最終章 卒業できますか?
第454話 ハッピーエンドは許されない?
ども! おてんと です。
新章スタートです!
―――――――――――――――――――――
「ということでして、ええ、はい。いかがでしょう?」
「「......。」」
天気は晴れ。絶好の仕事日和だが、仕事はしていない。
というのも高橋和馬もとい、クズ野郎は2人の彼女の前で土下座をしていたからである。
感想はおでこがひんやりしていてちょっと心地よいってとこ。
夏の暑い時期に、己の額を床に擦り付けることに若干の快感を覚えている俺だが、そんな場合ではない。
絶体絶命のピンピン大ピンチである。
「聞き間違いかしら?」
「そうですね。すみませんが、もう一度聞かせてください」
「......。」
世の男性諸君に問いたい。
すでに交際している彼女に対して、新たに彼女を作りたいですとお願いするとしたら、なんと言えばいいのだろう。
昨晩、インターネットの力を借りて必死に答えを探した。目にしたのは“知恵袋”とか“グー○ル先生”とか色々とだ。
世界中であそこまで意見が別れている話題があるとは思わなかった。
二人の穴にち○ぽ刺しちゃえとか、もうち○ぽ切れとか二極化しててすごかった。
「葵さんを......」
だから何が答えなのかわからなくなって、千沙と陽菜に対して正直に言っちゃった。
導き出した答えはこれ。
「お、俺のセフレにしたいです......」
何を言いたいのかって言うと、言葉は選べということである。
*****
「そんな理由で私たちが許すと思う?」
「なめられたものですね」
「......。」
時は早朝。花火大会から一晩が経った俺たちは中村家のリビングに居る。昨晩は大いに楽しんだ俺たちであったが、後に待っているのは当然、事後処理である。
大袈裟に“事後処理”と言っても、俺が勝手に葵さんをセフレにした問題なんだけどね。
例えるなら己の性欲に流されるまま、女の子の
やべ、赤ちゃんできたらどうしよ、などと昨晩の勢いに後悔している朝だ。
ちなみになぜ昨晩のうちにこの話をしなかったのかというと、単純に各々疲れていたからである。面倒なことは明日にしようと意見が一致したのだ。
「し、しかし、葵さんは彼女枠ではないので......」
「「......。」」
「ですよね! 彼女枠じゃないからってそんな都合の良い話無いですよね!」
二人から向けられる冷ややかな視線に命の危機を感じた俺は必死に弁明していた。
で、“後悔している”なんて、当の本人である葵さんに失礼この上ない話に聞こえるかもしれないが、実はそうでもない。
なぜなら、
「だ、だよね!! 和馬君、私のことセフレにしたいって言って聞かないから! あははは! はは!」
「......。」
土下座している俺の隣で正座している彼女は普通に俺を裏切っていたからだ。
昨日はあんなに失恋して不貞腐れていたのに、この手のひら返しである。
くるっと平気で手のひらを返して、セフレを売りやがったのである。
「ねぇ、和馬。事の経緯をもう一度聞かせてくれないかしら?」
「わかりやすく、かつ自分に罪の意識を再確認させるようにです」
「......。」
ゴリッ。
我が額は床に、これでもかと言わんばかりに接地しているのに、何が足らないと言うのだろうか。
千沙様の美しい御御足が俺の頭の上に乗せられている。どうやら頭を上げることを許してはくれないらしい。
ぐりぐりとまぁ兄を人として扱っていない感がすごいのなんの。
え? なんでひれ伏しているのに千沙の足だとわかったのかって?
