第26話 保健なんて独学だ!(ただし一部のみ)

 「「かんぱーい!!」」

 「.......乾杯」


 ポニ娘と世話焼き娘が俺ん家で勝手に乾杯している。佐藤(桃花の保護者)さんと葵さんに言いつけようかな。


 「お兄さん暗いね!」

 「和馬も嬉しいでしょ? 美少女が2人も遊びに来たんだから」

 「そうそう。JCにお酌して貰えるなんて頼んでも無理だよ」

 「ほらほらどんどん飲みなさい!」


 酔ってんのかな? シラフでこれとか、もうついていけないんですが。


 俺は部屋がニオってないか、気が気でないんですけど。


 「お前ら、勉強は?」

 「英気を養ってからぁ」

 「からぁ」


 う、うぜぇ。


 「テストはいつからなん?」

 「来週の水曜から」

 「お兄さんもテスト?」

 「おう、来週の月曜からだけど」

 「「近っ?!」


 そうだよ。まぁ勉強はそんなしないからあんま急ぐ必要ないんだけど。もう全部復習して頭に入っているし。


 「もしかして今週の土日アルバイトしに来ないの?」

 「いやそれは行くけど」

 「そ、そう。ならいいわ」

 「?」


 なぜか陽菜がほっとする。何か急ぎの仕事でもあるのだろうか。


 「余裕だねぇ、お兄さん。頭良かったりする?」

 「普通だと思うけどな」

 「あっこれもしかして中間試験の結果?」


 やべ、さっき何が不得意な科目かを確認するために、試験結果の一覧表の点数で判断しようと思ってテーブルに出しっぱであった。


 「こ、これが普通。桃花見なさいよ。この科目ごとの順位。どれも1年生137人中10位以内よ」

 「うっわ。これでとか、謝った方がいいよ。特に陽菜に」

 「そうそう私に.....っておい」


 コントしている2人をよそに俺は適当にこいつらが買ってきた菓子を食べている。


 「なに陽菜、お前頭悪いの?」

 「わ、悪くないし。普通だし!」

 「ひどいよ? 脳みそがサル世代に戻ったみたい。」


 この子の毒舌どうにかなんないのかな。


 「くっ見てなさい。次の中間で上位とるから」

 「今回の期末試験でとりなよ? 諦めるの早すぎ」

 「不得意科目は何なんだ?」

 「英語を除く、5教科かしら」

 「あぁ、数学22点だったよね。私聞いたとき、絶句しちゃったよ」


 俺も軽く引いた。中学で? 部活に脳みそ使いすぎたのかな? だから頭と胸に栄養がいってないのね。なんて言ったら、ポニ娘と俺のデスマッチが始まりかねない。


 「桃花は?」

 「私はそんなにないかな」

 「桃花、勉強しなくても普通に80点越えだよ」


 まーじか。それ頭良すぎない? 俺だってがっつり勉強したくないから、少しずつやっているのに。


 「はは、たまたまだよ」


 こういう言い方する奴はたいてい頭が良いやつである。俺の人生経験だが。


 「じゃあ、今日は陽菜の勉強を手伝うのか」

 「そうだね。リアル育成ゲームだよ」

 「頑張りなさい!!」


 頑張るのはお前な? 俺と桃花は別にいいんだよ。っていうか桃花ちゃん、完全に陽菜の扱い方雑な気がする。


 「んじゃ、何の科目からやろうか」

 「そうね。まずは数が―――」

 「まずは保健体育でしょ!」


 .........は? いや、それは各自でやれよ。科目に重要性を語るのもあれだが、普通に考えて、5科目から手を付けない?


 「え、桃花、私そんなに保健体育苦手じゃないよ? それに教科書は―――」

 「ノーノー。陽菜、教科書はここにあるよ」

 「?」


 そう言って桃花は急に立って、リビングにあるテレビのところへ向かう。


 「あっ、待て!!」

 「ポチっとな」

 『ウィーン』


 DVDプレーヤーから一枚のDVDが出てくる。


 「ほらこれよ! 陽菜!」

 「? 何よそれ」

 「か、返せ!!」


 俺は桃花からDVDを奪おうとするが、桃花は陽菜にパスする。


 「メガネ女教師、〇倫地獄....24時フルバースト? ってこれまさか?!」

 「教科書だよ」


 いや、それ俺の保健の教科書ぉぉぉおおおおお!! 教科書っていうかDVDだけど期末試験と全く関係ないやつぅぅぅうううう!!!


 「あ、あああんた、こんな」

 「くっ。仕方ないだろ! 俺だって男なんだぞ!」

 「お兄さんが開き直ったぁ」


 こ、こいつ。初めて家にあがったのに何でわかったんだ。ってか、わかっても普通、容赦なく親友にさらす?


 「あ、あんた眼鏡が好みなの?」


 なお、ポニ娘はどちらかというと俺の性癖が気になる模様。言わねーよ。バカなの?


 「あぁ、はいはい。もういいよ。バレたんだ、俺はもう気にしない」

 「私は隣人だから気にするんだけど。お兄さん、暑いからって網戸にしたまんまはよくないよ? この前、ベランダに出たら普通に聞こえたんだもん」

 「.....。」


 まーじか。これは俺が完全に悪いぞ。喘ぎ声という騒音被害が出てしまった。だからDVDプレーヤーに入ってるのわかったのね。この子の辞書にはプライベートという文字がヒットしないらしい。


 「さ、最低。こんなのばっか視てるなんて。クズ! 変態! 巨乳好き!」


 ぼろくそ言われる俺。最後のだけ正解だけど、男の子なんだからしょうがないじゃん。


 「もう帰ろ! 桃花! こんなところで勉強なんて、特に保健の勉強はできないわ!」


 他はできるんかい。


 帰れ帰れ。俺も心がずたぼろだよ。お前らのせいでな。


 「え、えぇー、帰るのぉ」

 「ほら、早く! 犯されるわよ!」


 犯さねーよ!! いくら可愛くても、一時の快楽で J C に性犯罪とか笑えないわ。


 「え、えーっとごめんね? お兄さん、今度お詫びするから」

 「へいへい」

 『バタンッ』


 ......なぜか俺はひどく疲れた。特に心が。


 「もう今日は飯食って寝よ」


 そう言って俺はあいつらが散らかした場所を片付け、放置されたDVDを手に取る。


 『ポロッ』


 陽菜あいつ、俺のお宝。

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