第443話 和馬さんの知らないところで!!
「ねぇ、この2つのドピンク枕はなに? どっちも同じなんだけれど」
「っ?! ち、ちがッ!! これは千沙が勝手に!!」
「ふーん?」
「ちょ! なんでパジャマ脱いでんの?!」
「え、シないの?」
「シないよ?!」
今朝、布団を畳んで押入に仕舞うの忘れてた......。
天気は曇り。今日は日中曇っていたが、夏の時期は曇りだろうと雨だろうと蒸し暑い。そんな今日は既に仕事を終え、後は陽菜と一緒に寝るだけである。
そう、今日は陽菜が彼女当番なのだ。
昨晩は千沙が彼女だったので一緒に寝たのだが、今晩は陽菜と同衾しなければならない。
正直、千沙よりも危険人物なので警戒を怠れない。
もちろん18禁的な意味で。
「よくこんなもの買ったわね」
「まったくな」
陽菜はダブルサイズ敷布団の上に置かれた、ピンク色の枕を一つ取ってぎゅっと抱きしめる。
そして口元を枕に埋めながら、その仕草を俺に見せた。
「......エッチしたい」
珍しく恥じらいながらも、頬を赤色に染めて。
就寝前だからいつものポニーテールは解かれ、肩まである彼女の髪がやけに色っぽい。
いつもグイグイ来る奴がそういう仕草を見せてくると、垢抜けた感じで刺激が強い。
思わず、今すぐにでも彼女の服をひん剥いて、男根を無理矢理ぶち込みたくなる衝動に駆られる。
......これじゃあ昨晩と一緒じゃないか。
「......するわけないだろ。ほら、さっさと寝るぞ」
「今揺らいだわね!」
「ゆ、揺らいでない!!」
くッ。次の可燃の日にこの枕を捨てなければ!!
なんだよ、YES枕が2つあるって。NOが無いとかクソすぎんだろ。秒で卒業して子作りに専念したくなるじゃん。
「でも千沙姉とシたんじゃないの?」
「し、シてないよ。それくらいわかってんだろ」
「あっそ。“初めて”だから慎重になるのはわかるけど、大事に取っておいても仕方ないわよ?」
「うっ」
ぐうの音も出ないな。
「はいはい! 経験者は言うことが違うなぁ!」
「......。」
「な、なんだよ」
「......別に」
俺の蔑む物言いに彼女は怒ったのかと思ったが、どちらかと言うと呆れた......いや、納得のいかない眼差しを俺に向けてくる。
何も言い返して来ないということは、陽菜はやっぱり元カレと経験したんだろうな......。
別にそれで陽菜のことが嫌いになるわけじゃないし、不満や文句があるわけじゃないが、彼氏として嫉妬心に駆られてしまうのは致し方ないものである。
「そういえば、昨日からママの様子がおかしかったけど、あんたなんか知ってる?」
「うーん。俺にもちょっとなぁ。なんか落ち込んでたというか......少し暗かったよな」
「どうしたのかしら?」
「さぁ」
昨晩も千沙とこんな会話をしていたが、原因はやはり俺だろうか?
思い返せば、あの時、真由美さんの様子がガラリと変わったのは、俺と葵さんが付き合っているという話が嘘だったと気づいてからだ。
「心配だわ。今朝聞いてみたけど、なんでもないって言われたし」
「そうか」
葵さんとどんな話をしていたのかわからないが、真由美さんはちゃんと現実を見た方がいい。
まぁ、あとは時間が解決してくれるだろ。
「あ、そうだ。あと数日で花火大会だろ?」
「ええ」
「その日ってお前が彼女当番じゃん? でも、せっかくだから去年みたいに千沙や葵さんとも一緒に行かない?」
「最初からそのつもりよ」
そうか、やっぱり駄目か......。陽菜は千沙よりも独占欲強い気がするから、これは説得するのに苦労しそうだ。
........................ん?
「え?」
「いや、だから元々私は四人で行くつもりよって」
「ま?!」
「マジよ」
い、いいのかよ......。てっきりその日を彼女当番にした理由は、俺と二人っきりで行くつもりかと思ってたわ。
自意識過剰と言われるかもしれないが、今までの陽菜の行動を振り返れば、そういう結論に至るのも致し方ない。
また四人で仲良く花火大会。ああ、なんと平和的な響きなのだろう。
が、素直に喜べるほど、バイト野郎は純真無垢じゃない。
俺は隣でこちらの顔をじっと見つめてくる陽菜を見つめ返した。
「......。」
「なによ?」
いや、その......じゃあなんでその日を彼女当番にしたの?
その日はきっとお祭りの時間まで仕事をするのだろう。少し早めに切り上げ、陽菜たちは浴衣に着替えてと、当日は忙しくなる気がする。
だからあまりゆっくりして居られないし、陽菜とイチャつく時間なんてない。
それなのに陽菜は、ただでさえ今月は当番になれる日が少ないのに、なぜそんな二人きりになるのが難しい日を選んだのか。
「......何を企んでいる」
臆病な童貞野郎は正直に聞くことにした。
彼女当番を買って出てくれた彼女に失礼なことこの上ない物言いである。
「あらやだ。人聞きの悪い」
が、先方の反応からして黒であることがわかった。
真っ黒だ。
黒よりの黒だ。
「と、当日は千沙だけじゃない、葵さんも居るんだぞ? 変なことするなよ? しないでください」
「嫌よ。なんで私が我慢しなきゃいけないのかしら」
なんと。自白されてしまった。
困ったな。ここまで堂々とテロ宣言されると対応がしづらい。
童貞をいじめないでよ......。
「あ、当日はちゃんとコン◯ーム持ってきなさいよ」
俺はいったい何をされるんだろう......。
童貞卒業を予告されるとは想像もしていなかった。
「あ、あのなぁ」
「いい? 持ってこなかったら、屋台のヨーヨー釣ってから水抜いて、ゴム代わりさせるわよ」
いや、お前はそれでいいんか。身体の中にヨーヨーのゴムが入っていいんか。
なんかいつにも増して気合入ってるな。
え、なに? マジで俺をその日に卒業させるの? どんな自信? 童貞は花火みたいに散っちゃうの?
そんなエッチにまで追い込む自信があるとは関心を通り越して、もはや恐怖しか感じない。
「ゴムが必要になるほど、俺は伊達に童貞してないぞ」
「あらそう。持ってこなかったら生になると思うけど、自己責任だからね?」
今、ゾクリとしました。無論、恐怖心からじゃなくて興奮的な意味合いです。
“生”と“責任”のパワーワード。変態の大好物だ。個人的には、“生”と“無責任”のクズ人間セットにしていただきたい。
やべ、想像したら勃ってきた。
「ふふ、当日が楽しみね」
「......花火を楽しもうな」
「そうね。花火も楽しみましょ」
「......。」
聞かなかったことにしよう。
割と厄介なことは後に考える俺であった。
*****
〜その後〜
*****
「う゛」
「〜〜〜ッ!!......んぐ......ん......ふー。ご馳走様。飲み込むのも一苦労ね。慣れたけど」
「すぴーすぴー」
「あはッ。まだカッチカチじゃない。ほんと変態よねぇ」
「すぴーすぴー......ふぐ」
「もっはい、だはひてあへふー」
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