第304話 寝込みを襲わないのは眠気のせい
おてんとです。更新遅くなりました。許してください。
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「おはよう、ございます」
「ふぁーあ。ざいまーす」
天気は曇り。最近、日中は暖かいを通り越して暑いと感じることが多くあったためか、今日のような曇り空では日の光が遮られる分、若干涼しく感じる。
と言っても、まだ朝7時だから天気に関係無く涼しい。
「おはよ。朝ご飯の支度するから少し待っててね」
「あら、千沙姉も一緒じゃない。珍しいわね」
「本当だ。千沙がこの時間帯に起きてくるなんてびっくりだよ」
「ほら、二人とも顔洗ってらっしゃい」
そう。昨晩は千沙と一緒に寝た(未遂)ので、同じ時間帯に南の家に来たのだ。俺だけそっと出ていこうかと思ったけど、隣で幸せそうに寝ている千沙を見てはイラっときたので叩き起こしちった。
朝食をいただくため、南の家に着いた俺たちは既に起きて食事中である4人に顔を合わせた。
が、今一まだシャキッとしていなかったからか、真由美さんに促されて俺らは脱衣所の洗面台へ向かった。本来ならば俺は東の家の方の洗面台を使うのだが、今日は寝ぼけていたからか、普通に忘れてこっちに来ちゃった。
同じく千沙も。
「ねむぅ」
「マジそれ。誰かさんが夜中に起こしてきたからいい迷惑だよ」
「言うて兄さんはすぐ寝ちゃったじゃないですか」
ったりめーだろ。お前が至近距離で無防備な状態でも眠すぎてムラムラしなかったわ。倦怠感がすごいのなんの。
雄である自身失くすくらいな。
洗顔のためにここに来たのだが、千沙は俺が男だからか、そんなに手間がかからない俺を優先させてくれた。その代わりに彼女は待ち時間で歯を磨くらしい。
俺は雇い主が普段使っているであろうフェイスウォッシュを借りて、泡状に出てきたそれを手のひらに乗せた。
「うわぁ。兄さんの顔、すっごいゲッソリしてますよ」
「いや、俺だけじゃなくてお前も―――っ?!」
と言おうとしたとこで、俺は洗面台の鏡に映った二人の顔を見て驚く。
どっちも寝不足顔だと思ったからだ。
が、
「な、なんでそんなにツヤツヤしてんだよ」
「? ああ、まぁ、乙女なんてそんなもんです」
いや、どんなもんですか?
いつもの千沙の寝起き顔は元気が無く、むしろ顔色悪いなって思わせるくらいなんだが、今日はツヤツヤという表現が正しいくらい血色の良い顔だった。
なんだその艶肌は。ただ眠たかっただけかよ。
「「まるで性行為した後の男女だな(ですね)」」
おっと。思わぬところで兄妹の思考が一致してしまったぞ。
性行為の後は決まって男性がゲッソリ、女性はツヤツヤで朝を迎えるのが相場らしい。鏡に映った俺らの顔はまさにそれである。
しかし肝心の性行為をせずにこの関係とはこれ如何に。
「私、まだ処女です」
「俺もまだ童貞だわ」
おいおい。重要な部分が未経験なのに、それ以降のことばっか経験してどうすんのさ。
同衾然り、腕枕然り。そんな経験ばっか要らないわ。
つうか異性と寝るだけで健康な肌を手に入れられるなんて燃費の良い身体してんな。俺はそう思いながら洗顔を始めた。
「ふふ。今晩もお邪魔しましょうか?」
「勘弁して.....」
寝てる間にドレインタッチされた気分だわ。そんな夜が繰り返されては堪ったもんじゃない。
「ちょっと、まだ顔洗ってるのかしら?!」
「っ?!」
「あ、すみません」
血は繋がっていない兄弟がいつまでもグダグダしていたら脱衣所に陽菜が入ってきた。
「朝ご飯冷めるわよ!」
「わ、悪い。すぐ行く」
「私も顔洗ってから向かいます」
「まだ洗ってすらいないの?!」
顔を洗い終えた俺は若干だが眠気を覚まし、この場を後にしようとする。
「あ、陽菜に聞きたいことがあったんでした」
「?」
「この体重計って壊れてます?」
千沙が脱衣所にある体重計を足で指して陽菜に聞いていた。
俺は関係無いみたい。この二人が会話するとちょっと身構えちゃうんだよね。理由は言わずもがな。おかげで眠気が吹っ飛んだよ。
俺は一度歩みを止めた足を再び動かした。
「そんなことないと思うけど.....」
「.....まさか」
「?」
「いえ、なんでも」
なんか後ろで二人が会話しているが俺には関係無いことなので、朝食をいただくためにリビングへと向かった。
******
「今日はキュウリを植えるために必要な
「「おおー!」」
今日のお仕事はバイト野郎と巨乳長女、ポニ娘で夏野菜であるキュウリを植える前の下準備を行うようだ。
「はぁ。だっる」
「「「......。」」」
あと可愛い妹も。
美少女が“だっる”なんて言っちゃ駄目でしょ。
「ま、まぁまぁ。偶には外で体を動かすことも大切だよ?」
「そうよ。千沙姉はちょっと運動不足じゃない」
「うんうん。一緒に良い汗流そう?」
「余計なお世話です」
気分が曇ってらっしゃる千沙ちゃんが、嫌嫌仕方なく家業を手伝うにはもちろんちゃんと理由がある。
