃亡中とみられている。
「馬鹿みたい。」
そう言って、新聞を捲る。こんなの見ているだけで反吐が出そうだ。
朝食であるパンを、袋に戻す。今何か食べたら全て吐き戻してしまいそうだ。
この事件の容疑者とされている百樹の幼稚園からの付き合いである俺の名は綿原恵二。
この物語の主人公らしい…いや、主人公だ。
百ちゃんと親友だったかというとそうだったのだろう。
何か悩んでいたなら…。言ってくれればよかったのに。
なぜ、一言言ってくれなかったのか。
親友だというのに。
頬に伝わる涙は何時までも止まらなかった。
静寂の中で彼の耳に聞こえてくるのは悲しみという名の不快な音だけ。
気付いた時には八時をとっくに過ぎていた。
慌てて、家を出る。
テーブルに残された走り書きの事件の事が事細かに書かれているメモはパサリと空しく音をたてて、床に落ちた。
学校
恵二の思いを知ってか知らぬか時計はただ、その役割を果たす為にカチカチと音を鳴らしただ、時を刻んでいた。
その音が恵二の緊張を一層とさせる。
一時間目は学校で一番怖いとされる英語の小月先生の授業だった。
「綿原が遅刻なんて珍しいなまぁ良い。席に着け。」
先生は事件の事を知っていたからか大目にみてくれた。
赤く腫れた目を見せまいと、下を向く。
「すいません…。」
トボトボと、自分の席に着く。
俺の顔を見てひそひそと周りが話しだす。
「にしても五人だぜ。マジすげーよな。」
違うだろ…。なんでそんなに皆呑気にしてられるんだよ…。
犯人はきっと百ちゃんだと誰かが言ったのだろう。
「人って見かけによらないよな。」
百ちゃんはクラスでは大人しい方でいつも読書と俺との会話で休み時間を潰していた。
百ちゃんが人殺しなんて絶対に有り得ない。有り得て欲しくない。
授業が再開されたが、窓の方ばかりをみていて先生の話なんて全く聞いてなかった。
休み時間
クラスの女子に呼び出され、屋上へ向かった。
嘘の様に青い空。この空を見るときはいつも隣に百ちゃんが居た。
今は隣に居てくれない、いることができない彼を思うと、また目が熱くなってくる。
「綿原!!」
現れたのは俺を呼び出した張本人ではなく隣のクラスで、幼馴染の可西風鈴だった。
可西は小学校からの付き合いで昔はよく三人で一緒に遊んでいた。
「私悪い夢でも見てんのか?佐倉が人殺しなんてありえなすぎるだろ。」
同じことを考えていたのだ。そのことを少し嬉しく思う。
けど否定したからといって状況が変わるわけではなかった。
「百ちゃんが殺したって言っているんだし、そうなんじゃねぇの?」
素っ気無く、言ったつもりだったが、声が震えていた。
「お前も同じことを言うんだな。酷いにもほどがあるだろ!?捕まった途端に掌返した様に…。」
いつもあまり怒鳴ったりはしない風鈴の声には力がこもっていた。
「じゃあお前はどうするっていうんだよ!百ちゃんを助けられるとでもいうのかよ?」
自分でもそれが逆切れであるということは分かっていた。
本当は何もできない自分が悪いのに…人にあたったりして…俺…最低の人間だ。
恵二はぐっと下唇を噛んだ。
「無理かもしれない。でも、1%でもその可能性に掛けてみようと思わないか?お前は佐倉の親友なんだぞ?お前以外の誰に佐倉を信じてやることができるっていうんだよ!」
「なんか策はあるのかよ。」
自分でも予想外なほどに恵二は冷静に装う術を取り戻していた。風鈴の一言で。
しかし、本当に冷静なわけではないことは本人が一番よく分かっていた。
なぜかって?もし自分が冷静であったなら…俺がその無謀なことを実行しようだなんて決していわないから。
俺は臆病者だ…。友達を救う事も出来ない…ただの弱虫だ。
「策か?あるに決まっているだろう。真犯人を見つけて、佐倉はやってないって、言わせるんだ。」
その風鈴は自信に満ちた表情を見せる。恵二はそれがただの錯覚だということを知っていた。
「分かった 手伝うよ。それで百ちゃんを助けられるなら。」
けれど、暗闇に差した一筋の光を疑いたくは無かった。
放課後 綿原家にて。
九人の共通点は皆、藍瀬良町近辺の住民だという事。そして、皆学生だと云う事。
年齢は15歳〜18歳までの間で、他に共通点はなかった。いや、警察は知らなかったのだ。
「なんで、佐倉は私の知っている人ばかりを殺したんだろう?皆良い人だったのに。」
