第144話 千沙の視点 新しい拠点

 「ちょっと兄さん! そっちにアルバ行きましたよ!!」

 「くっそ、こいつの攻撃パターン忘れてた! あっー! HPがッ?!」


 「足引っ張り過ぎですよ! なんで動きにくい大剣を装備してきたんですか?!」

 「そんなことより粉塵! 俺死んじゃう!」


 「嫌ですよ、めんどくさい」

 「この野郎!」

 「あーあ! ソロで行けば良かったー!!」


 現在、22時32分。夜遅くに私は兄さんの家にお邪魔して、一緒にゲームを楽しんでいます。最近、オンライン系のゲームばっかでしたから、偶にはこういった一緒に騒げるゲームをやるととっても楽しいです。


 ちなみに、兄さんはいつも通り私に膝枕させてます。その体勢でよくゲームができますよね。


 でもいつもの無言で膝枕させるのとは違って私の部屋じゃないからか、「きょ、今日もいい?」って聞いてきたのはきゅんときました。


 「あー負けちゃった」

 「兄さん、死にすぎです」

 「う、うるさいな」


 ふふ。移動時間をかけただけの楽しさはありましたね。さて、次はどうしましょうか。リベンジか、別のクエストか.....。


 「あ、もうこんな時間か。ほら千沙、帰る支度しろよ」

 「は?」

 「いや、あんまり遅いと皆に迷惑だろ。今更だが」


 あれ? 私、中村家に帰るなんて言いましたっけ? 今日は兄さんの家で夜通しゲーム覚悟だったんですが。


 「明日の帰る時間まで兄さんの家に居るんですよ?」

 「は?」

 「いや、そもそも私、今日こっちに帰ってくるって家族に連絡してません」


 兄さんが鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてます。面白いですね。


 「いやいやいや! 俺んちで一泊するってか?! お前犯されるぞ!!」

 「か、加害者がそれ言うんですか.....」


 に、兄さんってやっぱり私のことを異性として見てるんですね。それはそれで.....。


 じゃなくて、そんな関係まだ早いです.....。


 じゃなくて! い、一応兄妹なんですから不純はいけません。


 「日々の俺の行いをわかってんのか?! !!」

 「乙女の純潔を“膜”って言わないでください」


 「か、したら治らないんだぞ? いや、お前のことだ。きっと大人のおもちゃでとっくに.......」

 「いや、おもちゃでロストしてませんから。まだ“未貫通”です。というか、“貫通”って言わないでください」


 「悪いことは言わない。帰った方がいい」

 「言動一致してませんよ? なんで必死な顔して財布からゴム出してるんですか? ソレを仕舞ってください」


 久しぶりだからか、今日の兄さんの“ムラムラパラメータ”の変動がすごいですね。何食べてたんですか?


 あ、いや、バイトから帰ってきてからお風呂ってことは、まだ夕飯摂ってないってことじゃないですか。私としたことが。これでは兄を想う妹失格です。


 「そういえば兄さん、晩御飯はまだですか?」

 「? ああ、すっかり忘れてた」


 「なんかテキトーにカップ麺とかカニカマで済ましてください」


 「お、お前は兄を想ってくれないのか」

 「?」


 妹失格って言いたいんですか? いや、それは無いですね。こんなにもお腹を空かした兄のことを想って言っているのに。


 「これから千沙を食べるからいい」

 「っ?! き、キモいです! いい加減にしてください!」

 「き、キモいまで言わなくても.....。何しに来たの、君.....」


 いや、ゲームですよ。


 兄さんは本当にそればっかしですね。男の子って皆こんな考えばかりしているんでしょうか。


 「まぁ、こんなこともあろうかとレトルトカレーがある。本当は栄養がある物を食べたいが、今日はそれで我慢しよう」

 「じゃあちゃっちゃと食べちゃってください。ゲームの続きしたいですし」


 兄さんが私のその言葉にため息をつきました。


 「あのなぁ。こう言っちゃなんだが、中村家の皆は俺のことを信じてくれてるから手を出さないんだぞ」

 「そうですね。信じてます」

 「だからって男の家にそう簡単に泊まるんじゃないよ。俺はまだしも、これからはちゃんと気を付けろよ?」

 「はぁ」


 変なこと言いますね。兄さん以外の男性の家に上がるなんてしませんよ。兄さんが居るからここに来たんであって、他の人の家に泊まりたいとは思ってません。それに私みたいな美少女―――


 「千沙は可愛いんだからさ。心配事を増やさないでくれよ」

 「っ?!」


 か、か、かかわ、可愛いって!


