第243話 鈍感系妹は身内のことでも鈍感である
「大晦日どうしよ」
「暇だったら私とゲームします?」
「お前ほんとブレないよな.....」
天気は晴れ。今日の仕事は終わり、午後10時の今は千沙の部屋にて二人っきりで一緒にテレビゲームで遊んでいる際中だ。ゲームしながら世間話でもしている。
もちろん東の家である。騒がしくしても窓さえ開けなければご近所迷惑にならないので、喘ぎたい放題だ。じゃなくて騒ぎたい放題だ。
「大晦日に予定無いんですか?」
「無いな。自宅で年越しだ」
そんな最高なヤリ部屋なのに、年頃の男女はこうしてゲームなんかで時間を無駄にしてしまっている。実際に千沙の危うい発言もあった。
1時間程前、千沙に「私の部屋に来てください」って言われたら、セッ〇スしかあり得ないだろ。なんでゲームなんだよ。マジ卍るぅー。
「うちじゃ駄目なんですか?」
「いや駄目だろ。普段良くしてもらってるけど、さすがに大晦日まで邪魔できない」
千沙、エッチしたくなったらすぐ言えよ。もう息子にゴムを装着してるから。通常形態へと戻ったけどちゃんと張り付けてるから。
3秒でそそり勃たせる自信あるわ。
「私は気にしませんけどね」
「千沙はね。でも皆、内心どう思っているかわからないじゃん?」
ああー、ムラムラするよぉー。
ごめんね? 隣でこんな内心セクハラばっかして。でも、曖昧な言い方で誘うような発言をしたお前も悪いよ。責任もって処女寄越せ(笑)。
「聞いてみます?」
「なんか図々しくない? 大晦日だけじゃない。正月だって家族水入らずでゆっくりしたいでしょ、普通」
「ぐちぐちうるさいですねー」
千沙に呆れられた。
「兄さんはどっちで年越したいんですか?」
「‟どっち”って.....。まぁ、うん。よくわからな―――いッ?!!」
返事をテキトーにしていたら至近距離からゲームのコントローラーで側頭部を強打された。頭に激しい痛みが。でも、そんな痛みより妹の奇行による動揺の気持ちが大きい。どうしたんだよ。
「さっきからなんなんですか?!」
「へ?」
「うちで過ごしたいみたいな物言いをしておいて、変な言い訳並べた挙句、最後はよくわからないって!」
「そ、そんなに怒る? お、落ち着けよ」
「変に距離を置く兄さんに腹が立っているんです!」
俺が距離を?
もうクリスマスの件は許したし、特にこれと言って距離を置いている訳じゃないぞ。
「私、兄さんにレイプされましたよね?!」
「うおぅい! “されそうだった”な!! 未遂だよ?!」
「どこが未遂ですか! 完全にアウトですよ!」
もしかしてまだ怒ってらっしゃるのだろうか。でもアレは完全に俺がいけないので言い逃れはできない。もっと言うなら、今通報でもされたら息子にゴムが着いていることも言及される。
「ですが今日もこうして一緒にゲームしています」
「え? あ、うん、ありがと?」
「.....ほんっと鈍いですね」
アレだろ。こうして一緒に二人っきりで居るからレイプ魔である俺をもう許してくれたんでしょ。
「俺は鈍感系主人公じゃない。おっし、エッチする―――ぎゃ?!!」
「マジ死んでください」
今度は俺の股間にコントローラーを叩きつけてきた千沙。どこが間違っていたのだろうか。
「うぅ。痛いよぉ」
「はぁ。もういいです」
「俺の何が悪いんだよぉ」
「.....今日は膝枕を要求しませんね。そういうところです」
ん? ああ、そう言えば無意識に変なことしないようにしてたかも。だってあんな事件があったんだし、迂闊にJKに近づくとかちょっと勇気要るじゃんね。
「話を戻しますが、兄さんや私たちがどうこう言うより、両親とはどうなんですか?」
「あ、そう言えば聞いてなかった」
「まったく.....。親だって子共と年越したいに決まってますよ」
