第56話 千沙の視点 意外な共通点
「なっ?!」
「はい、また俺が1位ぃー」
現在14時21分。私と高橋さんは先ほどから私の部屋でマルオカートをして時間をつぶしています。外は雨のため止むまで仕事が無く、暇そうにしてたため誘いました。
このゲームは新作で、私が所持してることから本来であれば私の方が有利なはずなんですが...。
「どうして貴方がこんなに強いんですか?!」
「さぁ? まぁゲームをするなら全力だから。俺、雑魚相手でも一切手加減しないから」
「ざっ?! それに私にアイテムぶつけすぎですよ!!」
「そういうゲームだろうが!」
「じゃあゲームを変えます。ふふ、これなら難しいでしょうねぇ」
「?」
私はゲームボックスからマルオカートじゃないゲームを探し出し、得意ジャンルで彼をボコします。
ゲームを収納している棚からあるゲームを探します。おっ、ありました、ありました。最近私はコレを遊んでませんが、オンライン対戦では負けが10回やって1回有るか無いかのレベルの猛者ですからね、私。
「じゃじゃーん、大乱闘スマート・ブラザーズです!!」
「お、スマブラか! いいね、俺も好きで先週までやってたよ!」
「.........。」
「いやー全キャラ使いこなせるまでにすごい時間かかったなぁ」
「...............。」
「あ、もちろん全力な!」
「.........................ええ、問題は戦績ですからね、戦績」
「?」
お互い、最初は好きなキャラクターを選んで対戦しました。私は最初から推しのキャラで彼に挑みます。
ところが突然、
「痛っ!」
「ん? どうした?」
先ほどトラクターの修理をしていた際、また肌荒れが増し、コントローラーのボタンを変なところで押したせいか痛みがありました。
やはりこの痛みは何年たっても慣れませんね。....ゲームに集中できません。
「何でもありません。....続けましょう」
「...............なぁ、“
「なんですか?」
「あ、いや何でもない」
「変な人ですね」
「変態に言われたくないな」
「それは貴方もでしょう」
どうでもいいようなことを話しながら、しばらく良い勝負をしてたのですが、
「やっぱキャラは“お任せ”にしね? どっちが上か下か決めよーぜ」
と、煽ってきましたので受けて立ったところ惨敗しました。
「キャラの引きが悪いんですよ!! ずるいです! なんでガ〇ンドロフなんですか?!」
「そういう条件だからだろうが!」
「くっ結構自信あったのに.......」
「はは、雑魚が!」
「っ?!」
私たちは時間を忘れてこのままゲームをしていると、
「あのぉ、その声は二人共そこにいるの?」
「「?!」」
姉さんが部屋の外に居ました。ゲームに熱中しすぎたのか私たちはお互い声を掛けられるまでまったく気づきませんでした。
「ね、姉さん?! すみません、入ってきてください!」
『ガラガラッ』
「あのね、二人で遊んでいるところ悪いけど、高橋君にそろそろ仕事再開してもらおうかなって.......」
「ああ、了解です」
「ちょっ勝ち逃げですか?!」
「仕事優先に決まってんだろ」
「えぇー」
「また後でやっから、それまで待ってればいいじゃん」
「.....わ、わかりました。」
私としたことが、つい熱中しすぎてしまいました。遊ぶ人数が一人ではなく二人になっただけでこんなに楽しいとは。
私は仕方なく諦め、午前中に頼まれていたトラクターの修理の続きに取り掛かります。外に出ると雨はすっかり止んでいて、じめっとした肌にべたつく空気を感じました。
「んしょっと。あれ、これでも駄目ですか。オイルシールも一応変えましたしオイルも補充したんですが.......」
エンジンをかけても警告灯が消えません。もう一回分解し直して見直してみましょうか。壁に掛けてあるアナログ時計を見るともう18時21分です。外はまだ明るいですが、倉庫にいる私には関係ありません。
かなり長いことやってましたね。まぁ機械の掃除も含めて結構手の込んだ作業をしてましたから当然といえば当然です。
「いやしっかし高橋さんには腹が立ちますね。私、結構ゲームに関しては自信があったのですが.......」
つい、このような作業をしていると先ほどの高橋さんと遊んでいたことを楽しかった思い出してしまいます。
あれほど他人とやってゲームを楽しめたのはいつ以来でしょうか、それとも初めての感覚なのか、少し変な感じです。
「夕食後も誘ったらまた付き合ってくれますかね.......ってまたですか」
オイルに触れてしまい、軍手が汚れます。
「本当に面倒ですね.......手も、軍手してこの汚れですよ。最悪です」
「おっ、やっぱ千沙か。電気点いているから作業していると思ったよ」
「あ、高橋さん。仕事はもう終わりですか?」
「おう、早いけどキリが良いから終わりにしてくれた」
私が倉庫で作業していると所々に泥汚れのある作業着姿の高橋さんが入ってきました。彼はグルっと360度ゆっくり回転して辺りを見渡します。
「すげぇな。よくわからん器具からでっかい機械までなんでもある」
「まぁ一応お父さんより前の、お爺ちゃんの代からここはありますし、メンテナンスに必要な物は大体あります」
「千沙もすげぇな」
「私ですか?」
「そりゃあ女の子なのにこんなでかい機械を修理できるなんて」
「..............そうですね」
“女の子なのに”この言葉は本当に嫌いです。今まで自分がやってきたことが間違っていたことかのように否定されているみたいで、他人から言われたくない言葉ですよ。
「手伝わしてくんない?」
「え、いやいいですよ」
「これ重いんだろ、力には自信ある。俺も勉強になるし、トラクターだっけ? こんな内部見れるなんて滅多ないよ」
「で、ですが」
「邪魔なら諦めるが」
“邪魔”なんて言えませんし、正直、部品の一つ一つが鉄製で出来ていて重いんですよね。高橋さんに甘えましょう。
「......ではお願いします」
「おう、頼むよ先生」
先生って。私たち同い年ですよ? と言っても私の誕生日はまだ先なので彼が一つ上なのですが。
さてまだ夕食までに時間がありますし、少しだけ頑張りますか。
面倒くさがりな私が、意外にもやる気をだして頑張ろうとしました。明日は槍が降ってきちゃいそうですね。
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