 「ただでさえ生活習慣が糞なんだ。そんな華奢な体が襲われでもしたら一溜まりもないぞ」


 や、やっぱり兄さんは私のことをそういう目で見てたんですね! ちょっと、ほんのちょーっとだけ妹として嬉しいです。


 『プルプルプルプル』

 「んぁ? 電話か?」

 「え、あ、本当ですね。誰ですかこんな遅くに。ったく、常識がなってませんね!」

 「......。」


 突然、着信音が鳴り出したスマホに怒った私を見て、兄さんがため息をつきます。私はスマホの画面を見て、


 「げ。姉さん」

 「お、ちょうど良いじゃん」


 良くないですよ。ここに居ることがバレるじゃないですか。


 「いいですか。兄さんはくれぐれも声を出さないでくださいね?」

 「はいはい」


 兄さんにしては珍しく聞き分けがいいですね。私は姉さんからの電話に出ます。


 「ね、姉さん。こんばんは」

 『あ、千沙! ごめんね、夜遅くに』


 「いえ。どうしたんですか?」

 『いや、変なこと聞くけど、ちょっと心配なことがあってね」


 「心配なことですか?」

 『え、えーっと。今ってどこにいる?』


 なっ?! なんで姉さんがそんなことを私に聞くんですか?! 見た感じ、兄さんがバラすような真似はしてなかったはず。


 「普通におばあちゃんの家に―――」

 「葵さーん、この馬鹿妹どうにかしてくださーい」

 『えっ! その声は?!』


 突然兄さんが乱入してきました。


 「ちょっ! 黙っててくださいって!」

 「知るか。俺は早く飯食いたいし、寝たいんだよ」

 『なんでがそこに居るの?! いや、千沙だよね! ちょっと千沙! どういうこと?!』


 ど、どうしましょう。今日は黙ってここに来たのに、家族こんなことがバレたら反動がすごいですよ。


 「い、いえ。別に」

 『別に?!』


 「そ、それよりなんですか、“和馬君”って。いったい、いつからそんな呼び方してるんです?!」

 『こ、これはそのぉ』

 

 たしか、姉さんは兄さんのことを「高橋君」って呼んでいたはず。急に距離が近くなってません? どういうことかじっくり聞きたいですね。


 「葵さん、話を逸らされてます」

 「なっ?!」

 『あ。というかかじゅ―――高橋君! 妹に何もしてないよね?!』


 「“和馬君”でいいですよ。ていうか、それでお願いします」

 「に、兄さんも話逸れてますよ」

 『質問に答えてよ! 手を出してないよね?!」


 「はて。具体的に言ってくれないとわかりませんね?」

 「姉さんで遊ばないでください。と言いつつ、私も気になりますね」

 『そ、その手をつないだりとか、み、見つめ合ったりとか』


 「「わーお」」

 『や、やっぱり過激かな? えーっと、下の名前で呼び合う仲とか』


 これピュアとか清楚系女子とかのレベルじゃないですね。思わず私と兄さんは現役女子高生とは思えない姉さんに同じ反応をしてしまいます。


 「それだと葵さんもですよ。つい最近、葵さんも自分とそんな仲じゃないですか」

 「そうですね。つまり姉さんは下の名前で呼び合うのもだって主張したいのでしょう」

 『ちちちち違ッ! そんなんじゃなくて!』


 「「葵(姉)さんも意外とえっちですねぇー」」

 『違うのー! これはそういう意味で言ったんじゃなくてぇー!』


 姉さんの悲痛な声が聞こえます。なんというかちょっぴり楽しいです。


 『葵、ちょっと変わりなさい』

 『あ、母さん』


 え、お母さんもそこに居るんですか。


 『泣き虫さん、そこに居るのよねぇ』

 「こんばんは。さっきぶりですね」


 『そうねぇ。泣き虫さんのことは信用してるし、平気だと思うけど、とりあえず千沙をうちまで送ってくれないかしらぁ』

 「元からそのつもりですよ。すぐ向かいます」

 『悪いわねぇ』

 

 なっ?! 本人の意思を聞かずに何勝手に決めてるんですか。


 「いや、さっき兄さんに犯されそうになりました」

 「ちょっ!」

 『え、そ、そうなのかしら?』

 『なっ?! い、妹の最初が.....』


 「さっき財布からゴム取り出して、安全ピンでソレに穴をあけてました」

 「してねーよ! ゴム出したのは認めるけどそこまでしてねーよ!!」

 『せ、せめて避妊はしなさいな』

 『ちょっ、何言ってるの母さん!』


 「ってことで帰りません」

 「意味わかんねーよ! ほら、帰るぞ!」

 『と、とりあえず、泣き虫さんの家からそんな遠くないんだから帰ってきなさい』

 『ひ、陽菜だけじゃなくて千沙まで―――ブツンッ!』


 あっちが半ば強引に通話を切りましたね。なんですか、最後の姉さんの「陽菜だけじゃなくて」って。少し気になります。


 「んじゃ送るから」

 「......。」

 「ま、まだ駄々をこねる気か.....」


 兄さんを無視していると呆れられました。


 .....夏休みが終わってからまだ一週間も経ってません。ですが、あっちに居る間は夏休みに兄さんと過ごした日々を思い出して毎日寂しいんです。でも、そんな恥ずかしいこと言えませんよ。なによりそんなの私らしくない。


 「.....楽しい時間って本当にすぐ終わっちゃいますよね」

 「.....そうだな」


 「さ、帰りましょうか。では兄さん、すみませんが送ってくだ―――」

 「中村家の皆から許可を得られれば」


 「?」

 「毎週うちに来ていいぞ」


 「え」

 「も、もちろん、俺の睡眠時間も考慮して、だ。それに、帰りがあんまり遅いと中村家の皆が心配するしな」


 顔に出てたんでしょうか。


 やはり兄さんは兄さんですね。こうして私を気遣ってくれる、優しい兄です。私はさっきまでの暗い気持ちが嘘だったかのように、快く「はい!」と返事をしてしまいました。


 夏休みと比べて頻度は少なくなりますが、なに、偶には風邪とか怪我をしたとか言って学校を休めばいい話です。そしたら放課後ここに来て、次の日はゆっくりできます。


 「あ、兄さん。いつでも家に入れるよう、合鍵を作りたいんですが」

 「ふざけんな」


 ま、それは我慢ができなかった最終手段として取っておきましょう。



―――――――――――――――――



ども! おてんと です。


以前からの悩みの種なんですが、どうやったらもっと恋愛要素を書けるのか、もっと伝わりやすく書けるのか、勉強の最中です。


たぶん、成長途中だと思うので変な日本語になってるかもしれませんが、許してください。


それでは、 ハブ ア ナイス デー!

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