一般家庭ならそうなのだろうが、こちとら一人息子である和馬君がこんなんだから両親が揃ったらきっと年越しセッ〇スすることだろう。
そんな家に居たいと思うか? 聞くまでもない。でも千沙が納得してなさそうだから電話して聞こう。
「せっかくだし、今確認するか」
「え?! 今ですか?!」
「え、駄目?」
「い、いや、時間帯的にどうなんです?」
「親子だからヘーキヘーキ」
急に常識人ぶるな。もっと千沙でいろ。チサれ。
両親は共働きで家に居ることが多くない。実質一人暮らしのような自由な日々を送っている和馬さんだ。
ちなみに去年は家族全員で年越したっけ。年末は仕事無いだろうからきっと今年も居るはずだ。
俺はスマホを取り出し、母親に電話をかける。なぜ父親じゃないのかって? 前科が原因を物語っているからね。
『プルプルプルプル♪』
「ああー、緊張してきました」
「いや、千沙には変わらないよ?」
なんで大晦日の予定を聞くだけなのに、千沙も出る感じになってんだよ。話がややこしくなるだろ。
『――なに、和馬。こんな時間に珍しいじゃない。お母さんが恋しくなった?』
「遅くにごめんね。聞きたいんだけど、年末は二人は家に帰ってくるよね?」
夜遅くに電話かけた俺だが、母さんの冗談に付き合ったら切りがないので軽く無視して本題に入った。
『え、ああ、うん。いつも通り今年も家に帰るわよ。お父さんもそうって聞いた』
「そ。わかった。じゃ―――」
「こんばんは。兄さんの可愛い妹、千沙です」
おい。人が通話を終わらせようとしたときに入ってくんな。
『あら千沙ちゃんも一緒なの?』
「はい。いつもお世話してます」
「‟お世話になってます”な。こっちが睡眠時間削っていつもゲームに付き合ってあげてんだろ」
『仲良いね? もしかしてそういう関係?』
「あ、いえ。.....ふふ、バレてしまったのらしょうがないですね」
「ちょ、こら!」
『.....え、マジ?』
「まだ未定ですが」
「違う違う! そんなんじゃないから!」
『あ、あんた陽菜ちゃんどうするのよ?』
「陽菜ですか?」
「どっちも違うわッ!!」
『いや、ごめんなさいね? これ口止めされてたわ』
「?」
「.....もう切るよ。おやすみ」
『え、ちょっと待ちなさ―――ブツッ!』
半ば強引に通話を終了させたち〇ぽじゃない方の息子。‟口止めされてたわ”って口にした時点で口止めになってないから。
「なんで切るんですか」
両の頬をぷくーっと膨らませて抗議の眼差しを向けてくる妹。マジ可愛いな。
「お前なぁ.....」
「そう言えば会話の中に“陽菜”が出てきましたね。なんだったのでしょう?」
「.....さぁ?」
いや、コイツ鈍感か。助かったけど。
「つうか、“まだ未定”って?! まさか俺と―――」
「いえ、それは無いです」
「は?」
何がしたいんですかね、この妹。
「‟まだ未定”って言ったじゃないですか」
「あ、うん」
「今じゃないです」
「意味わかんないんですけど」
千沙は再びゲームのコントローラーを手に取ってゲームを再開した。
「私、‟カップル”というある種、‟足枷”となる二人組の存在意義がわかりません」
俺も千沙の真意がわかりません。
なんだコイツ。急にどうした。お兄ちゃんを置いて自走しないでくれ。
俺はそう思いながらどこか達観したような雰囲気を醸し出す妹を見つめた。
―――――――――――――――
ども! おてんと です。
すみません! 切りが悪いので続きは次回に持ち越しです。一話で切りよくできず、申し訳ございません。許してください。
それでは、ハブ ア ナイス デー!
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