第305話 ホラー映画でドキドキ? それともビキビキ?

おてんとです。最近、更新遅くてすみません。許してください。その分、今回は長めです。


―――――――――――――――



 「皆で映画を観ましょ!」

 「ん。たしか、電子レンジでチンする系のポップコーンがありましたよね」

 「灯り消すよー」

 「葵、気が早いわぁ。まだ準備できてないじゃない」

 「高橋君は何飲む? メロンソーダって相場が決まってるけどコーラとオレンジジュースしかないや」


 え、なにその連携。早。


 天気は晴れ。と言っても、今はもう夜で農作業は無い。中村家一同とバイト野郎は日中の仕事を終え、就寝まで余暇を過ごしている。


 もう夕食は済ませているのでいつものようにリビングで寛いでいたのだが、なぜか陽菜が映画を観たいと言い出してきた。


 それに続いて他の皆も一切躊躇無く、流れるようにして映画を観る準備を進めていく


 「お、オレンジジュースで。.....急に映画ってどうしたんだ?」

 「桃花から借りたのよ。せっかくだから皆で観ようとね」

 「ああ、この前、桃花ちゃんちに遊びにいったんだっけ」

 「ええ。帰る際に『良かったらお兄さんたちと観て』って」


 桃花ちゃん、しばらく会ってないけど元気にしてるのかな。あの子も陽菜と同じく中学を卒業したら晴れて女子高生の仲間入りだ。


 嬉しいのか悲しいのかわからないが、これからは彼女に会う機会はそう多くないだろう。高校は実家から通うって言ってたから、前みたいにお隣の佐藤さんちに居るわけじゃないし。


 なんか無性に会いたくなったな。あの巨乳JCに。


 ああ、もうJCじゃないか。


 「あ、このポップコーン、アルミ製のフライパン式じゃないですか」

 「別にどっちでもいいんじゃない?」

 「よくないですよ。私がコレに火を当てるためにキッチンに立つんですよ?」

 「わ、私がやるから千沙はリビングで待ってて」


 キッチンでは葵さんと千沙がなんかポップコーン作り始めちゃってるし。いや、映画には持ってこいの代物だけどさ。


 あれか、出来立てのポップコーンが味わえるっていうあの簡易キットか。電子レンジでチンするものもあれば、あの場にあるアルミ製のちょっとしたフライパンのやつもある。


 無論、千沙が食べたいというが、単純にフライパンに火を当てるだけという行為でも火事の危険性があるので、葵さんに任せて千沙には大人しくしてもらおう。


 「というか、映画っていってもなんの映画なの?」

 「さぁ? よくわからないわ」

 「は?」

 「だってパッケージが付いてなかったし、円盤ディスクには何もプリントされていなかったもの」


 なにそれ、怖。


 陽菜が手にしているのは真っ白な風呂敷だ。風呂敷に包まれて中身に入っていたのは、陽菜が言っていたように無地のDVDである。何も書かれていないってなんなの。恐怖しか感じないわ。


 呪いのDVDとか言わないよね? 怪しすぎるって。


 「へぇー。興味深いね」

 「ちょっと怖いわねぇ。私、ホラー系は苦手なのよぉ」


 「はは。俺の隣においでよ。何かあったら抱きしめていいよ」

 「あなた、私よりホラー映画苦手じゃない」


 「目を瞑って耳を塞げばホラーなんて無意味さ」

 「映画を観る意味すら無いわねぇ」


 夫婦漫才かな。


 そうなんだ。真由美さんと雇い主の二人はホラー映画が苦手なんだ。意外だな。


 無論、ホラーといっても色々とある。サスペンス系とかSF系、オカルト系と色々だ。また日本と海外ので恐怖心の煽り方が違うので、そこもホラー映画を楽しむ一要素となる。


 「じゃあさっそくプレーヤーにセットするわね!」


 と、ポップコーンの準備であったり、部屋の灯りを消すなどしてホームシアターのような雰囲気を作り上げていたら、陽菜が待ちきれなくて謎のDVDをプレーヤーにセットしていた。


 同時に他の皆もソファーに座り始めた。テレビに向かって右から順に真由美さん、雇い主、葵さん、陽菜、千沙、俺の順である。無論、1つのソファーではなく、2つのソファーに別れて座っている。


