閑話 美咲の視点 説明しよう。脳内お花畑ちゃんと二次元一夫多妻君だ
「はぁ.....」
「どうした?」
「体調悪いんですか?」
バイト君と仕事をした日曜日から数日が経ち、生徒会室で執務を行っていたワタシはため息をついていた。
そんなワタシのため息に生徒会書記と生徒会副会長が反応する。ここに居るのは先週と同じでワタシたち3人だけだ。
「この前話してた例の男性の件ですか?」
「男性.....じゃないよ」
「ま、まだ意地を張りますか」
ワタシは仮にも生徒会長。示しがつかないし、できる限りバレないようにしなければならない。日頃の“処し癖”もあるしね。
.......いやもうバレてるか。
「しかし最近、会長の理不尽な制裁もやらなくなったな」
「ああー、アレですか。『彼氏が居ない生徒会長の妬みによる行為』って言ってたアレ」
「誰、そんなこと言ってたの。ケツバットするから教えて」
「それを聞いて生徒会役員が言う訳ないだろ」
「副会長、刑を執行しようとしている美咲さんも生徒会役員です」
「そんなこと言う生徒は大体3年の威張っている先輩方だ」
「いや、同年代、後輩からも言われてるぞ。カップルに年齢は関係無いからな」
「それと先生方や校長もです」
「.....。」
詰まる所、全員ね。
「で、今度は何があったんです?」
「なんというか、こっちの過失なのにあっちが思い詰めちゃって」
「はい?」
「ある仕事してもらったんだけど、こっちが伝え忘れたせいでミスさせちゃったのに自分が悪いと思ってるんだよね」
「すみません。前から思ってたんですけどどんな仕事なんですか?」
「あ、農家の仕事」
うちは農家ってことを知っているのは副会長だけだったっけ?
「か、会長、農家なんですか?!」
「うん」
「なんだ知らなかったのか」
「はい。今日一のびっくりです。日頃の横暴な態度から極道の娘かと思ってました」
「ワタシも今日一でびっくりだ。まさか後輩にそんな風に思われてたなんて」
「まぁ、先生どころか校長にもまるで友達を相手するかのような接し方だしな」
そうかな? 先生方もフレンドリーな感じがして良いって評判だとワタシは思い込んでるけど。
「で、うちの家業を手伝ってもらっているんだ」
「農家で?!」
「親戚かなんかだろ」
「いや、赤の他人」
「赤の?!」
「きょ、今日一でびっくりだ。そんな物好き居るんだな」
二人ともびっくりしすぎ。
まぁ、変わってるしね。そこは否定できない。
「それで話の続きになりますが、完全に会長が悪いんですか?」
「うん。彼は一般家庭で育ったんだ。農業の知識なんて無くて当然なのに、知らなかった自分が悪いと思って謝ってきてね」
「会長が『ワタシが予め言わなかったのが悪い』って言えば済む話だろ」
「副会長はほんっとわかってないですねー。先週の件、忘れたんですか?」
「.....そうなんだよね。変に意地になって.......謝るのはワタシなのに謝れなかったんだよね」
「はは。会長も所詮人の子か」
今更だけど、こんなこと二人に相談していいのかな。副会長はともかく、書記の子はもう同じ学校の男子生徒だって感づいているし。
「普通に考えて、私だったら言わなかった上司のせいにします」
「普通だな」
「ごもっともだね」
「ですが反面、以前会長に『邪魔な存在』って言ったので強く言えず、上司の機嫌を損ねないようとりあえず自分のミスにしておきます」
「わかる」
「じゃあ本当は内心、『クソが。俺のせいな訳ねーだろ』って思ってたのか」
なんてこった。バイト君、可愛い顔してそんな裏表の激しい性格の持ち主だったなんて.....。
「程度はあれど、そんなとこだろ」
「私も普段、副会長に任された仕事でミスがあったとき」
「え」
「どう考えても私のミスじゃないけど強く言うと仕事放棄されそうなので黙っておきます。だから気持ちはよくわかりますよ」
「そ、そうか。悪いな」
「不出来な上司って厄介ですよ」
「.....。」
なんでだろう。副会長が責められているのに私にまで言葉が刺さるのは。
「謝った方がいいかな。今更だけど」
「うーん。以前の件が関係無くても抵抗ありますよね」
「そいつが気にしてないなら別にいいんじゃないか?」
気にはしてないと思うけど、ワタシの中で引きずっちゃいそうな気がして。ほらワタシ、生徒会だし。間違ったことは正さないとね。
「というか、なんでその人は会長のとこで働いているんですか?」
「赤の他人だったんだよな。たしかに理由は気になる」
「ああ、それは.......」
以前、先輩がうちの野菜の提供を望んだり、人件費削減などのことからバイト君を派遣したいって言ってたけど、それはバイト君の意思じゃない。
「.......そういえばワタシも知らないな」
「え」
「よ、よく理由も聞かずに一緒に働けるな。そんな怪しい者と」
たしかに。今度聞いてみよう。
「あ、なんかその人の写真とかありません?」
「見た目で判断する気か? 貴様、それでも生徒会役員か」
「いやいや。私がそんなことする訳ないじゃないですか。単なる好奇心です」
「まぁ、どんな奴かは気になるな」
「でしょう? 会長の頭から離れない男性がどんな人か見てみたいです」
言い方。それじゃあワタシが恋してるみたいじゃないか。
ワタシはスマホを取り出して写真アプリを開いた。中身は猫の写真ばっかである。特に最近はゴロゴロ君を撮ることが多い。
「うーん。うちで働き始めたのも2ヶ月くらい前のことだし.......」
「わぁー! 猫ちゃん可愛いですね!」
「よく人のプライベートな面を勝手に覗けるよな」
「まぁ、副会長と違ってエロ画像なんてないし、見られて困るような物は無いよ」
「そうですよ。二次オタ無駄撃ち副会長とは違うんです」
「.......“無駄撃ち”ってワードにすごいダメージきた」
「あ、これがあった」
「「っ?!」」
両隣りで書記と副会長が写真を見て絶句する。
あ、そうか。これ、いつぞやのバイト君が藁小屋で寝泊まりしたときの写真だった。
つまり、バイト君の裸の写真である。
「じ、事後.......」
「エロ画像より上位な写真じゃないか」
故に勘違いされる。
「ちょっ! こっちの写真ってだ、だだだだ男―――」
「通常時の男性器だな.....。じ、“事後”はこんなものまで撮るのか」
故に勘違いされまくる。
「は、刃渡り10センチくらいあるんじゃないですか?!」
イチモツは刃物じゃないよ。
「ああ、まぁ、なんというか。気づいたらこうなってた」
「そ、そんな激しい一夜を.......」
「うっ。蕁麻疹が.......。童貞の俺にはここから先は厳しい」
はは。バイト君も立派な童貞だよ。もしかしたら副会長と気が合うんじゃないかな。
「この男性と付き合ってるんですか?」
「いや?」
ここで問題が発生した。
写真を見せてしまった以上、バイト君がこの学校に通っているということがバレるのも時間の問題だ。交際しているなんて嘘はつけない。
「ではなんですか?」
「.......。」
言われて気づいたけど、“事後”みたいな写真なのは否めない。
「会長は美人ですし、モテますから理解できますけど、実際に目の当たりにすると........」
それにそれを否定して処女だなんて言いたくない。すでに後輩に先越されてたら示し(?)がつかないじゃないか。意地とも言うね。
つまり“交際”は否定して、“事後”を認めないと.....。
「も、もしかしてこの男性とは.....」
書記が震えた声で言う。その言葉の続きはわかってる。
ごめんね、バイト君。
「.....うん。セフレ」
「すごっ!!」
「っ?!」
ワタシが意地っ張りなせいで君、ワタシのセフレになっちゃったよ。
「さっすが! 経験豊富でほんっと大人な女性って感じですよ!!」
「.....ありがと」
「お、俺はもう帰る」
はは。未経験なのにセフレ作っちゃったよ。
――――――――――――――――――
ども! おてんと です。
本編10章のタイトルを「緊張は騒がしいですか?」→「寒いのは苦手ですか?」に変更させていただきました。許してください。
「変なタイトル文だな」って思ってたんで変えました。
それでは、ハブ ア ナイス デー!
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