閑話 悠莉の視点 もはや策士な〇〇である ビ
ども! おてんと です。
少し早いですが、次回は3話前(349話)の時系列に戻ります。許してください。
――――――――――――――
「あ! あの変態野郎に抱き着こうとしてる!」
急な展開ですが、説明する暇が無いので一言で片付けます。
桃花ちゃんがおそらく高橋和馬と思われるヤリ○ン野郎の背後から抱き着こうとしている!!
「噂通りヤリ○ンしてそうな顔ッ!」
自分で言っといてなんだけど、どんな顔なんだろう。
2年生のフロアの廊下に居る私はそんな二人を前に、まずは桃花ちゃんの奇行を止めるべく走り出した。
ちなみに桃花ちゃんの後ろには陽菜ちゃんが居て、彼女はなぜかスマホを桃花ちゃんに向けている。おそらく撮影でもしているのだろう。意味はわからないけど。
「お兄さぁーん! 愛しの桃花だよぉー!!」
「っ?!」
「寂しかったよぉー!!」
桃花ちゃんの急な掛け声にビクッとするヤリ○ン野郎。そんな野郎相手に躊躇なく後ろから抱き着いた桃花ちゃんだ。
私は遅かったかと後悔して一瞬膝から崩れ落ちそうになったけど、それでも踏ん張って距離を縮めようと足を動かす。
「も、桃花ちゃん?! な、なんでここに?!」
「なんでだろーねー」
二人は知り合いなのか、まず初対面同士で抱き着くのはあり得ないと改めて見てわかった。
「ちょ、どういうこと?! って、こら! 放せッ!!」
戸惑うヤリ○ン野郎は巨乳美少女に抱き着かれて嬉しくないのか、完全にホールドがキマっている状態でも解放されようと抗っている。
口では嫌がっているようだけど息子は喜んでんだろ? やっわらかいお乳押し付けられて満更でもないんだろ?
このド変態がッ!!
膨らますとこ膨らましたら通報すっからな?!
「ええー、もうちょっとハグしてようよ〜。いつもしてほしいって言うくせに〜」
「なッ?! ここでそれをッ!! うおぉぉおおぉおお――」
“いつもしてほしい”って言うのかこの野郎ぉぉおおおぉぉおお!!!
そこ代われぇぇぇええぇぇぇぇええ!!
このハゲぇぇぇえええぇぇぇえええ!!
あ、これは違った。
「仕方ない!」
私だって策も無しにここに来たわけじゃない。二人までの距離はまだあるけど、やっちゃえバー○ーカー! じゃなくて日○!
でもなくて私ッ!!
「た、高橋和馬さんですかッ!!」
「「っ?!」」
覚悟を決めた私の声は普段の何倍増しの声量で、向こうにいる桃花ちゃんとヤリ○ン野郎に話しかけた。周りに生徒が居るにも関わらず、恥ずかしさで赤面しながらも苦渋の決断で叫んだ。
桃花ちゃんは渡さない! そのお乳は私のだッ!!
「高橋和馬さんですかッ?!」
「あ、はい。高橋です」
一度目で返事しろよ! 名前が合ってるか間違ってるかわっかんねーだろーが!
「あ、あの! わッわわわわ私ッ!!―――私ッ!!」
まずは自己紹介。
「1年1組の
大丈夫、ぞんざいには扱われない。
男好きする私のボン・キュッ・ボンなスタイルなら平気だ。
「高橋さんッ!! ひッ、ひひひひ一目惚れしました! 私と付き合ってくださいッ!!」
惚れてなんかいねーよぶぅあかぁぁぁぁああああ!!
******
『ドサッ』
「......。」
マジか。こいつ倒れたぞ。
マジか。
「お、お兄さんッ?!」
桃花ちゃんが急にぶっ倒れたヤリ○ン野郎を揺さぶって安否を確認した。い、息はしているから大丈夫みたい。
び、びっくりした。私が彼のイカ臭い手を握ったら突然、糸が切れたように気を失ったんだもん。思わず私の手は実は毒手だったのかと思い込むレベルだった。
「ちょ、え?! 百合川さんだよね?! 毒手使った?!」
「つ、使ってません」
桃花ちゃんも私と同じこと考えてたみたい。
「な、なんで高橋さんは倒れたのですか?」
「知らないよ! たぶん女性に手を握られた経験が少ないから告白と相まってキャパが超えちゃったんだと思う!」
どういうこと? ヤリ○ンですよね、この人。なんで女性に手を握られただけでぶっ倒れるの?
それじゃあまるで童貞の中の童貞みたいじゃんね。この人に限ってそれは無いと思うけど。
「とりあえず運ばなきゃ!」
「ど、どこにですか?」
「保健室!」
そう言って桃花ちゃんは周りの先輩男子生徒を捕まえてヤリ○ン野郎を保健室に運んでもらうよう頼んだのであった。
周りには私の告白時にもそうだったけど、決して少なくない先輩たちが居たので頼み込むにはちょうど良かったタイミングである。
少ししてからヤリ○ン野郎が運動部と思しき体格の良い男子生徒二人に担がれてこの場から運ばれていった。
今となって気づいたけど、私って相当恥ずかしいことしたなって思う。だって知らない人たちが大勢居る中で好きでもない相手に告白したんだもん。
「というか、なんでお兄さんに告白したの?! 一目惚れって本気?!」
「え..............................」
「......。」
「......................................................おそらく」
「いや“間”!! なに今の“間”?! 一瞬時が止まったのかと思ったよ?!」
「す、すみません」
「それに“おそらく”ってなに?! 曖昧すぎない?!」
そんなこと言ったってしょうがないじゃないか。
私が考えた策はこうだ。
シンプルにまだこの男と付き合ってすらいない桃花ちゃんと陽菜ちゃんより先にこの男を私のものにする。ただそれだけ。
これにより多少は二人から恨まれるかもしれない私だけど、こんなヤリ○ン野郎なんかに二人が弄ばれる方がよっぽど苦痛だ。
そんなことを考えていた私の前に居る桃花ちゃんはハッと何かを思い出したかのように回れ右した。
「やっぱ陽菜も倒れてる!!」
「なんでですかッ!!」
どういうこと? なんで陽菜ちゃんまでヤリ○ン野郎みたくぶっ倒れてるの?
「たぶんお兄さんが告白されたのがあり得なさすぎて、ショックで倒れたんだと思う」
だからどういうこと?
他人が告白されて倒れるってあり得る?
「うぅ」
「陽菜、大丈夫?! どこか痛いところある?!」
「む、胸が苦しい......」
「陽菜の胸ちっちゃいから面積的に辛くなるような
「こ、殺す......」
「百合川さんを殺そうとしないでッ!」
いや、あんたに対してだよ。たぶんそこは告白した私にじゃないでしょ。
もちろん、まだ奴からちゃんとした返事を受けていないけど、これから私たちはカップルになるかもしれない。あんな女泣かし野郎とだ。
でもちゃんと打開策はある。それはこの男がクズ男故にいつでもそれらしい理由でこっちからフれるというメリットがある。
だってそうでしょ。最悪、どっかから奴の悪事をかき集めて突きつければ簡単に破綻できるはず。
そのためには陽菜ちゃんたちが抱いているヤリ○ン野郎への好意が失せるまでこのカップルを演じ続けなければならない。
やがて二人がこの男をどうでもいいと気にしなくなってからフればいいだけの話だ。
「ひ、一目惚れしたのは事実なんです! そ、それでは私は失礼しますね!」
「あ、ちょ!」
そう言い放って私は半ば強引にここから立ち去った。これ以上ボロが出ないようにするためだ。
ふふ。なんて完璧な作戦。人としてどうなのって思われるかもしれないけど、相手は女を性処理道具としか見ていないクズ野郎である(ブーメラン)。そんな奴に容赦なんて必要ない。
最低な奴め......これを機に私が追い詰めてやる!
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