 自ずとテレビの画面に映し出されたのは、借りてきた映画のメニュー画面だ。ここで“はじめから”を選択すれば映画が始まる。


 が―――


 「「「「「「ホラー映画.....」」」」」」


 どうやら謎のDVDはメニュー画面の時点でわかるホラー映画だったようだ。


 「なによ、ホラー映画じゃない。予想通りっちゃ予想通りだけど」

 「ちょっとお父さん、アイマスクと耳栓取ってくる」

 「ここに居る意味ないじゃん.....」

 「困ったわぁ。私も苦手だから観ない方がいいかしらぁ」

 「私は別に苦手じゃないのでこのまま観たいですね」


 おっと。家族で映画鑑賞をする雰囲気じゃなくなってきたぞ。どうすんだよ。


 桃花ちゃんも皆で楽しめるような映画寄越せよ。雇い主と真由美さんが即リタイアする勢いじゃないか。


 「高橋君は平気なの? ホラー映画」

 「まぁ、ものによりますが、所詮作り物だと割り切れば逆に楽しめるかと」

 「へー。チビっても知らないからね」

 「ち、チビりませんよ」


 その会話を最後に雇い主と真由美さんはリビングを去って行った。早く寝る気なのだろうか、歯を磨いて寝室へと向かっていった。


 この場に残るのは巨乳長女と我儘次女、ポニ娘の三姉妹とバイト野郎一匹である。


 「ほら、再生しますよ」

 「自分はいいですけど、葵さんと陽菜は怖い映画が好きなんですか?」

 「うーん。ホラー映画自体あんま観ないし、一人で観ようとも思わないから数年ぶりって感じね」

 「私は普通かな? もう大学生だし大丈夫でしょ」


 なにその謎理論。大人になったからブラックコーヒー飲めますみたいなもんで、ホラー映画も観れるようになるの?


 千沙が待ちきれなくてメニューの再生項目を選択し、テレビの大画面にホラー映画の上映が始まった。手元には先程雇い主から貰ったオレンジジュースと、葵さんがキッチンで作ってきたポップコーンがバケットに入って膝の上にある。


 さて、美少女達の手前、ホラー映画なんて怖くないと強がってしまったバイト野郎は無事、ポーカーフェイスを貫けるだろうか。



*****



 『きゃぁああぁぁああ!!』

 「ひっ」

 「な、なんか居るッ!」

 「おばけなんてないさ! おばけなんてうそさ!」

 「......。」


 おい。3人とも苦手じゃねーか。


 先程から俺らが観ている映画は後半パートに入ったようで、あと少しで終わりを迎えるだろう。正確な上映時間はわからないが、もう一時間は経っているし。


 で、肝心のホラー映画なんだが、親が親なら子も子というようにこの三姉妹も耐性が無かったようだ。内容的にはとある廃病院に男女4人が侵入し、幽霊は本当に居るのかどうか検証を行うという10年程前に作成された古い海外の映画だ。


 俺? 俺は大して怖いと思わないな。たしかに最初はちょっとビビったけど、隣に居る連中がいちいち声を上げるので冷静になってしまった。あれだ、パニックになっている人を見かけると却って冷静になるヤツ。


 「だけどちょっと! だけどちょっと! ぼくだってこわいな!」

 「あの、千沙さん。“ちょっと”ではないと思うんですが.....」

 「おばけなんてないさ! おばけなんてうそさ!」

 「......。」


 一旦歌うのやめろ。うるせー。


 お前、『私は別に苦手じゃないので』って言ってたじゃん。なんで怖がってんの。


 そんでもって俺の身体右側にぴったりとくっついてくるし。俺の右腕をホールドするのはかまわないけど、かなり力入っているよね。ちょっと痛いんですけど。


 いや、可愛いけど痛いです、本当に。


 『どこだッ!! どこに居るッ!!』

 「居る居る居る居る居る居る!! そこに居るわよッ!!」

 「.....陽菜、左腕の感覚が無くなってきた。ちょっと緩めてくれ」

 「無理ッ!!」


 “無理”。


 先程、陽菜が「怖くなる前に一旦トイレ行ってくるわ!」とか言い出し、映画を一時停止して小休憩を挟んだのだ。


 その際、先程の座る位置的にバイト野郎はソファーの端の方に座っていたのだが、なぜか今は俺を真ん中に右に千沙、左に陽菜のフォーメーションとなった。葵さんは陽菜の隣に居る。


 陽菜による左腕のホールドは千沙と比べて圧倒的にダメージがでかい。左腕を持ってかれそうだ。


 『ひぁああぁぁああ!!!』

 「もう嫌ッ!」

 「葵さん」

 「ひぃ!」

 「じ、自分にビビらないでくださいよ」


 長女も長女で『大学生だから平気』とか謎理論は役に立たず、妹たちと一緒になって怖がっている。


 そんでもって陽菜にしがみ付くようにして丸まっている。


 「あそこに居ますって! 逃げてくださいよ!」

 「なんか見えた!」

 「ゆうれいこわい」

 「.....。」


 まぁでも、千沙と陽菜に抱き着かれるのは嫌じゃないな。すっごいドキドキする。


 もちろんホラー映画を観ているからとかじゃない。


 二人に両腕をがっちりホールドされたことにより、血行不良でドキドキになったわけでもないと思う。


 美少女に抱き着かれてドキドキしてるんだ、たぶん。


 そう思いたい。いてててて。


 「っ?!」

 「きゃ!」

 「うお」


 つっても千沙は平均的なおっぱいのサイズで、抱き着かれるとむにゅっと感がすごいけど、陽菜は大したことないな。貧乳でも押し当てられたら嬉しいことに変わりないが、今一感動に欠ける。


