第六章 休みはもらえないんですか? 

第34話 期待で色々膨らむぞ、ぐひひ

 「あっつ」


 天気は晴れ。時間帯は18時頃。そして日付は8月1日。うちの高校は今日から夏休みである。まだ18時頃じゃあ空が暗くなるには早すぎる。


 「よし、着いたな」


 本当はさっそくバイトしたかったんだが、ちょっと大都会まで買い物しなければいけないので今日は半日プライベートを満喫する俺である。


 ではその買い物とはなんなのか、ふっ。


 「大都会まで来たんだ、お目当ては18禁以外ありえないだろ?」


 そう、俺はお宝を買いに来た。理由は二つある。


 まず、家にあるには飽きた。違うのを見てみたい。


 次に陽菜の野郎がぶっ壊したから、補充も兼ねて買いに来た。あいつ、数学の一件以来も何回かうちに遊びに来て、その都度、俺の見てない所で人のお宝をぶっ壊して帰るから、もう発狂しそうである。


 目的地に着き、俺は暖簾のれんをくぐる。


 「おー、良い品揃えてますねぇ。ぐへへ。あっ、これとか良いかも」


 と俺は1つのパッケージを手に取ろうとする。


 タイトルは“ドキドキ、禁忌の兄弟愛、愛情フルバースト”と書いてある。妹と兄の禁じられた愛らしい。たまには良いかもしれないな。にょほほ。


 だが、なんと俺と同じ考えの男がいたのか、そのパッケージに他人と手を重ねてしまった。男となんてやだよ!!


 しかしその手は小さく、感想でもしてたのか、少し肌が乾いていてザラっとしていた。男の手じゃないってことくらいはわかる。


 「「.............え」」


 相手も予想はしていなかった模様。お互い驚く俺と。.............なんでここに女の子がいるの?


 「ちょっ!! 触らないでください!!」

 「あっいやごめん」


 しかも超が付くほどの美少女。黒髪ロングでハーフアップなんだけど、内側を赤に染めている。いわゆるインナーカラーってやつか。前髪も綺麗に切り揃えていて、おかっぱみたい。身長は160もないな。


 「な、なんでここに、いるんですか?」

 「っ?!」

 「ここ、暖簾のれんの中ですよ?」

 「ま、間違えて入ってしまったんです!!」


 俺がそう聞くと出口へ走り出す彼女。ふ、普通に考えて、それはないだろ。


 俺は気分じゃないのか、当初の予定ではもっと買う予定だったが少量にしてしまった。


 店を出て帰ろうと思い、駅に向かった。もう空は暗く、店の明かりが点いていて夜って感じだ。さすが都会。いつでも人で賑わっている。

 

 そんな中、人気のない、ビルとビルの間で暗がりの中、なにかもめているような声が聞こえてきた。


 「な? いいだろ? お茶しよーぜ?」

 「離してください!」

 「君、可愛いねぇ。どこ高?」

 「ちょっと触らないで!!」


 これはひょっとしなくても、“ナンパ”じゃないだろうか。特に無理矢理的なやつ。その場に3人居て、うち2人がチャラ男で、もう1人は女の子。可哀想に。


 「いーじゃん、いーじゃん。奢るからさ?」

 「そうそう、楽しも??」

 「しつこいですね。こちらも出るとこ出ますよ?」


 というか、この子さっきの暖簾の中にいた子じゃん。インナーカラーが赤で目立ってたからすぐわかったよ。


 君可愛いし、そりゃあナンパされるよ。ここは大都会、なにが起こってもおかしくないからね。


 いやぁ、これがナンパかぁ。助けられる自信はないけど、なんとかしてあげたいな。でもまだ見てたいな。葛藤の連続である。


 立ち位置的にあの子の死角に俺は居るから全然ナンパウォッチできるしさ。俺ってば、控えめに言ってクズだな。


 「おっ? なになに、ポリスマンでも呼ぶ?」

 「っ?!」

 「でもさ、そもそも俺らがそんなこと許すと思う?」

 「こ、来ないでください!」

 「な? お互い気持ち良くなろ?」


 まずい、このままでは彼女の貞操が危ない!!


 くぅ、俺を中心に右と左で葛藤が止まらない。男のロマンあくま欲望まおうがうるさいぃぃ!!


 .............いやなんだ、悪魔と魔王って。相反することなく、どっちも同じ属性じゃねーか。


 「きゃっ!!」

 「おっ、あんま胸ないねぇ」

 「俺はそっちのほうが萌えるな」


 チャラ男どもは彼女を囲む。うち1人はどうやら美少女の胸を揉んだ模様。


 うらやま....じゃなくて!


 ずるいぞ、俺も参....じゃなくて!!


 ああ、もう!!


 警察なんか呼んでる暇ないし、なにより、今の俺は期待に胸と息子が膨らんでしまっている。つまり、視姦の罪で俺も捕まる。

 

 「へ、変た――ンン!!」

 「静かにしてろよ」


 彼女の口を塞ぐチャラ男。そんな美少女の目は―――とても怯えていた。


 「どうする? ここでヤッとく?」

 「いや、とりま車に乗せ―――」


 「いや、俺はお前らをこれからヤるわ」


 「「は?」」


 俺は筋肉を見せびらかし、下半身を、チャラ男どもの前に参上する。


 あっ、ヤるって“殺る”の方ね?

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