閑話 桃花の視点 ツッコミ不在でうぇーい!

ども! おてんと です。


今回は新章行くまでの繋ぎです。319話で「次で最後になりまーす」とか言っといてこの様です。許してください(本編は終わってます)。


―――――――――――――



 「お兄さんの馬鹿ッ! お兄さんのせいで母乳出るようになっちゃったじゃん!」

 『ガチャッ』

 「桃花ちゃん? 和馬は居ないけど、ちょうどお茶してたから入って」

 「わーい」


 私が言うのもなんですが、スルーしていいんですか、智子さん。


 私、米倉桃花は春休みのとある日に、暇を持て余していたのでお兄さんちに遊びに来た。時間帯も夕方頃で、数時間もしないうちに晩ご飯の時間になる。今晩はお兄さんにご馳走してもらおうかと思っていた私である。


 でもさっき智子さんが言ったようにお兄さんは居ないみたい。春休みは中村家で住み込みバイトをするって言ってたっけ。長期休暇の際は毎回そうなんだけど、それはそれで私のことをほったらかしにするからちょっと妬けちゃう。


 「お兄さんはいつ帰ってくるんですか?」

 「えーっと、たしか春休み最終日は家でゆっくりするって言ってたから、帰ってくるのはその日かな?」


 ってことは、明日戻ってくるってこと?


 たしか明後日の入学式と始業式は同日一緒にやるんだったよね。午前中に在校生の始業式、午後に私たち新入生の入学式をやる予定だ。


 うへぇー。マジくそどーてー。私が春休み中に遊びに来ると思わなかったのかな?


 まぁ、智子さんが居るからいいけど。


 私は偶然居合わせた智子さんにお茶を誘われたので、さっそくリビングに向かうことにした。


 テーブルにぽつんと置かれていたのは一杯のホットコーヒーで、近くに角砂糖が入った容器は無く、ミルクすら入れていないとわかるほどコーヒーは黒かった。“大人の飲み物”というイメージがあるのは、私が高校生になっても変わらないらしい。


 が、私はあるところに目が行ってしまい、立ち止まってしまう。


 「......。」

 「ささ、座って座って。今、お茶を用意するから」


 すでにコーヒーが置かれている席の向かい側に座った私だが、なんとこのテーブルの下には銀色の缶がまばらにたくさん置かれていた。数にして10、いや15缶はあるね。さすがお酒大好き智子さん。今がシラフで良かった。きっと昨晩飲んだとかだろう。


 無論、こちらも“大人の飲み物”である。


 「なに飲みたい? 紅茶? コーヒー?」

 「ココアで!」


 「ああー。それでもいいけど、牛乳切らしてるんだよねー。あ、そう言えば、桃花ちゃんは母乳を出せるんだったよね?」

 「お湯でいいです!」


 「自分の母乳の味に興味ない?」

 「お湯でいいです!」


 私処女で、お兄さんは童貞です。母乳出ません。


 キッチンに居る智子さんは、「そう? わかった。お湯でココア淹れるね」と言って牛乳の代わりにお湯でココアを作ってくれている。


 まさかスルーされた母乳の件がここで仇になるとは......。智子さんだってそれくらい嘘だってわかっているくせに!