 これ絶対口にしたら殺されるよね。


 「あ、ちょ」


 と思ったら、陽菜はホールドした俺の左腕をより自身に密着させてきた。これによりマイハンドが陽菜の生足ふとももたちの間に挟まれてしまった。部屋着のショートパンツだから陽菜のもち肌の感触が体温とともに直に伝わってくる。


 それに演技とは思えないくらい、やはりホラー映画に怖がっているだろうと感じるほど太ももが汗ばんでいた。


 ごくり。


 きゃーきゃーと騒がしい状況とは別に生唾を飲む音が聞こえる。


 これ、アレだよね。かなり陽菜のおま〇こ様に近いから、俺が90度時計回りに掌を返したら、ひょっとしたら、ひょっとしなくとも指がアワビにタッチしちゃうよね?


 「......。」


 ふむ。日頃、口ではなんだかんだ言っても触れてみたいものは触れてみたい気持ちがある。


 陽菜の中古おま〇こに向けて、とりあえず掌を回わそう。あとはホラー映画の演出でビクッとすればズブッといくことを祈ろう。ぐへへ。


 はよ来い、幽霊。アワビにタッチするにはお前の存在が不可欠なんだ。


 ホラー映画でこれほど恐怖シーンを待ち望んだことないな。


 「か、和馬君はよく平気で居られるね」

 「え? ああ、なんかムラムラしてきました」

 「なんでッ?!」


 いや、ちょっと失言だったな。ホラー映画でムラムラしたらサイコパスやないけ。


 依然として部屋の灯りを消しているからか、葵さんには俺の両腕がどうなっているかわからないのだろう。片方は次女のおっぱいに挟まれて、もう片方は目前に中古アワビを捉えているんだぜ?


 おまけにどっちもすっごく良い香りがするし。なんで同じ洗剤で洗っているのに、俺とこんなに差があるの? 自家発電のせい?


 駄目だ、煩悩のせいで映画の内容が頭に入ってこない。


 「あ、ん?」

 「お、終わったわね.....」

 「やはり誰一人として助からなかったですね」


 なんと、もう至福の上映時間が終わってしまったのか。ホラー映画の終了と同時に俺の両腕にしがみついていた我儘次女とポニ娘は離れてしまった。その際、両腕、特に右腕の血行が一気に流れた気がした。


 「って、ちょっと! 和馬! あんたなにポップコーン落としてるのよ?!」

 「はい?」

 「あ、兄さんに預けてたポップコーンが落ちてます」

 「わぁ。片付けしないとだね」


 部屋の灯りを点けたことで視界が良好になった途端、陽菜が俺に声を上げてきた。


 俺の足下を見ればあまり手をつけることが無かったポップコーンが床に散らばっていた。気づかなかったな。


 ポップコーンの散乱状況的に俺が落としたようで、下手に動くと踏んでしまうかもしれない。お菓子の撒菱まきびしみたいだ。


 って、ちょっと待て。たしかに俺の膝の上に乗せてたよ? でも俺が落とすなんてありえない。


 「おいおい。俺が落とすわけないだろ? 陽菜と千沙に両腕を固定されていたんだからな」

 「え、陽菜も抱き着いてたんですか?」

 「ええ、思った以上に怖かったからよ」

 「まぁまぁ。予想以上に驚かされたからなんかの拍子で落ちちゃったんで―――しょッ?!」


 “しょ”?


 葵さんが目を見開いてある所をガン見していたから、俺は思わず彼女の視線に従ってその場所に目をやってしまった。


 つられて千沙と陽菜も同じ所を見る。


 「「「あ」」」

 「ちょ、ちょちょちょちょ! ほ、本当にしてたの?! ホラー映画でッ?!」


 なんと、バイト野郎の愚息がテントを張ってらっしゃるじゃないか。それでポップコーンバケットが傾いて落ちちゃったのか。


 原因は言わずもがな。


 いや、言っておこう。決してホラー映画の影響じゃない。千沙おっぱい陽菜アワビのせいだ。


 「え、エッチな描写1ミリも無かったのになんでお、おっきするの.....」

 「な、なにおっ勃てているんですかッ!! この変態ッ!」

 「か、和馬、さすがにそれはないわ.....」

 「ちっちちちちちがッ! これは決してホラー映画のせいじゃなくてだな!! っていうか見んな!!」


 が、変に言い訳したくても言い訳の内容もアレなので、言葉選びに苦戦してしまったバイト野郎であった。


 葵さん、いくら俺が変態だからってホラー映画でおっきするなんて勘違いやめてくださいよ.....。


 ホラー映画とは別の意味できゃーきゃー言われるバイト野郎の夜はもうしばらく続くことになりそうである。

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