第159話 恋の話はソニックですね。青じゃなくて桃色ですけど
「ただいまー.....って誰も居ないけどつい言っちゃうんだよなー」
「お母さまが居るけど」
「うぇっ?! あ、母さん、帰ってきたてたのか」
「ただいま」
「おかえり?」
帰ってき早々「おかえり」って言うのはなんか変だね。
学校から帰ってきた俺は
「まぁ長旅で母を案じてくれるのは嬉しいけど」
「まだなんも言ってないけど」
「とりあえずリビングにこのまま行きなさい」
なんだ急に。しかもちょっとキレ気味な口調でさ。俺なんかしたかな。ちゃんと掃除はしてたし、エッチな雑誌やDVDはちゃんと仕舞っておいたはずなんだけど。
「んだよ。こっちは早朝バイトからの学校で疲れてるのに―――」
俺は言いかけて静止した。
母さんに言われた通り、リビングに向かったのだが、そこにはすでに一人の桃花ちゃんじゃない方のJCが行儀よくちょこんと正座していた。
「お、おかえり、和馬」
陽菜である。
「.....家、間違えたみたいです。すみません。では自分はこれで―――」
「逃げんな、バカ息子」
逃げるために家を出ようとしたが、俺の肩を信じられない握力で掴んできた母さんに止められてしまった。
「で、これはいったいどういうことなの?」
座卓で俺ら三人の話合いが始まる。正面に母、隣には陽菜である。
「と、言われましても」
「和馬君のことは真剣に考えています! お義母様!」
「陽菜、ちょっと黙ってて」
なにこれ。どういう状況。なんで陽菜がここに居るの?
「私は今日、えーっと帰ってきたのはちょうどお昼頃だったかな? 帰ってきて少ししたら陽菜ちゃんが家に来たのよ」
母さんがお茶を少し飲んでから話し始めた。
「で、その際にね、『和馬ぁー。女性が結婚できるのは16歳からだって! 楽しみね!』って玄関先から聞こえてね」
「.....。」
「痛っ!! なんでゲンコツするのよ?!」
お前がまた馬鹿なことを開けゴマ感覚で言うからだよ。
「それで、何事かと思って慌ててドアを開けたら顔を真っ赤にしたこの子が居たの」
「なぁ。陽菜、あれだけ注意したのになんでやめないの?」
「別に良いじゃない、減るもんじゃないし」
減る減らないの話じゃないの。わかる?
「でね、初めて桃花ちゃんに会ったときみたいに、母さんの勘違いかもしれないからとりあえず陽菜ちゃんとお話してみたんだ」
「和馬への愛を説いたわ」
「まず勘違いを解け」
なに、本人が居ないのに戦闘続行してるんだよ。
「ほら。こんなにも和馬のことを想ってるじゃない?」
「梃子でも動かないわ!」
「わかった。俺が悪かった。陽菜、誤解は解かなくていいから黙ってて」
大方、いつもみたいに俺んちで勉強をしようと陽菜が来たが、運悪く母さんと居合わせてしまったのだろう。
んで、これ見よがしに愛を語ったと。本人の意思は聞かない主義なのかな。
「正直、ドン引きだよ」
「だよね。いきなりそんなこと言い出すJCはヤバいよね」
「いや、結婚を前提にお付き合いしているあんたによ」
「俺かい」
いやいや。やめてよ。なんで母親なのに息子の意見を聞こうとしないんだよ。
「だって桃花ちゃんのときと違ってこの子.....陽菜ちゃんは何も否定しなかったんだよ!」
「.....。」
「痛っ! またゲンコツしたわね?!」
「こら! 親の前で堂々とDVするんじゃないよ!」
ドメスティックじゃない。ただの天誅だ。
「ちなみに陽菜になんて聞いたの?」
「えっとね」
ここでしばし母とJCの再現VTRが始まる。
『か、和馬、の彼女さん?』
『え、あ、はい!』
『はい』じゃねーよ。なに即嘘ついてんだこら。
『えーっと』
『和馬の母です』
『お、お義母様でしたか』
『うっ、涙が.....。あのバカ息子にこんな可愛い彼女が』
感動するのが早い。受け入れるの早すぎ。こんな童貞野郎がこんな可愛い子と付き合うわけないじゃん。
『え、“バカ息子”? あ、そっちの息子ですか』
下ネタじゃねーか。