 ものの数分でココアを淹れてくれた智子さんは私の前にココアが入ったマグカップを置いてくれた。


 「ありがとうございます」

 「ん。私も家に帰ってきたときにアイツが居なくて寂しかったわぁー。桃花ちゃんが来てくれて助かったぁ」

 「それは嬉しいこと言ってくれますね。そうだ、そんな恩知らずなお兄さんに何か仕返ししましょ!」

 「いいね!!」


 お兄さんのどこに“恩知らず”な部分があるのか聞かれたら返答に困るけど、こういうのはノリが大切だ。


 本人居ないし。


 母親公認だし。


 「お兄さんのお宝を捨てちゃうというのはどうでしょう?」

 「あ、もう資源ゴミの日に捨てちゃった」


 「そうですか。じゃあ、性処理道具とか捨てません?」

 「それもこの前、可燃の日に捨てちゃった」


 「えーっと、それでは使い道の無さそうなゴムとか」

 「それは昊空そら君――じゃなくて、近所の子が水風船したいって言ってたから渡しちゃった」


 やることやってんな、この人。容赦無さすぎでしょ。ちょっとお兄さんに同情しちゃう。


 それに近所の子に使い道が明らかに違うゴム渡してるし。


 破れちゃいけない耐久性を重視したゴムのはずなのに、割って楽しむ水風船の代替にしちゃ駄目でしょ。子供相手に大人が渡しちゃ駄目でしょ。


 色々とぶっ飛んだ智子さんだけど、こういう人こそ私が求めていた人物像である。


 「桃花ちゃんって和馬と一緒の高校なんでしょ?」

 「? ええ。陽菜を追いかけてたらお兄さんの居る高校に受かっちゃいました」

 「陽菜ちゃん、可愛いよねぇー」

 「ねー(反応も)」


 智子さんが言った通り、私が陽菜と通うことになる“学々がくがく高等学校”はお兄さんと同じ高校である。これを知らないのはお兄さんだけだ。


 黙っている理由も校内でばったり会うまでの秘密サプライズにするため。


 絶対面白そうな反応するよ。ふふふ。


 「高校に行ってもあいつのことお願いね」


 悪巧みを考えをしていたら、智子さんがいつになく真面目な顔をして、少し冷めてしまった自分のコーヒーを見つめながら私にそう言ってきた。


 「はい、もちろんです。.........いじり倒します!」

 「そうこなくっちゃ!」

 「「かんぱーい!!」」


 コーヒーの入ったティーカップと、ココアの入ったマグカップが宙でぶつかり合う。乾杯に向いている飲み物でも容器でもないのだが、こういうのはノリが大切だ(本日2回目)。


 テレビすら点いていない女二人だけの空間でも騒がしいことこの上ない。近所迷惑もいいとこである。ま、隣は私の祖父母の家だし、二人は難聴だし、気にする必要なんて無いんだけど。


 「暇だし、そろそろ夕飯の時間だから何か一緒に作る?」

 「いいですね!......と、言いたいところですが」


 「“ですが”?」

 「最近、家の手伝いですごい料理作らされるんですよー」


 「うっそ?! 子供に家事任せてるの?! 酷い親ね!」

 「お兄さんが居たら絶対『ブーメラン刺さってんぞ』って言われますね」


 智子さんはズズッと冷めたコーヒーを飲んだ。そしてあることを決意した顔になり、コーヒーをテーブルに置いて急に立ち上がった。


 「今晩は出前を取りまーす!」

 「いえーい!!」


 智子さん大好き!


 お母さんには悪いけど、正直、私と智子さんとの相性が良すぎて親子の関係になりたいくらいだ。


 「ピザがいい? お寿司? ラーメン?」

 「そうですね……あ! ここから少し離れたところにある中華料理屋さんがオードブルのデリバリーを始めたみたいですよ!」


 「中華料理! 私大好き!」

 「私も!」


 「「はっるまき! しょーろんぽ! ぎょーざ! す・ぶ・た!」」


 リビングで踊りだすハイな私たちである。決してヤクはやっていない。


 実はこれでもシラフなんですよってね。誰も信じてくれなさそー。


 「あ、それなら直接お店行っちゃう? オードブルより好きな料理選べるんじゃない? 車出すよ!」

 「そうですね、行きましょう! ここからなら車で10分かからないと思いますし!」


 「私ペーパーだけど、きっとそれくらい価値があると思う!」

 「デリバリーにしましょう!」


 「危険リスクと美味しさは相互作用って――」

 「デリバリーにしましょう!」


 美味しいものをいただくときに必要なのは危険リスクじゃありません。


 また同時に、今日の馬鹿騒動で智子さんと意見が噛み合わなかった唯一の瞬間である。


 「でもあそこの中華料理屋さん、結構お高めですよ?」


 私はほぼ決定事項なことに野暮なことを言ってしまった。だって以前、両親に連れてってもらったけど、メニューに書かれていた値段が高かったのを覚えていたから。


 そんな私の心配とは裏腹に、智子さんは人差し指をチッチッチッと左右に振って見せてニヤリと笑ってみせる。


 「ふふ、両親共働きの上に一人っ子よ? それに和馬がうちをずっと留守にしているから光熱費とか食費が浮いているから贅沢し放題」

 「息子様様ですね!」

 「ただの童貞です!」


 きっとお兄さんは今頃くしゃみが止まらずに困っていることだろう。その原因が私たちにあると常々思わないでほしい。私たちを放置したお兄さんが諸悪の根源なのだから。


 こうして女子会という名の近所迷惑な騒ぎがしばらく続くのであった。


 また自由奔放な私たちは、羽目とかたがが外れるとともに、ブラホックも外して全裸でパーリナイしまくった。うっれうれの40代女性と、ぴっちぴちの10代女の子が、である。


 別に私はお酒を飲んでいないけど、JCからJKにジョブチェンしつつある私にとって今しかできないことだと思ったからやったに過ぎない(意味不)。



――――――――――――――



ども! おてんと です。


久しぶりの桃花ちゃん回でした。許してください。


次回から新章、【第十二章 付き合ってくれるんですか?】に入ります。乞うご期待!


さて、この次章のタイトル回収はイエスかノーか、あとフーなのか......。私にもわかりません。


どーせ次の章もグダグダになるんです......。テンポってなんですかね。


そ、それでは、ハブ ア ナイス デー!

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