.......らしい。
というのも、俺は千沙が外で仕事する理由を知らないのだ。聞いても教えてくれなかった。なんでだろうね。
「働きたくない症候群がぁ」
「そ、そんなに嫌なら無理して仕事する必要ないと思うんだが.......」
「.......兄さんにはわかりませんよ」
「わからないから教えてほしいんだけど」
「教える必要がないので黙秘権を行使します」
これ。俺が理由を聞いてもさっきから「黙秘権を行使します」と言って理由を話さないの。
まぁ、渋々だけど手伝ってくれるなら4人で仕事するまでだ。
どうせ以前みたいに真由美さんにお小遣い関連で怒られたから、反省として仕方なく手伝いにきたのだろう。
「で、今日はキュウリの植える前に必要なパイプを組み立て―――」
「ああ、去年もやりましたね。“組み立て”と言うより“分解”の方でしたが、仕組みは大体覚えてます」
「そうね。パイプをアーチ状に組み立てて専用のネットを被せて完成よ」
「先輩が説明途中なんですけどッ!!」
すみません。でもまた説明するなんて時間の無駄ですよ。
ここ、キュウリ畑となるこの畑は、長さ20メートルにも及ぶ高畝が一定間隔で6列作られていた。その上から黒色のマルチシートが被せられていて、2畝を1セットに合計3つ程、キュウリ用のパイプをこの高畝に突き刺して設置する。
バイト野郎は去年、葵さんと片付けを行ったので構造自体はちゃんと覚えている。
ついでに葵さんのおっぱいを揉んだことも。
「そうですよ。ちゃんと説明を聞きましょう。兄さんと陽菜は良くても私は何をしたらいいのかわかりませんし」
お前、去年、畑の“片付け”くらいは手伝おうと思えば手伝える状況だったのに何もしなかっただろ。このクソニートが。
が、妹に頼られて満更でもない長女はこれに応えて説明を再開する。
「大したことはしないんだけどね。まずはキュウリ用のパイプを一定間隔でこの高畝の配布します」
「面倒くさいですね。......ん? パイプが2種類ありますよ?」
「そ。配るのはその2種類を1セットとして使うから、オスとメスを1本ずつ配ってね」
「“オス”と“メス”?」
「そ、そこは聞き逃していいから」
「なぜ?」
「ほ、保健体育だからです」
「? ああ、なるほど」
へぇー。パイプが2種類あるのを“オス”“メス”って言い分けているんだ。
別に極端に違うってわけじゃないけど、この2種類のパイプの差込口同士を合体させることによってアーチ状になる訳だが、その合体行為が
察しが良いのかよくわからないが、千沙もこれに気づいて言及を止める。腐っても乙女って奴だ。
「このメスのおま〇こパイプに挿すのが、こっちのオスのち〇ぽパイプよ」
『ガシン、ガシン』
「「「......。」」」
誰も求めていない解説するとか、君なんなの。欲求不満なの。この変態が。
そんでもって俺見て言うな。これ見よがしにパイプをがっちりハメめんな。刺したり抜いたりすんな。
バイト野郎は金属音で興奮するような上級者じゃねぇから。
「な、なんでわざわざ濁したのにそういうこと言うのかな」
「ええ。すぐカズるのは陽菜の悪い癖です」
「ねぇ、なんで俺のせいみたいになるの?」
おかしいだろ。今回ばかしは陽菜の単独下品発言がいけない。
馬鹿は無視して俺は一人で作業を始めることにした。
「ん? 意外と難しいな」
この高畝にキュウリ用のパイプをアーチ状にするために、オスとメスのパイプを合体させようとしたのだが、差込口が錆びていて挿しにくかったり、長さ2メートル以上にも及ぶパイプのせいで歩くバランスが取りづらい。
「ちょっと! 変に動いてマルチシートに余計な傷をつけたらどうするのよ!」
「ご、ごめん」
「今日は4人居るから、2人1組でパイプの両端を持って確実に差し込んでいこ」
「なるほど。じゃあ私は姉さんから説明を聞きながらやりたいので、陽菜と兄さんがペアになってください」
え、この変態と?
葵さんも未経験者の千沙と行動したいらしいのでバイト野郎の意見は認められなかった。
「私がメスのパイプ持つから、あんたから挿入しなさい」
「わかった」
俺は言われた通り、メスの差込口をしっかりと握って固定し、オスの先っちょを挿し込もうとする。
「和馬のがぁ」
「ちょっと静かにしててください」
「ぜ、全部
「ちょっと静かにしててください」
「んッ! 動かないで!」
「葵さん! チェンジでッ!!」
くそ、この淫魔が。なんでいちいち情欲を煽ってくんだ。
「ご、ごめんね? 半分、和馬君のせいでもあるから我慢して」
「だからなんで自分が悪いんですかッ!!」
「陽菜、童貞で遊んだらいけませんよ。ばっちぃです」
「ふっ。別にいいじゃない。減るもんじゃないし」
そんなこんなで人数が増えれば増えるほど騒がしくなるというジンクスの下で、三姉妹とバイト野郎による共同作業は時間とともに進んでいくのであった。
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