息子って言われて真っ先に“そっち”を想像するな。なんで初対面同士が秒でち〇ぽの話すると思ってんだよ。この淫魔が。
『む、息子の息子まで見る関係に......』
馬鹿が伝播しちゃったじゃん。どんな解釈の仕方だよ。やめてくれよ。
『で、改めて聞きますけど、和馬とはそういう関係で?』
『は、恥ずかしながら』
見せてないよ? 付き合っている
『母としては正直、急な話で混乱していますが』
『い、いえいえ! 結婚と言ってもそんなすぐの話ではないですし、もう少し考えて話し合っていきたいと言うか、なんというか....ごにょごにょ』
駄目だ。陽菜、お前もう完全に自分の世界に入ってるだろ。話し合うも何も付き合ってすらしてないのに、なに勝手に家庭を築こうとしてんだ。
『そ、そこまで......。ゴッホン! あんな頼りないバカ息子ですが、末永くお願いします』
『え、良いんですか?!』
『はい。母としてはすぐにでも籍を入れてもらいたいくらいで―――』
「と、まぁこんな感じだったよね?」
「はい! いやぁーダメ元で言ってみるもんですね!」
「ダメ元で人の人生決めちゃ駄目だろ」
それで、俺が返ってくるまで打ち解けあったと。
桃花ちゃんが前言ってたように、陽菜も今日は午前中で学校が終わったのだろう。だから暇になった午後に俺んちに来た訳ね。
「で、こんなに愛を語っている陽菜ちゃんを前に、あんたはなんて言うべきかわかってんのよね?」
「ああ。陽菜、帰ってくれ―――痛っ?!! スリッパで頭殴んなよ!」
「そこは『これからは高橋 陽菜だな』でしょうがッ!!」
「ちゃんと息子の話聞けって!!」
「ちゃんとドラマ視ときなさいよ!」
なんて理不尽な。こんなアホな騒動に付き合ってられるか。
「お義母様、いいんです。和馬の口から素直に言えるようになるまで、私が堕としますから」
「ほら! 母さん聞いた?! コレどう見ても確信犯じゃん」
「なんて深い愛なの......」
耳腐ってんのかクソババア!!
「ま、こいつみたいな男、テキトーに既成事実作れば
なに、JCにとんでもないこと言ってんだこいつ。
「え、良いんですか?!」
良くねーよ。ヤル気満々じゃねーか。
以前、これから彼女を作ったときのために女性経験を積んどこうと思って、陽菜にお願いしようか考えてたけど、こいつは駄目だわ。絶対コンドームを針で穴開けるタイプだわ。
一度陽菜にキツく言っておこう。
「よし、この際だからはっきり言うが、俺は陽菜と付き合いたいとは思ってないからな」
「そ、そんなぁ」
「な、なんてこと言うの......」
「葵さんみたいな巨にゅ......巨大な器(?)のある人が好きなんだ」
「「最ッ低」」
うん、なんだ巨大な器って。“巨乳”って言わないように頑張ってみたけど、二人の反応からしてギリアウトだったみたい。本音を抑えるのは難しいね。
「だから、悪いけど―――」
「俄然燃えてきたわ!」
「ああ、そういうことだから............え?」
ちょっ、何に燃えたの? 火に油を注いだ覚えないんですけど。
「そうだね! 母として息子には『当たって砕ける恋』より、『アタって作れる孫』が見たい」
あんたの気持ちはどうでもいいんだよ。しかも砕ける前提。ちっとは息子を応援しろよ。
アタってって、俺の精子が? なんでもう孫の段階までいってるの。少しは俺の気持ちを汲み取って?
「まずは料理から! 男の玉袋.......じゃなくて、胃袋を掴む料理に挑んでみよう!!」
「はい! お義母様! 私、房中術を頑張ります!」
「............。」
......偶には中村家に
――――――――――――――
ども! おてんと です。
次回で公開数がちょうど200回目なので特別回になります。ご笑納ください。
その後日、この回の続きを公開します。
ええ、例のラジオ回です。会話しかないヤツです。許してください。
それでは、ハブ ア ナイス デー!
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