第354話 別に他の子と登校するのは浮気じゃない

ども! おてんと です。


更新が大幅に遅れてしまい申し訳ありません。最近、忙しすぎて一文字も書けなくて......。


言い訳ですね。すみません、許してください。



――――――――――――



 「お兄さんの馬鹿! 昨晩破いたタイツ弁償してよ!」

 『ガチャ!!』

 「こうらぁぁあぁあああ! 彼女持ちの俺になんつうレッテル張る気じゃぁぁぁああ!!!」

 「怖キモ!」


 誰のせいだと思ってる。


 天気は晴れ。玄関先から空を見上げても快晴と言えるくらい青空が広がっている。今日は朝から晩までこの天気が変わらないらしい。


 そんな気持ちの良い天気とは裏腹に、俺の心を不快さで満たしてくれるJKが現れた。


 「あははは! でも昨晩タイツが破れたのは本当だよ」


 巨乳JKこと桃花ちゃんがうちにやってきたのだ。格好は制服姿でこれから学校に向かう模様。


 そして彼女は俺のことを無視して家の中に入り、スクールバッグを乱暴に廊下の隅に放り投げ、足早にリビングに向かっていった。座った食卓の席で彼女はばんばんとテーブルを片手で叩いて俺に茶を出すよう催促した。


 相変わらずだな......。


 「はい、麦茶」

 「どもども」

 「あのさ、今まで相当ヤバい発言してきたけど、これからはマジで玄関の前でああいうこと言わないでほしい」

 「そうだね。控えるよ」

 「絶対にするなって言ってんの。控えるとか自分でハードル下げんな」


 久しぶりにあられもないこと叫ばれたな。桃花ちゃんがJKになってから初めてじゃないだろうか。もちろん久しぶりだからしょうがないなどの理由で許すわけがない。


 「で、なんで?」

 「ああ、なんでお兄さんちに来たのかって?」

 「いや、タイツが破れた理由」

 「お兄さん、自分で彼女できたどうのこうの言ってるけどそれでいいの」


 禿同。でもこのセクハラ心を肝心の悠莉ちゃんに向けなければいいだけの話だよね。


 それ以外の女性にしたって別にいいでしょ。うん。


 「もしお兄さんの正体を知ったらどうするの?」

 「ああ、そうだなぁ。じゃあ、知られる可能性のありそうなうちの高校生にはしないってことで」

 「それ私も入ってますけど。人類にしないってことにできない?」

 「無理」

 「即答」


 だって定期的にセクハラしないと禁断症状出ちゃうし......。もしその禁断症状のせいでふとした瞬間に悠莉ちゃんにセクハラ発言したら破綻するかもしれない。


 なんたって悠莉ちゃんは俺が今まで出会ってきた女の子中で一番清楚な子だからな。


 清楚系JK最高。きっと“膜あり”だろう。


 っと、いかんいかん! 悠莉ちゃんに対してはいくら内心でもセクハラ厳禁だ。


 「私がお兄さんの本性を百合川さんにバラしちゃおっかなー」

 「したらお前をブチ犯して畑と一緒に耕すから」

 「神様、目の前にとんでもない犯罪予備軍がいらっしゃいます」


 桃花ちゃんに限らずバラした奴は即死刑な。そいつが女なら俺の童貞を捧げる代わりに命を奪うと誓おう。


 「で、なんでうちに来たの? まだ朝早いよ」


 俺は本題である、桃花ちゃんがうちに来た理由を聞くことにした。今は7時頃と、普段の俺ならばまだ朝食を摂っている時間帯だ。そんな時間帯に彼女はいったい何をしに来たのだろう。


 「昨日はおじいちゃんたちの家に泊まったから、今日はここから学校に向かわないといけないし、ついでだからお兄さんも一緒にどうかなって」

 「ああ、そういうこと。それなら陽菜と行けば?」

 「陽菜、最近怖いんだよねー」


 お前もか。


 俺も、彼女持ちである俺に自分の下着姿の写真を送りつけてくるあいつがエロいよ。じゃなくて怖いよ。


 「そ、そうか」

 「お兄さんも心当たりあるでしょ。っていうか、お兄さんのせいだし」

 「うっ。......ちなみにどんなところが怖いの?」


 「えっとね」と桃花ちゃんは言ってから、最近の陽菜の奇行を教えてくれた。

 

 「授業中、百合川さんのことずっと睨んでるところとか」


 なんで授業中にメンチ切ってるのあいつ。


 「授業中、百合川さんの弱みを探ったりとか」


 どうやって? ツインテ巨乳の彼女に非の打ち所なんて無いよ?


