第3話計画
人間には「なれ」と言うものがある。実を言うとこの「なれ」にも
二つの種類がある。
一つ目は、良い意味での「慣れ」だ。
この「なれ」は物事に慣れる方の「なれ」だ。例えば、何か物事をこなすにしても、一回目でできなくても、二回、三回とやっていけばできるようになることがたくさんあるだろう。そしてこの「なれ」はほとんどが良い方向へ向かっていくのである。
二つ目は、悪い意味での「なれ」だ。
二種類の内、一つ目が良い意味の「なれ」だとほとんどの確率で二つ目は悪い意味がくると思う。まーその通りなのだが・・・
この「なれ」は馴れ合いの「なれ」だ。だんだん物事に慣れていく内にそのことが面倒くさくなり、適当になっていくことだと勝手に解釈しているのだが、多分あながち、間違ってはいないと思う。この「なれ」は悪い方向へ進んでいく。
今、本吉が苦戦しているのは、良い方の「なれ」なのだ。つまり、赤子として生まれ変わって、一か月がたとうとしているのに、全く慣れないのである。
トイレにも一人で行けない、何かが欲しくてもしゃべるとおかしいので要求できない、ざっと言うと自由に動けないのである。
本吉も時には、「そろそろしゃべってもいいかな。」と心の中で思うのだが、生まれて一か月でそんなにできたら、本当に天才かと思われる。もしくは、不気味がられて見放されるかだ。両親の対応がもしも後者であれば、これから、生きていくのが辛くなってしまう可能性が大きすぎる。そんなリスクは背負えないので、最低三か月、そこから徐々に話していこうと心に決めたのであった。
そんな本吉が今、一番困っていることは、ベビーカーで公園に散歩に出かける時である。
季節は七月しかも後半に差し掛かっていくところで、もうちょっとで一年で一番暑くなる時である。
ちなみに、母は「育休」というものをとっており、仕事は現在休んでいる状態である。
毎日、十時頃になると決まって公園へ母と向かったのだが、その理由としては、子供を外で遊ばせたりするのではなく、母がただ単にママ友というやつとおしゃべりがしたいだけという、遠回しな児童虐待行為だった。
ベビーカーの中は汗でむせかえり、体のところどころに直射日光が当てられ、極めつけは蝉の泣き声だ。
何度か本当に、大声で叫んでやろうかと思った本吉であったが、毎回我に帰り、やらなかったが、ある日にその虐待散歩から帰る途中でものすごくいい案を思いついてしまったのだ。
「明日の散歩で暑くて気絶したふりをしよう」と考えた。
本吉は心の中で邪悪な満面の笑みを作った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます