感想文100本ノック10.『煌々と輝く満月の下で:異説吸血鬼カーミラ 』/ 江藤公房
タイトル『煌々と輝く満月の下で:異説吸血鬼カーミラ』(完結済み・全19話8万5千字)
作者 江藤公房
注意 性描写有り/ナチス
ULR https://kakuyomu.jp/works/1177354054894065992
座右の銘 「明日には転んで死ぬかもしれない。でも願わくば昨日死にたかった」
あらすじ
第二次世界大戦終戦後、ナチスの親衛隊だった父は医者であることイギリスと内通していたことを理由に、ニュルンベルク裁判を生き延びた。そんな父が残した流行り病にかかった女性の手記は、「私」の十六になる娘の症状とうり二つのものであった。ナチス親衛隊、軍医が残した「ある流行り病」にかかった女性、ローラの手記の物語。
ローラは、オーストリアのシュタイアーマルク帝国大管区の城に父と二人で暮らしている。年は、19。家庭教師のぺトロン夫人と、花嫁教育」担当のデ・ラフォンテーヌ女史。その二人が家族と呼べる存在だ。
父の友人、シュピールスドルフ卿の姪が亡くなったという電報から物語は始まる。
その原因は、「姪の友人になるはずだった悪魔を家に招き入れてしまったから」であった。一体、「悪魔」とされる「病」はなんなのか。
その後、母と旅をしているという令嬢カーミラを父の申し出により家で預かることになった。なにやら母は、後ろめたい様子で、令嬢を預けるとさっさと行ってしまった。
「3か月後に迎えに参ります。娘は、発作を起こして暴れたりといったことはありません」とわざわざ、念を押していったこともまた怪しい。麗しの令嬢、カーミラは一体何者なのか。病の正体は。しかとその目で見届けてほしい。
魅力
歴史小説にふさわしく、気品溢れる文体で執筆されている。風景描写なども細かく、美しい景色が脳裏に浮かぶ。
紙巻きたばこを、愛用するお嬢様、家庭教師、花嫁教育担当の娘が机を囲む描写など、現代物ではなかなかお目にかかれないようなシーンに、ドキリとさせられる。
百合、と表現されているが、ローラとカーミラのそれは、厳かで少女同士の尊い愛に名をつけることこそ憚られると感じるほどに美しいやり取りが見られる。
感想
終盤、物語の終わりに向かうにつれ明かされていく真実に、そんなまさか。あってほしくはないと。手を止めてしまおうかと思ったほどである。読み終わった後のカタルシスは言いようがない。
P.S.
作者様へ
第十四章 『そうですか。それではまたいずれ、から始まる文章において「ミラーカ」と呼び掛けていたはずの、カーミラ母が「カーミラ」と言っている点を発見しました。
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