 やべ、また内心セクハラしちまった。


 そして桃花ちゃんはピッチャーのように何かを投げるような素振りを見せた。そんな彼女の片手には何も握っていない。


 「授業中、百合川さん目掛けて消しゴムのカス丸めたの投げてるし」


 軽くイジメてんじゃねーか。なんだあいつ。意外と捻くれたことしてんのな。


 というか授業ちゃんと受けろよ。授業中に仕掛けるなよ。いや、いつ仕掛けていいとかの話じゃないけどさ。


 「そ、それは一刻も早くやめさせないとな」

 「お兄さんが陽菜を選べば丸く収まるよ」

 「ざけんな。俺は悠莉ちゃんとやっていくって決めたんだ」

 「うわーお。おあつーい」


 うっせ。


 あ、そうだ。ついでに桃花ちゃんにあのことを聞いてみよ。


 「桃花ちゃんに聞きたいんだけど」

 「はいはい」

 「女の子って急に血が出てきちゃうことある?」

 「えっとね、言い方ソフトにしてもセクハラはセクハラだからね」


 うん。言って気づいた。これは完全に俺に非があるな。“女の子の日”のことを聞きたいわけじゃないんだ。


 「ごめん。鼻血の話だよ」

 「“鼻血”?」

 「そ」


 以前、悠莉ちゃんと屋上で昼食を摂っていた際、彼女は急に鼻からブビッと盛大に血を出していたのだ。


 本人は体質だって言うし、これを他人に言いふらす俺のこの行為は最低かもしれないが、それでも女性にとってはストレスの感じ方が男性と違うかもしれないので今後の心構えとしてもぜひ同じ女子である桃花ちゃんに聞いておきたいのだ。


 ほら、いくら体質の問題だって言ってもそんな唐突に出るなんて悠莉ちゃん本人が一番辛いでしょ。


 もしかしたらストレスからかもしれないし、俺がその原因にならないよう、という本音なところもあるけどさ。


 「うーん。私はあんま鼻血出さないからよくわからないけど、その人によってやっぱり出やすい出にくいあるんじゃない?」

 「そうかぁ......」

 「もしかして百合川さんのこと?」

 「ああ、うん。できれば他言しないでほしい」

 「するわけ無いじゃん。人として」


 ふむ、人をイジることが生きがいと言っても過言じゃない彼女が「人として」など果たして口にしていいのだろうか。甚だ疑問が残る。


 「へー。そーなんだ。百合川さんも苦労してそー」

 「できればベッドの上で初めての血を見たかった」

 「お巡りさぁぁあああん! この人でぇぇええす!!」


 こら叫ぶな! ご近所さんに! 特にお隣のお前の祖父母である佐藤さん夫婦に聞こえるだろ!


 あ、たしか佐藤さんご夫妻は揃って難聴だから大丈夫か。でも叫ばないでほしい。


 「まぁ、お兄さんにできるのはポケットティッシュを多めに常備しておくくらいじゃない?」

 「トイレットペーパーの方が良くない?」

 「トイレットペーパーを常に持っている彼氏ってなに」


 禿同。いくら悠莉ちゃんのことを思っていても引かれたらアウトだ。


 でも悠莉ちゃんは鼻血が出たら鼻の穴にティッシュを突っ込むタイプらしいから、それなら長さの調整ができるトイレットペーパーの方がいいんじゃないかと余計な世話を焼いてしまう。


 ちなみに彼女が俺にそんな姿を見せたことに関して若干引いてしまったのはここだけの秘密である。


 無論、そんなことで悠莉ちゃんを嫌いになるわけが無い。その使用済みティッシュを天ぷらにして食べるくらいの度胸はある。なに言ってんだ俺は。


 「お茶もいただいたことだし、そろそろ学校行こ!」

 「え、まだそんな時間じゃないけど」

 「遠回りして行こうよ!」


 な、なんでそうなる。面倒くせぇ。どっかお出かけするならまだしも、行く先がただの平日に通う学校じゃん。


 あ。


 「もしかして俺と久しぶりに一緒に過ごしたいとか?」

 「キッモ!」

 「その言い方ものすごく傷つくからやめてくれない?」

 「自意識過剰なのがいけないんじゃん」


 いやまぁ、そうだけどさ。


 桃花ちゃんは廊下に放り投げてた自分のスクールバッグを持って玄関へと歩きだした。


 「自意識過剰ついでに言うけどさ。もし悠莉ちゃんに桃花ちゃんと一緒に登校しているところ見られたらどうするの?」

 「女たらしって思われるかもね」


 「でしょ」

 「でも逆にさ、少しでも悠莉ちゃんがそのときの私に嫉妬したらどう?」


 「そりゃあ後ろめたさはあるけど、ちょっと嬉しいかな」

 「だよね。もし見られたらどんな顔するか見たいでしょ」


 なんというドS......。


 でも悠莉ちゃんがどんな反応するか少しだけ興味があるな。桃花ちゃんの話が本当なら悠莉ちゃんは少なからず俺のことを好いているはずに違いない。


 「でもちょっとなぁ......」

 「臆病だなぁもー」


 もし仮に悠莉ちゃんがヤキモチ焼いたとしたら、結局は俺の自己満足で彼女を不快にさせただけになる。


 そんなことを懸念している俺に桃花ちゃんは手をぽんと叩いて一つ提案した。


 「じゃあさ、百合川さんが普段どんな感じの子なのか、私が授業中観察したあの子のこと教えてあげる」

 「40秒で支度しな!」

 「切り替え早ッ。それに支度するのはお兄さんの方だし」


 彼女には紳士に付き合いたいと願う変態野郎はいとも容易く桃花ちゃんの誘いに乗ってしまうのであった。

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