新聞の被害者一覧を見ながら、呟いた。
「うん。とても善い人だったね。表では。」
昔可西が友達だと思っていた相手に陰で悪口を言われていたことをふと思いだした。
「それ…。どういう意味だ?」
持っていた新聞を乱雑にたたみ、机の上に置いた。目が少し鋭かった。
「いや、何でもない。」
今は喧嘩などしている場合ではなかった事を思い出す。
「とにかくだ。被害者の名前をあげていくぞ。秋山浩二(15)中学3年の先輩か…。でも、先輩と佐倉は関係があったのか?」
秋山浩二…。3年前、風鈴のストーカーをしていた男。百樹はそのことに怒っていた。
「友達を傷つけるなんて許せない。何時か懲らしめてやりたい。」と言っていたのを覚えている。
それが充分動機になるだろう。
「ストーカーのこと怒っていたじゃん?それじゃないの?」
というと風鈴は怒ったように返す。
「何言っているんだ?私は先輩に身辺警護してもらっていただけだぞ?」
鈍感なのか真実なのか…。
まぁ、良い先輩ではあったが風鈴のことを付け回していたというのは事実なのだ。
「じゃ、とりあえず動機有りかもってことで…。次は義浄砂陸
ぎじょう さりく
(16)飛鳥琉魂
あすか るこん
17)渡辺伴比佐
わたなべ ともひさ
(19)北上海
きたかみ かい
(18)。こいつ等は、風鈴が小1だった時に仲良し班が一緒で良く遊んでいたよな?」
その時俺達も確か一緒の班だったから良く覚えていた。
当時から人気者だった風鈴は上級生に囲まれ、俺達は蚊帳の外状態だった。
その事を百樹がどう思っていたかを俺は知らない。
少なくとも俺は…寂しく思っていた気がする…。
留置所にて…。
一瞬恵二の声が聞こえたような気がしていた。
それが気のせいだと知りながらも
「ケイ…。」その名を呼び、きゅっと目を細める。
「取り調べ役の勝頼だ。ところで、カツ丼…食いたくねー?」
いきなりの質問にびっくりする。
取り調べ…と言えばカツ丼。でも初っ端からカツ丼ってな…。
「いりません。僕、カツ丼嫌いなんで。」
嫌味たっぷりな笑顔を見せる百樹。
というかなんなんだろう、この刑事さんやる気あんのかな?と思いながら…。
早朝と違い落ち着きも取り戻し、穏やかなだ。
「で、そろそろ喋ってくれねぇか?俺も定時で帰りたいんだよ。公務員だしさ。」
「だから何度も云っているでしょう。あの時のことは嘘で、僕一人が殺したんだって。」
笑顔を崩さないまま、百樹は続ける。
「鬼退治みたいなものですよ。平和を乱す鬼は殺さなきゃいけないんです。そう、鬼…。
あははあはははははははははははは」
急に笑いだし手を打つ。まるで、何かのスイッチが入ったかのように。
「肉の裂ける音。飛び散る鮮血。最高でしたよ。胸が高鳴るっていうか。」
快楽殺人…。か。
最近の子供はそういうゲームをやり過ぎなんだよな。
爛々と輝く目が演技だということには気付かない。
「で、勝頼さんはどっちが楽しいと思いますか?ジワジワ殺すのと一気に殺すの?」
「お、お前はどっちなんだ?」
その殺気立った目を直視することができず、目を逸らした。
「僕は、一…いえ、ジワジワと悲鳴を聴きながらが良いんですよ☆」
壊れたこいつを相手にしていたら自分までおかしくなってしまいそうだ。
「とりあえず、落ち着かないか?」
さっきまであんなに冷静だった彼がなぜ、ここまで急激にまるで人が変わったようにおかしくなったのか。
二重人格…。その言葉が頭に浮かんだ。そいつはそうなのかもしれないな。
それかよほどの策士家か…。
「それじゃあ、面会させて貰えませんか?友達に会いたいです。」
この事件を迷宮入りにさせるためにね…。
百樹は作り笑いを崩さない。どんな状況でもとりあえず笑っておけ。
それは誰の言葉だっただろうか?
百樹はぼんやり考えていた。
このままでは聞き出すのは不可能だろうと読んだ勝頼さんは渋々承諾する。
「判った。」
一方 綿原家
新聞を見るのに疲れた二人は、恵二の家のソファーに寝転んでいた。
「共通点なんてないじゃねえかよー。」
テレビでは、綺麗なアナウンサーがニュースを伝えている。
テレビの電源を切ろうとリモコンを取ると、電話が鳴り響いた。
地獄からの通達。そういうフレーズが頭に浮かんだのはなぜだろうか?
風鈴が電話をとった。
「おい、綿原。電話。警察さんだ。」
風鈴に呼ばれ、電話を代わるとすぐに出頭する様に。と言われた。
「私も行くぞ。」風鈴は鞄を掴むと共に警察へと向かった。
警察に呼ばれるなんて、なんでなんだろうか?
留置所
目の前のドアは俺にとってまるで地獄への門だった。
しかし、そのドアが開く事は無かった。
え?これ…。自動ドアなのに…。何で開かな…。
「綿原…。これ、押しボタン式だぞ?」
焦っていると風鈴がボタンを押しながら呆れ顔で言った。
「恵!!」
俺が来た途端、百ちゃんは嬉しそうに微笑んだ。
ガラス越しに手を合わせる。
「待っていてくれ百ちゃん。必ず助け出すから。」
寝不足のためなのか浮かない表情をしている。
取り調べで寝る暇がなかったのだろうか。
「いいよ…。恵。僕が殺したんだから。」
にこにこと微笑ながら、彼は言った。
「な…。でっ、でもよ、お前は主犯の奴に濡れ衣着せられてんじゃ・・・。」
だってあんなに優しい百樹が殺人なんて有り得ないから。
現実を受け止めたつもりでも、本当は全く理解できていなかった。
彼の冗談だと、悪い夢だといってくれることを信じていた。
「違う。あいつ等を殺したのは僕一人だ。共犯者なんていないし。」
嘘つき。いつも嘘ついている時は本当に笑っていない作り笑いになっているのだ。
まぁ他人に言わせてみれば百樹はいつもと同じ微笑を浮かべているのだろうが。
その微妙な違いをも俺が見逃すことがないことを彼は知っていた筈だ。
そういう時は決まって隠さなくてはいけない俺には言いたいけど言ってはいけない嘘なのだ。
詮索するな。そう云っているようにも思える。
「私は決して諦めないからな。絶対に証拠を見つけてやる。」
その思いは風鈴には通じなかったのだろう。
それか…彼女にはこの重い現実を受け止めることができなかっただけなのだろうか?
それは、解らない。ただ、百ちゃんの一瞬みせた悲しそうな笑顔が気になって仕方なかった。
帰り際百ちゃんの言った「バイバイ。」と言う言葉に何も返せなかった。
返してしまったら、本当に一生会えなくなってしまう、気がしたから。
「またな。」
暫く考えた末に返した言葉に、百ちゃんは小さく頷いた。
再び綿原家
「にしても、凶器がないというのも変だろう。」
確かに凶器は百樹の家からは見つからなかったそうだ。その殺人現場にも凶器は残っていなかった。
それどころか、被害者は皆かなりの外傷を負っていたにも関らず加害者である筈の百樹の服は綺麗そのものだったそうだ。
主犯を探す手掛かりとなるのは、もう、百樹しか居なかった。
毎日面会が不可能なのはかなり痛手だった。
「学校とかは…?」
「無理だろ。犯行が行われた場所は学校から5キロ程離れていたらしい。あいつにそんな体力があると思うのか?」
それもどうかと思うが…。
淡々と言う風鈴は、恵二の取っている夕刊を読んでいる。その新聞の一面の見出しは『二重人格がもたらした地獄!?』だった。
「嘘ばっかり書きやがって。真実を突き止め様としない奴等め…。佐倉が二重人格な訳ないだろう。だってそんな所見たことないしな。」新聞を読みながら風鈴は悪態を吐く。
そんな風鈴の言葉に苦笑を漏らす。
真実…か。確かにそうなんだろう。
恵二はぼんやり考えながら、机を見つめていた。
8年前…。
悪夢は突然に訪れた。
「やめて!!恵二は悪くないよ!!本当だよ!!」
双子の弟をかばうようにして酔っている母親の前に立つ。
「あら、なにいってんのこの子。生きてる価値無いんじゃない?要らないのよ…あんたなんて。あんた達が居ると邪魔なのよ。あの人も私の事見てくれなくなってきたし…。あの人に愛されるのは私だけで良いのよ。」
近くに有った空の酒瓶を持ち上げる。
「や…。止め…て…。やめ…。」
恐怖に立ち竦んでしまう俺は弟に寄り掛かるようにして倒れこんだ。
玄関のドアが開き、父親が帰ってきた。
「何やっているんだ永子。そんなことして何になるって言うんだ!!」
酒瓶を下す様に言われ、母親は父親の顔を見た途端ころりと表情が変わる。
「あら、あなた。お帰りなさい☆」
いつも通りの母親に戻り、一安心する恵二達。
母と父の仲は割と良好だったが、父のそれは演技だということを子供ながらに二人は気付いていた。
「恵一〜♪風呂入るぞ〜。」
いつも通りの平和な時。
でも。…。少し普段と違うなにかを恵一は感じていた。
頭洗ってやると言われ恐る恐る浴槽から出て風呂椅子に腰掛けた。
「父さん。離婚しようと思うんだ。母さんと。」
優しく頭を洗ってくれる父さんの手が少し震えている事に気付く。
「なんで?どうして?もしかして僕のせい…?」
顔を上げると父さんは首を振った。頭を押し戻され、お湯をかけられる。
「…。だからだよ。」
お湯のせいで肝心の理由が聞こえなかった。
流してもらい終わった後、湯船につかりもう一度理由を尋ねる。
「母さんとこれ以上一緒にいることは出来ない。でないと、皆殺されてしまう。」
優しい父さんの顔は恐怖に震えていた。
『貴方は私だけを見ていれば良いの。』
一途。それ故に我子への愛情も許せなくなる。
「あいつは鬼だ。離婚したら恵二も恵一も嫌な思いしなくて良いんだぞ?
それに二人が良いって言うなら、新しいお母さん候補だっているんだ。こうみえてもパパは結構モテモテだぞ?」
父さんは声を上げて笑う。無理をしているような乾いた声は浴室に空しく響いていた。
「ねぇ父さん・・・考えな・・・」
その言葉は聞こえてきた消えてしまいそうな悲鳴に遮られた。
「恵二!!」
父さんは慌てて風呂から上がると台所へ向かう。その後を追うと、途中で止められた。
「来るな!!…来ちゃいけない。待っていなさいここで。ついに鬼が動いたんだ。」
最初の怒鳴り声にびくっとする。しかし、足を止めることは出来なかった。
フローリングを伝い流れてきた赤い液は生臭かった。
何所か少しガス臭い様な油臭いような匂いがし、床には血の付いた包丁が転がっていた。
「あはあっははっははははっはハハ!!!!!!ははっハハハはっははははっは!!!」
母さんの笑い声が台所に響いている。
「恵二は何処かしら?。恵二も殺さないとね―?」
鬼。これは、母さんじゃ…無い…。
「違う。お前の近くで横たわっているその子が恵二だ。」
冷静を装っている父さんだが怒りか恐怖か体が微かに震えている。
焼け爛れ何度も強打された恵二が母さんの前に倒れていた。
変わり果てた弟の姿に短い悲鳴を上げる。
なんと言い表せば良いか分からなくなるような無残な光景。
「じゃあ、そっちが恵一って訳かぁ。」
えげつない笑みを見せる。近くにあった包丁を拾い上げ、近づいてくる。
「恵一!!逃げろ!!」
逃げ様と思っても恐怖で足が竦み、悲鳴を上げようと思っても、喉がからからで、声にならない。
夢だ。夢だ…。これは夢なんだ!!きっと覚めれば母さんも父さんもいつも通りなんだ!!
刺される…。その瞬間目をつぶった。
…ドン。
刺されるというより押される感覚がして、目を開けると隣で父親がうずくまりながら凄い悲鳴を上げていた。
そして、その前には我に返った母さんが泣き崩れていた。
「私はなんて事を…。恵二!!救急車!!救急車を呼んで!!」
違う…。僕は恵一だ。僕は…。
蹲っていた筈の父さんが立ちあがる。
「まだだ…。まだ終わって居ない。永子!!お前も死ぬんだ!!この元凶を断ち切るんだ!!」
父さんは自分に刺さっていた包丁を、母さんの心臓に突き刺した。
鮮血が飛び散り、母さんは吐血する。
「あなたっやめてっやめてっやめてっ!!」
その悲鳴が恵一の頭に響き渡る。
父さんは母さんを何度も何度も動かなくなるまで、切り刻み続けた。
その行動にうろたえていると、父さんが言った。
「恵二…。逃げろ。警察に行って、保護してもらえ。犯人は俺だけで充分だ。」
父さんも壊れてしまっているんだ。父さんは僕の名前を間違えなんかしない!
その時彼は気付いては居なかった。そしてまた…彼自身も鬼であるということに。
これは、父さんじゃ無いんだぁあ!!これは鬼。そう…父さんの形をしている鬼だ。
俺は母さんに突き刺さったままの包丁を抜き、父さんの背中にぶっ刺した。幾度も幾度も。
力が弱いせいか致命傷にはならなかっただろう。
違う…。俺は…。俺は…!!
「俺はあああぁぁぁ!!」
「ごめんな…。」
痛みに耐える父さんの温かい手が俺を捕らえ、撫でた。
包丁を刺す手が止まり、目に溜まっていた涙が零れ落ちた。
「行け、行くんだ。早く…。」
父さんの見せた笑顔はとても優しかった。
彼の心に宿っていた闇は封じ込まれるように彼の表情は穏やかなものになっていった。
「すぐに…。すぐに戻って来るからね!!」
俺は、涙で服を濡らしながら交番に走って向かった。
「あぁ、じゃあな。恵一。」
朦朧とする意識の中で、父さんはポケットに入っていたライターで、床に火をつける。
「やっと、鬼を殺せたよ。恵…。」
燃える血の海の中で、一人微笑んでいた。
ガスと油まみれた部屋は跡形も無く燃えていて、残っていたのは3人の形をした骨だけだった。
「悲しい出来事だったね。で、君名前は?」
警察そう尋ねられ、鮮明に覚えていた言葉を口にした。
「綿原…恵二。」
それ以外の記憶は残っていなかった。
自分に双子が居た事さえ…ね。
そして、その事件は殺人事件ではなく不慮な火事として扱われ誰も罪に問われることは無かった。
その御陰で、彼は両親にかかっていた巨額の保険金と火災保険で建て直した家を手に入れたのだが。
…。また、昔の夢を見た。見たという事しか覚えて居ない。何時だって。
ふと、辺りを見まわすと外は真っ暗になっていた。
かなり、寝ちゃったって事かな?肩に掛かっていた毛布が床に落ちた。
あ…。きっと風鈴が掛けていってくれたのだろう。
メモとコンビニの袋が残されていた。
[時間になったから帰るぞ。晩飯はお弁当買っといてやったから、それを食え。金は明日請求するからな。by風鈴]
あいつも結構優しいとこ有るんだな。としんみりしながら、弁当を見ると、『美味しい、お子様によるお子様の為のお子様弁当様☆』と書かれていた。
「あいつ…。俺のことばかにしてるのかな?」
眠い目をこすりながら、弁当を口に運ぶ。
「あ。美味い…。」
小さく感想を漏らした。
真っ暗な部屋の中で、その手を止める事無く動かし続けていた。
同刻
「恵!!恵!!」
遠く離れてしまう友達をいつまでも追い掛けて。
「真実なんか知らない方が良かっただろ?なぁ恵ってば!!」
絶望に打ちひしがれた彼は、項垂れていた。
「恵…。」
やっと振り向いたかと思うと、凄い形相でこちらを睨みつける。
「お前のせいだ…。全て…。お前のせいだ!!」
首を締められ、その手を振り解こうとするがその力は強く全くと言って良いほど動かない。
「恵…。」
怯えた様な、何所を見ているのか分からない焦点の定まっていない様な目で此方を見てくる。
「お前の…。」
嫌な夢から覚め、百樹は荒い息を整え辺りを見まわす。真っ暗で、ほとんど何も見えない。
深呼吸をして、呼吸を整えると再び蒲団の中に潜り込み強引に意識を静めていった。
「ごめんね…恵…。」
そう…呟きながら…。
3ヶ月後
夏休みの後半に差し掛かり蝉がより一層最後の自己主張のように煩く鳴くようになってきた。
今日は風鈴に学校の屋上に呼び出された。決闘でもする気なのだろうか?
「んで、朝から何の用だよ。風鈴…。」
さっきから、夢の世界と現実を行き来している恵二には目の前の風鈴が霞んで見える。
「実はなぁ。…。いや、特に何でも無いのだが…。未だに現実味が無いと言うか…。」
風鈴の言いたい事はなんとなくだが共感できない事も無い。
ただ、それは、現実逃避でしかない事を彼等は知っていた。
いつも心地よく感じる屋上の風は今の彼等にとっては不快だった。
「私、今日もう一度佐倉に話し聞いてくる。」
風鈴の目の下の隈が、彼女があまり寝ていない事を物語る。
寝なかったというよりは寝られなかったのだろう。
「俺も行く。」
きっと、風鈴は俺がこの言葉を云うと信じていたのだろう。表情が少し和らいだ。
その事が少し嬉しかった。
長年の付き合いだから、相手が何を言いたいかは何となく分かるのだ。
何となくであるが…。
その日、裁判の判決が言い渡された。無期懲役…。その現実を受け止めることはできなかった。いや、受け止めたくなかった。
あれから2週間が経った。
街路樹の紅葉が秋を感じさせる。もう秋か。そろそろ夏服しまわないと。
そんな事を考えながら歩いていると、木にぶつかった。
「何やっているんだ?綿原。」
普段だったら、もっと明るく笑いながら言う彼女の声はとても冷たいものだった。
風鈴は精神的に限界の様だった。
それは…俺も同じか…。
「今日は佐倉との面会日だろ?」
その冷たい声に背筋が凍りつく。
顔は少し青白く、目は虚ろで。
「風鈴。今日は家帰って寝ろよな!!」
このままでは風鈴の親御さんにも迷惑が掛かってしまう。
「でも…。佐倉を…。」
「今日は俺が一人で行く。お前は帰って寝ろ。」
家まで送り届けると、刑務所へと足早に向かった。
分かっていた。彼の無期懲役が確定した今、俺達が何をしようと無駄だと云うことを…。
でも何かしていないと…自分が壊れてしまいそうだった。
刑務所
限界がきている風鈴に対し、百樹はとても元気そうだった。
いや、俺の前だから迷惑掛けまいと無理しているのかもしれないが…。
恵二が現れると百樹は顔を綻ばせる。
「恵!!良かった。今週も来ないかと思った。」
あれからは色々忙しくてあまり行くことが出来なかった。
百樹はそのことを言っているのだろう。
「刑務所って意外と楽しいんだよ。食事とか美味しいし。」
その言葉は嘘だった。最近全く何も口にしていない。
でも、そのことには恵二は気付かない。
「そういえば最近ね?蒲団の繊維の数を数えるのが楽しくてしょうが無いんだ♪生き甲斐って感じ♪」
百樹の精神状態もあんまり大丈夫ではなさそうだ…。
「百ちゃん。ちゃんと寝てんのか?」
「うん。ちゃんと寝てるよーあははー。」
性格が大分崩れてきている気がする…。
「ちゃんと…。睡眠とれよ…Zzz。」
恵二はその場に眠り込んでしまう。
その姿をみて百樹は溜息をついた。
「恵が一番寝てないんじゃん。全くさ、僕の演技に気付かないなんて、本当に…限界だよ?」
そっと頭を撫でることが出来ないから、触れる事が出来ないから。
こうして、微笑み掛けているのに…。どうして…悲しそうな顔をしているの?恵…。
百樹はふと昔のことを思い出す・・・。
「お前・・・だれ?」
八年前あの事件の後彼に言われた言葉。
「だれってぼくだよ!!さくらももき!!」
「おれそんなやつ、しらないし。」
風鈴とは小学校からの付き合いだったが、百樹とは幼稚園からの仲だった。
昨日まで一緒に遊んでいた親友に言われた一言は彼を酷く傷付けた。
「おもいだしてよぉ…。けいいち…。」
涙ぐんだ目を向けると鋭い目で睨み返される。
「けいいちじゃない!!けいじだ!!まちがえるんじゃねぇよ!!」
その時僕は疑問を感じたのだ。
どう見ても恵一君なのに…。どうして恵二と言っているのかと…。
「じゃあさ、けいじ…。ともだちになろ!!」
忘れられてしまったという悲しさを堪え、微笑んで言った。
「そういう事なら…。良いけどさ。」
差出された手を恵二は強く握り返した。
それ以降、百樹が恵一とも、恵二とも呼ぶことは無かった。
恵…。それはどちらの事を指しているのだろうか。
分からない。それは百樹自身にも分からないモノだった。
…何所だっけ…。ここは…。
「い…恵…!!」
その声に眠ってしまっていたことに気付く。
「悪い…せっかくの面会時間だって云うのに…。」
何分位寝てしまっていたのだろうか?
かなり寝てしまっていた気がする。
「んー…。10分位かな。そろそろ時間だから…もっと寝顔見てたかったけどね(笑)」
百樹のあどけない笑顔に、少し安心した。
「いつか、また一緒に青空見ながら、昼寝出来る日が来るよ。」
その日が来れば良いけど…。百樹は喉まで出かかったその言葉を飲み込んだ。
無期懲役だから、最低仮出獄まで20〜40年は掛かるらしい。
それに無期懲役という位だし本当に出られないのかも知れない。
もし出られたとしてもその時、まだ友達でいてくれるのか…?という所だ。
そして、不安はもう一つ。真犯人が見つかってしまわない事を祈るばかりだ。
親の言っている俺のアリバイが通ってしまえば、少し困った事になるだろう。
あの事件当日。僕は…恵の家に泊まっていた。
新しいゲームを一緒にやろうと誘ったのは僕の方だった。
次の日が学校という事を考慮して、鞄や制服を持って恵の家に向かった。
そのゲームは、主人公を阻む者達を倒し、ヒロインを助けだす。というRPGだった。
表の明るいパッケージには眼鏡の冴えない少年が写っていた。
空想の世界ではなく、舞台は東京の街。
主人公は中学生でスポーツも勉強も出来ない彼が好意を抱く強気で可愛いヒロインに告白しようとした時、突然現れた敵に誘拐される。
主人公はヒロインを助ける為に敵を倒すのだが…。
その敵は、学校の先生であったり、主人公の肉親であったりした。
恵は何か呟きながら、その敵を殺していく。
その目がとても恐ろしかった。
「やっぱりさぁ…。ジワジワ殺す方が楽しいよねぇ♪」
いつもとは違う彼の目に恐怖心を抱く。
「恵〜腹減ったしそろそろ止めよう?このゲームあんま精神的に良くないだろうしさ」
その忠告を聞き入れ、恵はゲームの電源を切る。
夕食の弁当を食べている時、ふと思い出したように電話を掛ける。
「…。はい、じゃあ○○工場跡地に来て下さい。」
僕は電話をかけ終えるとふらふらと家を出た。恵を心配し追いかけ僕も工場跡に行った。
恵が正気ではない事に気付いていた。
どうして止める事が出来なかったのだろうと未だに後悔している。
「恵…。さっき呼び出したのって誰だよ…。」
その言葉が聞こえてないのか、恵二は何も応えない。
そこに居たのは、被害者となった五人だった。
「綿原〜話って何だよ〜」
友好的に近づいて来た、秋山先輩に笑いながら隠し持っていたサバイバルナイフを突き刺した。
「な…。何してんだ…よ…。先輩…だ…ぞ?」
立ち竦む僕の言葉に振り向いた恵二は言う。
「だって神の声が聞こえてさ☆こいつ等を殺せって。だってこいつ等鬼だもん。鬼は殺さなきゃいけないんだよ?僕の平和を乱す鬼は死ねば良いんだ☆可西風鈴は俺の姫様だもん。」
微笑む彼の目は、鋭く光っていた。
それを見ていた飛鳥先輩が警察に連絡しようと携帯を取り出そうとする。
「あははは〜させないよ☆」
普段とは桁違いの運動能力で、瞬時に携帯を斬った。
潜在能力というやつなのだろうか?
僕にはどうすれば良いのか分からなかった。
だから、目の前の先輩達が親友の手で殺されていくのをただ見ているしかなかった。
夢であって欲しい。夢であってくれと願いながら…。
五人が殺された後も尚、声を上げて笑い続けている恵二に話し掛ける。
「お前…誰だよ…。」
恐怖に震えながら…。それを聞いた。
恵二は笑い声を止め、僕の方を向く。
「え?俺?8年前に死んだ恵一だよ?まぁ俺は恵二だけどね。あはははは意味分かんないやぁ。俺って誰だろう?ねぇ百樹〜♪俺って誰かな〜。」
百樹と呼ぶのは事件前の恵一だけだった。ならば、彼は恵一なのだろう。
でも、恵だって恵一だ。いや彼は恵二なのか?
頭が混乱し訳が分からなくなる。
ただ、一つ言えるのは事件前の恵一は、風鈴の事を知らないという事。
そして、混乱した僕がした事は…。
「お前はここに居るべきじゃない!!消えろ!!消えろ!消えろ!!」
叫びながら、頭突きをする事だった。
ある程度続けた時、恵は意識を失った。
意識の無い恵を連れ、一度恵の家に戻る。
証拠隠滅の為、血の付いたナイフを洗い、指紋をふき取り、恵の服も交換する。そして恵一を引き出した原因のゲームも粉々にした。
そしてそれらをごみ袋に纏め、滅多に恵が開けることはない物置に突っ込んだ。
その後走り書きのメモを残し再び現場に向かった。
僕が全部背負うから…。だから…恵一はもう出て来ないで。恵の人生を狂わせないで。その一心で…。
その願いが通じたのか、恵は事件のことを覚えていなかった。
何が悲劇を引き起こしたのだろうか…。
何故恵一はおかしくなってしまったのだろうか。
その事をずっと考え続けていた。
どうでも良い話だが、事件の後親は全く面会に来ない。
僕を見捨てたつもりなのだろうか?
被害者への多額の慰謝料を払うのは僕じゃない。親なんだ…。
少し申し訳ない気持ちになったが今更…であろう。
今更、犯人は恵でしたと言って誰が信じるだろうか?
凶器は在っても決定打にはならないだろう。
それに…親友を売る事なんて出来ない…。絶対にしないだろう。
次の日…学校の屋上
「話ってなんだ?綿原。」
昨日ちゃんと睡眠を取ったのか声の調子が少しだけ元に戻っていた。
「君は俺の事どう思ってる?俺はずっと恵二の中から見ていた。俺は君が好きだ。なぁ風鈴?」
風鈴の肩を掴み、恵二が言う。
「何を言っているんだ綿原。お前は恵二だろ?それに百樹が捕まってこんな時にそんな話されても…。」
冷静な判断だったのだろう。
「俺は恵一だ。恵二じゃない。お前は俺が好きではないんだな?」
百樹の一番起きて欲しくないことが起こってしまったことを彼女は知らない。
「ああ。そうだな、良い機会だから言っておくが私が好きなのは百樹だ。恵二も友達としては好きだがなお前は恵一なんだろ?私はそんな奴知らないからな。初対面の奴を好きになれというのは無理な話だ。」
「やっぱり君も鬼なんだね?僕の平和を乱す…鬼なんだぁああああ!!!!!!!!」
手持ちのカッターナイフを風鈴に突き刺す。
「なっ何するんだ!!危ないだろ!!」
間一髪で避けた風鈴だったが、すこし掠ってしまったらしく制服の袖が赤く染まっていた。
「死んでよ。死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね…」
鋭い目で睨みつけながら言葉を繰り返す。
「だっ…。」
風鈴が助けを呼ぼうとした時だった。ナイフは深く心臓に突き刺さり風鈴はゆっくりと倒れた。
目を見開き苦しそうに顔を歪めて…。
「後は…。あいつを殺さないとねぇ…?」
風鈴からナイフを抜こうとする手が止まった。
「ちぇ…。恵二が俺に干渉しようとしているのかなぁ?8年間も俺の体を奪っておいて…。」
言葉と共に目の鋭さが失われていく。
恵二に戻った彼の心の中に満ちるのは絶望…ただ、その感情だけだった。
やはり…犯人は俺だったんだ。百ちゃんじゃなくて…恵一が犯行を行ったんだ…。
彼が現れたことによって戻ってきた事件の日の記憶。
あの日、眠っていたもう一人の自分を、ゲームをやることによって目覚めさせてしまったのだった。
自首しよう…ふらふらと刑務所に向かい全てを告げる事を決意した。
しかし、刑務所に行った途端俺がとった行動は牢内に侵入し、百樹を殺す事だった。
どうやって入ったのかは自分でも分からなかった。
「百樹、バイバイ。」
一気に突き刺し息の根を止める…筈だったのだろう。しかし、その手は突き刺す寸前で止まった。
なんとか保っている自我でナイフを止める。
「百ちゃん…。逃げて。早く…早…。」
百樹は恵二の額に額を当てた。
いつものように暖かな笑みで…微笑んでいた。
「いや、もう充分だよ。バイバイ恵。」
そのナイフの先を自分で押し込んだ。
ゆっくりと飲み込まれていくナイフ。
「百ぉ!ぁあああああああああああああああああああああ!!!!」
目の前で倒れている親友の前に座り込む。
次の瞬間百樹の前に座り込んでいたのは恵一だった。
「時間が無いな。しょうがないな〜一気に殺してあげるよ恵二。本当はゆっくり時間をかけて苦しめてあげたかったんだけどなぁ。」
百樹から引き抜いた七人の命を奪ったナイフを自らの喉に突き刺す。
「駄目だ!やめろ!恵!!」
百樹は傷口を押さえ痛いであろうに腹から叫んでいた。彼の手は生暖かい血で染まっていった。
恵は顔を歪めながらそのナイフを大動脈の方向へと回転させていく。
その度に傷口から血が溢れ出し涙と混ざって百樹の服を濡らしていく。
「百樹…助けられなくてごめん…」その言葉は声になっていなかった。
百樹は朦朧とする意識の中その謝罪に応えるように彼の手を握り締めた。
そして、警察が駆けつけた時二人は手を握りながら重なるように死んでいた。
つけたままのテレビは持ち主を失った家の中で正確にその役割を果たしていた。
「またもや起こった藍瀬良町少年少女殺人事件。
犯人は地元の公立中学校に通っている先日の殺人事件の犯人と親しい間柄に在った中学二年生の少年でした。
犯人は、第一被害者を学校の屋上に呼び出しそこで殺害。
その後刑務所に向かい第二被害者となった前回の事件の犯人の少年を殺害し自殺したとみられています。」
監視カメラの映像からして、第二被害者を刺すときに一瞬躊躇していたようです。
先日も面会に来ていたというほどまでに仲の良かった彼等に何があったのでしょうか?
動機などについては今警察が調査を進めているようです。」
「痛ましい事件でしたね。しかし犯人の自殺でこの一連の事件が幕切れとなって、」
ある意味良かったと思いますよ。こういう恐ろしい犯罪者がこの世から消えたかと思うと正直ほっとします。」
ザー…………。突然画面が砂嵐となる。
真実が語られることは…もう決してない。
何がこの事件を引き起こしたか?
それは…運命という名の「死協和音」。
運命が死協和音を奏で…それが旋律となる。
『Mad Homicide. 狂った人殺し。』
この曲を止める事は…誰にだって出来やしない。
The end.
2008.8
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