第5話本吉伝説

 結果的に計画は不発に終わってしまったものの、実行したことで沢山の収穫があった。一番印象に残ったのは、母も結局は自分は母親になって「苦労していますよ。すごく頑張っているでしょ。」とまわりの人に聞いて欲しいだけだったということだ。多分そのママ友の集まりもそんな母親失格の糞人間どもの集まりなんだろう。

 母も家では迷惑なほど本吉を可愛がっているがこんなことが起きてしまっては、ママ友との糞人間会合でのネタ探しにしか見えなくなってしまった。本吉は本当に残念だった。

 しかし、まだ父がいた。その事件が起きてから本吉は父にべったりくっついてまわった。いや、母を避けていたら自然と父と遊ぶようになっただけだった。

 

 そんなこんなで一年弱くらいが過ぎ、本吉は二歳になった。

 「そろそろしゃべったり、歩いたりしようかな」と本吉は考えていたので、同時に行ってしまおうと考えた。

 はいはいは少しづつやっていたので、立つことは親も想定内だと思うが話すのは全く何もしていない。本吉はここら辺から本吉本伝説を作っていこうかと勝手に考えていたが、この考えが後から自分を苦しめようとは、この時の本吉は知る由もない。

 それから何日か後、父の仕事が休みの日が来た。ちなみに父の働いている会社はブラック企業なので、休みが与えられたのは奇跡だった。

 本吉は家族全員が集まった今が立つチャンスだと思った。

 そして、急に立った。

 しかも、普通二歳児が立つにはかなり早いし、練習を積んで何かをつかんで立つ。そしてそのあと少しよろけるのを親が支える。そしてそれをまた何回か練習する。そのはずなのだ。なのにも関わらず、立った、何も無い所で、そして歩いた。挙句の果てには、

「できたー」

 と喋ってしまったではないか。

 両親はただ口を開けて見ていることしかできなかった。そう半強制的に。

 そして、本吉はドヤ顔をした。

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