第62話 葵のブチ切れ

 「わっわわわわ!!」

 「......。」


 ふむ、超やわっこいな。ずっと揉んでいられる。フッ〇船長みたいにこれ片手に24時間くっつけていたい。


 『もみもみ』

 「んっ!」


 声エッロ!!


 「高橋君、いい加減にして!!」

 「あ、はい」


 俺はおっぱいを手放す。ああ、どっか行っちゃう......じゃないよ俺。


 「す、すみません」

 「最っ低だよ!! 助けてくれたのはありがたいけど、完全にも、ももも揉み始めてたよね?!」

 「自分もありがとうございました」

 「こちらこそ!! ほんっと最っ低だね!」


 返す言葉もない。はい、その通りです。わざとです。魔が差しました。


 「しかも二回もっ!!」

 「はい、反省してます。一回にしておくべきでした」

 「回数の問題じゃないよっ!!」

 「......。」


 そうですね、たとえ高速で100回揉んだとしても、慎重に思いを込めて1回揉んだとしても結果は同じだったでしょう。怒られるだけだ。


 「うぅ、もうお嫁にいけないよぉ。あんなに揉まれて」


 “あんなに”って。二回ですよ? なんて口が裂けても言えない。涙目の葵さんも愛らしいです。これも言えない。


 「じ、自分の嫁になりません?」

 「今そういうセクハラいいよ!! ほっといて!」


 やべ、ガチギレだ。まいったな...調子に乗り過ぎたな俺。そうだよね、嫌だったよね。反省しなければ。


 俺は深く頭を下げて謝罪をする。もちろんこんな事で許されるとは思っていない。


 「葵さん、本当にすみませんでした」

 「反省してるんだったらまず、かっかか謝ってよ!」


 おっと、心とは裏腹に愚息はパンパンになっていたらしい。気づかなかった。まさか誠心誠意の謝罪がバカ息子のせいで逆効果になるとは。


 っていうかよくそこ真っ先に見ましたね、葵さん。あなたもなかなかだと思います。


 「おーい二人共、どうしたんだい?」


 少し離れたところでトラックでやってきた雇い主が俺たちに声をかける。


 実はお宅の娘さんの胸を揉みましてね。へへ。最高でしたよ。なんて言ったらバイト野郎の余命は1分もないことが予想される。


 「な、なんでもないよ、父さん。今行く!」


 葵さんは口外しないらしい。ありがとうございます。


 さて気まずいぞ。なんとかして機嫌を良くしてもらわなければ。


 俺は倉庫についてから雇い主と二人でパイプを倉庫にしまってしまっていく。力作業になるため男性の仕事である。ちなみに待たせるのあれだから葵さんには先に帰宅してもらった。


 「結構思ったより早く仕事片付いたね、お疲れ」

 「...お疲れさまです」

 「?」


 倉庫で片付けている途中で雇い主が労いの言葉をくれた。


 「どうしたんだい? 浮かない顔して」

 「いえ、別に」

 「なにかあったら抱え込まずに相談しなさい」

 「おじさん...」


 ちなみにまだ雇い主の名前がわからないので、極力呼ばないようにしているが、もし呼ぶときは今みたいに「おじさん」で呼んでいる。


 俺はそんな雇い主の言葉に甘えて上辺だけの内容を話す。真実なんて言えるわけない。


 「実は自分が葵さんに粗相をしてしまって...」

 実は俺が葵さんのおっぱいを揉んでしまって...


 「どうにか機嫌をなお―――ぐへっ!!」

 「なにぃ?! 葵に何をしたんだ!! 白状しろ!」


 急に胸倉を掴んできた雇い主。真実を告げなくてもこれだよ。なんで抱え込まないで相談しろって言ったの? ちゃんと言葉で解決しよ?


 「待ってください!! あなたと場合じゃないんです!!」

 「なにぃ?! どこをっていうんだ?!」

 「へぶっ!!」


 俺は雇い主に投げ捨てられ、馬乗りされる。“揉める”をどういう脳内変換したらそうなるだ。馬乗りにするんじゃなくて、ちゃんと相談に乗ってよ。


 っていか人体で揉む場所なんか、おっぱいしかなくね? あ、尻もか。くっ、変態おれとしたことが! あとで千沙に謝ろう。


 「誤解ですよ!! ちゃんと助言してください」

 「?」


 俺は雇い主の誤解を解き(本当は事実だけど)、相談する。


 内容は「バイト野郎が気づかないうちに葵さんに嫌なことを言ったらしい」という嘘の内容である。事実を言ったらマジで俺、畑と一緒に耕され兼ねない(生き埋め)。


 「なるほどねぇ」

 「はぁ...どうしたらいいんでしょうか」

 「方法は三つある」


 なんとっ?! ま、まさかそんなにあるとは。内容はいかに。


 「まず一つ目。ここは誠心誠意の謝罪をただただ繰り返す。土下座という形でな。まぁ真由美はそれでも許してくれないが」

 「なるほど」


 最後の一言は聞きたくなかったな。雇い主の土下座を想像したくなかった。


 ふむ、これがベターだな。葵さんのことだから頑張れば許してくれそう。よし、これは最終手段としよう。


 「次に二つ目。時間が解決してくれることを祈る。真由美にはこの方法が逆効果になった。あんま当てにならないね」


 あんま当てにならないなら提案しないでほしい。まぁ早期解決が望ましいからこの方法は無理かな。


 「最後に三つ目。これが一番かな」

 「?」

 「日頃の感謝を込めたお礼を謝罪と兼ねて行動にすること」

 「プレゼントや、行動で示せってことですか?」

 「そゆこと」


 なるほど。家事は難しいけど贈り物や、なにかの手伝いをすると言った行動でお礼をすると...。


 「ど? 参考になった?」

 「はい、初めて―――じゃなくて、言い参考になりました」

 「今、初めてって言わなかっ―――」

 「自分なりに頑張ってみたいと思います! ありがとうございました!! じゃ、お疲れさまでした!」


 俺は倉庫にパイプを片付け終わったので雇い主を置いてその場を去る。


 よし、をすれば、葵さんも機嫌を直してくれるはず!! なに腕に自信はある。ふふ、一石二鳥じゃないか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る