閑話 葵の視点  スマホも縦に折ればガラケー

  「「..................。」」


 ど、どどどどーしよ、この状況! バレちゃったよ! 私の100ある人には言えない秘密の1つが!


 ちなみにランキングで言うならばこれはかなり上位で10位以内に入る。ってそんなこと考えている場合じゃないよ、私!


 「......えーっと」


 ああ、恥ずかしくて彼の顔見れない。だって目の前にガラケーを使っている現役女子高生がいるんだもん。目とか見れない。うぅ、ほんと恥ずかしい。


 「えーっと」


 ほら、葵! 彼が困っているでしょ! 年上なんだからリードしなきゃ!


 「えーっと」


 さっきから彼が「えーっと」しか言ってない。世界がループしているみたい。でもそうよね、こういう時はなんでもなかったのかのように振る舞わないと余計恥ずかしくなるに決まっている。...よし、今よ!


 「が、ガラケーとは珍しいですね」

 「っ!?」

 

 先手をうてれたぁ。もう自白しよう。大丈夫、彼は優しいから変に気を遣ったり、変な目で見ない、きっと。アレ、いっかい学校で味わったからもうこりごりなの。


 「その、すみません。葵さんがガラケーを使っているとは知らずに先ほどあんなことを言ってしまい、傷つけてしまったのなら、本当に申し訳ありません」


 年下に気を遣われたぁ。もう駄目だぁ。


 「そ、そうじゃなくて、いや、それもあるんだけど、でも、やっぱり変だよね。女子高生になのに使

 「.....スマホ使えなかったんですね」

 「え、あ、今のはその、えーと、...........はい、使えません」


 あ、ああ!! 自分で自分の首を絞めてどうすんのよ私! そうよ、使使の手があったじゃない!


 「なんでかな、陽菜や千沙は普通に使えるのに。操作が難しいていうか、その画面の情報量に追い付かなくて。苦手になっちゃった」

 「..................。」

 

 彼は幻滅しちゃっただろうか。私みたいな文明に追い付けない田舎の中の田舎者。


 「あれですよね。年々、便利に進化していくのはいいですけど、過去にスマホの経験がないと使いこなせないような機能とかたくさんあって面倒ですよね」

 「そ、そうそう! そういうとこ行けないと思う! 平たいから間違ってどっか押しちゃいそうだし、寝て操作したときとか画面がくるくる回って目疲れちゃうし。とっても扱いずらいと思う!」

「そうですよね。わかります。...........さ、では作業に戻りましょう。時間は有限です」


 か、彼はもしかして理解者じゃないのだろうか。その気持ちすっごくわかる。


 それにこの前、父さんに変な内容のメールを送られてきて、いわゆる詐欺メールなんじゃないの? という結論を出していた。こういうのすっごく怖いと思う。なら送られてきても見なきゃいいでしょ(物理的に)。


 「うん! でもパイプちゃんと打ち込めそう?」

 「少し試したいことがあるので離れてください」


 なにかコツを掴めたっぽい。良かった、やっぱり男の子だなぁ。


 『ガンッ!!』

 「おお! すごい!」


 思わず声が出ちゃう。


 「なにかコツをつかめたんだね! これでネットの方は何とかなりそう、ありがと高橋君」


 ちゃんと入っている! これを繰り返していけば何とかネットは張れそう。


 「コツというか、まぁはい、残りもすぐやってきます」

 「気を付けてね? 怪我しないように」


 怪我でもしたら彼と仕事する機会が減っちゃうもの。こうして彼が残りのパイプを打ち込み、組み立てていく。やっとスイカ畑を作ることができた。


 普段、家族で取り掛かることだからさすがに疲れちゃった。

 

 「終わったし、父さん呼ぶね」

 「お願いします」


 もう彼の前で普通に電話しちゃお。


 「あと10分くらいでこっちに来れるそうだよ」

 「了解です。.......ところで葵さん、ガラケーのことなんですが、スマホのこと陽菜ちゃんとかに訊かないんですか?」


 痛いこと訊かれた。


 「うっ。教えてくれるけど、全部を全部聞くのが申し訳なくて、かいつまんで聞いても、なかなか操作が覚えられないのぉ」


 陽菜はともかく、千沙の私を見るあの白い目。もうあんな顔見たくないのが本音である。


 「いっかい、陽菜に4桁のパスコード忘れたの言ったらドン引きされちゃって...」

 「さ、さいですか」


 そういえば陽菜にも白い目で見られたことある。可愛い妹2人にあの目線は姉として辛い。


 「誕生日とかじゃないんですか?」

 「そうすれば良かったんだけど、スマホ買った日付にしちゃったの、誕生日だと安直すぎるから。案の定、3日くらい使わなかったから忘れちゃったよ。はは」


 はは、じゃないよ私。誕生日がわかりやすすぎるからって、買って3日も使わなくて忘れる私がほんと馬鹿みたい。


 「よろしければどこか空いた時間で教えますよ?」

 「えっ、いいの?」

 「ええ、そのくらいお安い御用ですよ? ちなみにこう見えてスマホはリンゴとアンドロメダどっちも使いこなせるくらい知識は十分にあります」


 彼、優しすぎない? ちょっと力仕事と言い、スマホのことと言い、私の中ですごく頼れる人なんだけど。


 「あ、ありがとう! 助かるよぉ。陽菜は訊きすぎて白い目で見られるし。何よりこれから人前でガラケー出したくないもん」

 「はは、頑張りましょう」

 「私は良い後輩をもったなぁ」


 私たちが話している間、父さんが迎えに来てくれた。普段は彼が気を遣ってか、私がトラックの助手席に乗るのだけれどさっそくスマホのことで聞きたいことがあったから、彼のスマホを見本として簡単に教えてくれた。


 彼の教え方はとってもわかりやすくて、家帰ったらさっそく自分で復習しよ。


 教えてもらう際、やっぱり顔とか距離が近くなる。私、汗臭くないかな。というか高橋君の匂い、やっぱり男の人の匂いだなぁ。ってだめだめ、集中集中。


 というか荷台ってよく揺れるんだね。久しぶりに乗っ―――


 「きゃっ!」


 なにかの弾みで私は高橋君にぶつかっちゃった。


 「ご、ごめんなさい」

 「ありがとうございます」


 私が即謝ったら、彼は即感謝してきた。


 「え、なにが」

 「いえ。ほら続けますよ」


 変なの........。そう言って彼はスマホのあれこれを教えてくれる。学校でも男友達はいるけど、彼が異性だからかこういった会話を家業のうちでするのは新鮮だ。ちょっぴり楽しい。


 ほんと私は良い後輩をもったなぁ。

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