第25話 机に教科書置いたら勉強と言える
「あ、ちなみにこの前、私の髪を急に触ってき―――」
『ガチャッ!!』
くっそ!! 開けてしまったじゃないか!!!
「あ、お兄さん。こんにちは」
「か、和馬? こんにちは」
「......こんにちは」
「やっぱ居留守だったんだね?」
くっ。バレたか。わかっててアレ言うなら君、最低だよ。
「ねえ! さっきの“髪を触った”ってなによ!」
「え~、なんのことかなぁ。そんなこと言ったかな私ぃ」
桃花め、ニヤニヤしながら俺を見やがって。俺も急に触って悪いと思うけどさ。
「と、ところで、二人とも何しに来たんだ?」
「ちょっ! 話そらさないでよ!」
「えーっと、お兄さんちで勉強したいなぁって? いいよね」
桃花ちゃんの最後の「いいよね」が疑問形じゃないところ、もう確定事項で怖いんですが。
「はは、悪いなぁ。今先客が居て、二人の相手はできないんだよ。ごめ―――」
「いやね? お兄さんが嫌がる私の髪を掴んで、ヤラシ―――」
「おぉぉぉおおおおっと!!!! 陽菜、お前の肩に虫がついてるぞ!!」
「え、嘘っ?! どこ?!」
こ、こいつ。そんなに俺んちに上がりたいか! お前らが家に入っただけで俺が犯罪者になるこの空間を!
っていうか桃花、お前、なに“嫌がる”とか“ヤラシイ”とか付け加えてんの? でも“髪を触った”という事実があるだけで、強く言い返せないんだけど。
「お兄さん、先客って? 誰? 学校のお友達?」
「そ、そうそう!」
「へぇ。.......ほら見て、陽菜、靴を。この靴と長靴がお兄さんので、もう1つは何かなぁ?」
なっ?! うちは3人家族で玄関にあるのは、全部で3足ある。
俺はローファーとバイト用の長靴を置き、父さんのは2足あり、うち1足を履いていき、もう一方は家だが、臭いのでベランダに持ってった。母さんも同じである。ただし臭くないのでそのままだ。
つまり、男物の靴2足と女物の1足。
陽菜! 勘違いするな!!
「あ、ああああんた! と、友達って、まさか女の子?!」
「ちっ! ちが―――」
「陽菜ぁ、私たちは邪魔だから大人しく退こう?」
なんて奴だ。ここまで性格悪い女、初めて見たぞ。
「そ、そんなぁ。彼女いたのぉ」
「私たちがいると勉強できなんだよ? 愛の
まるで世界の終わりかのように思える絶望しきった陽菜の顔。泣きそうなんだけど。これ、俺が悪いの? どんだけ俺んち邪魔したかったんだよ。いや、それどころじゃない。
「だぁぁああああ!!! 違う違う! これはな、母さんの予備の靴だ!」
「ふぇ? お、おかあさん?」
「そうそう!」
「え、じゃあ、先客は?」
「えーっと....帰った!!」
「い、いつ?」
「今今今今今!」
何言ってんの俺。陽菜の絶望フェイスに動揺しすぎてもう支離滅裂だわ。
「お、お兄さん、それはさすがに....。ここ玄関だし」
「いやいやいや、ベランダから帰ったから今誰もいないぞ!」
「え、居ないの?..................もう! どっちよ! まったく!」
なんか陽菜の奴、元気になってるし。どーしよ、これから。
「じゃあ、勉強会できるね!! お邪魔しまーす」
なお、全ての元凶はお構いなく俺んちに入る模様。もう諦めるしかないな。
俺はそう思い、先頭に立ち、こいつらをリビングに連れていく。
「......でも本当にいなくてよかったぁ」
なんか最後尾の陽菜が小さい声で言ってるが、お前そんなに俺んちで勉強会やりたかったの?
先輩だからって教えられる科目あんまないぞ。受験終わってから大して復習なんかしてないしな。
「うわぁ、これがお兄さんちかぁ」
「同じアパートなんだから、佐藤さんちと一緒だろ」
「いやぁ家具の配置とか他人の家の独特なニオイとかいろいろと違って感じるよ」
その“いろいろ”って思春期でしかたなくデちゃうニオイの話でしょうか。
陽菜と桃花ちゃんはスーパーで買ってきたらしいジュースやお菓子を取り出した。
「ほら! まずは乾杯からよ! 和馬、グラス出して!」
「あと氷もね! お兄さん!」
「..................。」
勉強しないなら帰ってくんない?
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