普段踏まれ慣れてるからね。見なくても一瞬でわかったよ。あ、これ妹の足だなって。
「俺は葵さんのことが嫌いだ。より厳密に言えば性格がな」
「あらそう」
「で?」
「でも身体は好きだ。セッ○スしたいと思ってる」
「最低ね。今に始まったことじゃないけど」
「交際中の彼女たちに向かってよく言えましたね」
「だが、俺はお前らの彼氏だ。葵さんを彼女にするわけにはいかない」
「そこだけ切り取って聞けば立派ね」
「それで至った答えは?」
「葵さんをセフレに――」
と言いかけたところで、俺の頭は彼女たちの御御足から猛攻撃を受けることになる。ドゴ、ガッと鈍い音がリビングに響き渡った。
これを繰り返すこと、かれこれ4回目になる。
今朝からずっとこんな感じだ。
ちなみにこの場には真由美さんと雇い主も居る。呑気にソファーでコーヒーを啜りながら、虐められている
とまぁ、こんな俺の逆DVを真横で見ている葵さんだから、俺の味方なんかしてらんないと踏んだのだろう。
立ち回りが上手い長女だ。
言い換えれば、明日は我が身とやらで必死になっているとも言える。
「なんでセフレなのよ」
「そこは『姉さんも彼女にしたい!』とか器の大きいこと言えません?」
「正直、難しい。こんな女を彼女にしたら面倒事が続くに違いない気がする」
「ねぇ、私ここに居るんだけど......」
あ、ごめ(笑)。
だって葵さんって面倒くさそうな性格しているじゃんね。
蒸し返すようで悪いけど、俺に非があるにしても彼女持ちを好きになっちゃいかんよ。
だからその実を知れないと彼女にするかどうかも渋っちゃう。
そりゃあ葵さんにはキスしたり、好きですとか言っちゃったけどさ。
本当にこれでいいのかと布団の中でずっと考えちゃった。知恵袋とかグーグル先生をサーフィンしながら考えちゃった。
......俺ってそこそこ薄情な男なんだよな。
「で、でも反対はしないんだろ? ならセフレでもいいじゃん」
「それは名目でしょう? 兄さんの都合でセフレと称して、結局は彼女と同じ扱いの」
「それならそうと、最初からセフレじゃなくて彼女にしたいって言いなさいよ」
「わ、私は二人の邪魔するつもりはないから、セフレ枠でも別に......」
誰一人として会話の中に欠かすことのないワード、セフレである。朝からセフレセフレと連呼しているこの空間は下品とカオスで満ちていた。
そして彼女たちの両親は呑気にテレビを視始めちゃっているし。
一応、娘たちのことなんだから耳くらい傾けようよ。
仮にも娘がセフレにされそうになってんだぞ。雇い主が止めようとしないのが逆に怖いわ。
「ほら、葵さんもこう言ってるし」
「そもそも童貞がなにを言ってるのよ」
「兄さんにセフレなんて必要ありませんから」
「で、でも、和馬君が好きな気持ちはちゃんとあるよ」
うっわ、俺が身体目当てって言ってるんだから、そっちも身体目当てって言ってくれよ。それで行く
こっちは身体目当てなのに、相手が俺のこと好きなんて公言しちゃったら八方塞がり以外のなにものでもないわ。クズ男のクズさに拍車がかかってるよ。
それにさっき葵さん、二人の邪魔はしないとか抜かしてたけど、あそこに掛けられているカレンダーはなに。
普段は彼女当番を決めるため、千沙と陽菜がそれぞれ赤色と黄色のシールを交互に張っているけど、今のカレンダーには青色が追加されてるよ。
あの色、どう考えても葵さんのだよね?
葵が青いシールってか? パコんぞ!!
それも今日以降の日付に、三色のシールがベタベタと重なって貼られてあるし。昨晩、花火大会から帰った後、三姉妹であのカレンダーをめちゃくちゃにしてたの丸わかりだぞ。
ある種の芸術さえ感じさせるが、彼氏からしたら何事とかと問い質したくなるカレンダーの有様だよ。
ちなみにだが、本日は赤色のシールである。
「はぁ。もうほんっと意気地無しね。じゃあ私たちが『別にかまわない』って言えばあんたは葵姉を彼女にするの?」
「そ、それは......」
「自分の本音を言わないなんて情けない男です」
どうしよう。今すぐ死にたい衝動に駆られたんだけど。
全く以てその通りだから何も言い返せないよ。くそうくそう。もう別れてくれよぉ。こんなクズ男の何が良いの。セックスしたい。
「「どっち!」」
「......どっちにする?」
「......。」
地味に葵さんも味方してくれないから腹立つ。そりゃあお互いに好きって気持ちがあるならセフレより彼氏彼女がいいよね。
対して俺はどうだろう。葵さんのこと好き......なんだよな。昨日めっちゃドキドキしてたし。
じゃあもう彼女でいいのかな。
3人も彼女にしちゃっていいのかな。
......いいのかなぁ。
「......もうジャンケンで決めたい」
「こ、この男は!!」
「見損なったわよ!」
「で、でも三回連続で勝たないといけないから、和馬君の勝率5%も無いよ?」
「賑やかねぇ」
「だね」
とまぁそんなこんなで俺たち4人のイチャラブ生活が幕を開けたのである。
はぁ......これでまた卒業までの道のりは険しくなったぞ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます