第4話計画実行
赤子にしては、邪悪すぎる計画をたてた本吉ではあったが、少しばかり怖いこともあった。
計画を実行して、母を騙すまでは良い、そのあと、医療機関でなんらかの処置を受けるのがすごく怖いのだ。赤子の熱中症は死ぬ可能性も低くはないため、入院はしょうがないにしても、もし、何の症状もないのに、呼吸器を付けれたり、点滴を打たれたりしたらどうしようと本吉は考えたのだ。特にこの身体になってからすこぶる痛みに弱くなってしまったのだ。
そんなことを考えながらも、散歩の時を今か今かと待ち構えていた本吉ではあったが、その機会が一向にやってこない、お天道様がやめろと言っているのか、普通なら、真夏日の季節なのにも関わらず、毎日毎日雨なのだ。しかも、その雨は日が落ちたら止んでしまう。
「明日の天気は、今年一番の猛暑日になるでしょう。」
テレビの天気予報から聞こえて来たことに、本吉は心を躍らせた。「よし、明日計画実行だ」と心の中で呟きながら、おしめの中に用を足した。そして泣いたふりをして、母を呼んだ。ちなみに、本吉は雨の間に泣きまねを習得した。
計画実行の日の朝、いつもより一時間も早く起きた。おっぱいを飲み、ひと眠り、遂に待ちに待った散歩の時間だ。
服を着替え、おしめを交換し、ベビーカーに乗った。もう準備完了だ。お母さんが来て、家を出た。
今日は確かに暑い、蝉もいつも通り最高にうるさい、母のママ友も徐々に集まって来た。いつもなら、最悪のシチュエーションだったが、今日ばかりは最高の気分だった。
時間がかなりたち、そろそろだと思い気絶のふりを開始した。
最初はただ母がこっちに気が付くのをただ待つというすごく退屈な作業だ。しかし、この後、母を出し抜けるかと思うと、本吉は最高の気分だった。「生まれて早々親不孝ものだな」と心の中で思ったほどだ。
ずっと待っていても、一向に母から声がかからない。思いもよらぬ展開だ。
ただただ、蝉がうるさく、ただただ、トイレに行きたく、ただただ、暑かった。
結局、母は声をかけてこず、帰る時間になった。
「お前本当だったら自分の子供殺してたぞ。」と言いそうになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます