第36話 まじギルティ?

 「それで?」

 「彼女を助けるべく、あの男たちに立ち向かいました」

 「ふーん。裸でねぇ」


 上半身な。そこんとこ大切だから、フルじゃなくてハーフは全然違うから。


 俺は今、署にて50代のおっさんから事情聴取を受けている。原因は言わずもがな。美少女を助けたかっただけなのに。


 俺は持ち物を一通り、出して見せた。もちろん18禁の物もな。それに関しては法律上、まったく問題ないんだが、


 「おっ、人妻モノか。若いくせに冒険するねぇ」

 「..........。」

 「こっちは洋モノじゃねーか。やっぱ胸からナニまで全然違うよなぁ」

 「..................。」


 俺はずっと顔を机に伏せる羽目になった。


 この人は俺の学生証とか容姿で判断したのか、まったくこちらを疑う感じがしなくなった。信用したってことかな。でもイジるのはやめてください。恥ずかしくて死にそうです。


 「はぁ........でも肝心の被害者がなぁ」

 「? どうしたんですか?」

 「逃げたんだよ」

 「え」

 「いやね、君を車に乗せるまでいるかなっと思ったら、いないの。保護できなかったってこと」

 「それは災難ですね」

 「君が暴れるからだよ」

 「..................。」


 そりゃあ最初はじっと見てようとか思ってたよ? でもさ結局は天使が勝っちゃって、服脱いで突入したんだよ。


 でも俺が捕まるのはおかしくない? だからちょっと受け入れがたくて、駄々こねたというか、暴れたというか、納得できなかったんだよ。


 「あの、ちなみになんであそこに来れたんですか?」


 あそこは人気がなく、お巡りさんが巡回するとこじゃないだろ。偶々ではないはず。


 「近くのバーの店員からね、なんか上半身脱ぎ始めて、暗がりに走っていった男の子がいるって、通報があったからさ」

 「..................。」


 俺だな、それ。いやまさか、俺が通報されるとは思わなかった。


 すると、コンコンと扉をたたく音がした。


 「お疲れ様です、日下部さん。これ、あの二人の資料です」

 「お、サンキュ」


 そう言って、資料をもらい、見始める日下部という男。貫禄のあるこのおじさん、日下部って言うんだ。


 おそらく“あの二人”はチャラ男たちのことだろう。捕まったんだな。ざまぁ。


 「ふーん、この資料見る限り、君、彼らと関係ないね?」

 「最初っから言ってるじゃないですか」

 「ま、君の学生証見たら、二人と関係ないことくらいすぐわかったけど」


 なら、早く家に帰らして?


 「じゃ、木島君、この子を出口まで........いや、駅まで送ってってあげて」

 「はぁ」

 「よろしく」


 やっと解放されたわ。俺なんも悪いことしてないし、当然だよね。


 「それと高橋君」

 「はい?」

 「形はどうあれ、一人の女の子を救ったのは他でもない、君だ」

 「........。」

 「相手がナイフを持ってたかもしれない。仲間を呼んだかもしれない」

 「..................。」

 「それでも君は戦うことを選んだ。男として、君は勇気あることを成し遂げた。胸を張りなさい」

 「........はい」


 なんでだろうな。さっきまで人のお宝を赤裸々に公開処刑した人なのに、なんとも憎めない感じである。脱いでよかった。


 俺は調子に乗ってたのか、日下部さんにをした。すると日下部さんは


 「ふっ、生意気に....」


 そう言って、敬礼を返してくれた日下部さん。やっぱプロは違うなぁ。


 「....ちなみに俺は乱交プレイ派だ」


 ............敬礼して後悔することってあるんだな。しなきゃよかった。


 日下部さんの笑顔まじギルティ。犯罪の意味でな。

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