第7話
――うん。
何とも広い。
結局、空が学園に編入することは確定していたらしく――テストも何もしなかったので、コネを使って入学したと思われる――、しかも早々やる気がなくなってしまうような、最優秀クラスに編入させられた。
まだクラスには顔を出していない。
多分だが、こちらの世界の学生もきっと、もう編入生が来るという噂がこの学園にも広まっていることだろう。
聞いたところ、この学園は寮生活らしく、しかも、二人で一部屋、つまりルームシェアらしい。正直、クラスよりも先にそちらを教えてほしかった。流石に、筋骨隆々のマッチョとかと一緒の部屋だったら、マジ逃げ出すからな。
で、名前も知らない、多分学園長的な人に連れられて空は、クラスへと向かった。
――。緊張する……。
どんな奴らがいるのだろうと、当たり前のごとく勉学のことは視界に入れないように考えて、気付いた。
日付が、分からん……。
もしも、もしもだが、今があちらで言う三月辺りだったら、編入するタイミングがおかしいだろう。四月なら、全然オッケーだが。いや、ありがちな話、七、八月ぐらいだろうか。まあ、教室に行っても、教えてはもらえないだろう。教えてもらえたとしても、元居た世界とは違うため、分からない。字の読み書きもできない。
一言で言って――ヤバい。
何故そんなことに今まで気づかなかった。いや、気付いていたかもしれないが、軽く考えすぎていた。
「もう教室だよ」
――オワッター。
読み書きもできない。しかも、どういう名前で――細かく言うと『勇者』なのか、それとも『空』なのか――。だがよく考えたら、空なわけない。だって空は、空と一言も発していない。
なら勇者でいいのだろう。
少なくとも――文字通り少なくとも、勇者の名前の書き方と、ゆ、う、しゃ、の書き方は、左胸に刺しゅうされているので分かる。
そして、扉の前に立ち。
覚悟を決めて――今までの引きこもり生活をなかったことにできるように、今。
教室への、第一歩を――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます