第2話

「――――――」


 ?????????


「ここ――どこ……?」


 分からない。自分は誰だか分かっても――ここは明らかに空の知っている地球ではない。

 いや、もしかしたら地球なのかもしれない。しれないが――。

 果たして、空の周り――つまり日本に、これほど『荒んだ』場所があるのだろうか。

 一面地平線が顔を見せている。背の高いビルたちや家が並ぶ日本では絶対に見られない景色だろう。

 そして、一番の不祥事が。

 何故、先程まで冬だったのに。

 これほどまでに温暖になっているのか、という問題だ。

 布団にくるまってようやく寒くなくなるを感じた空にとっては、その違いは明白すぎる。

 まず――布団が存在していない。これで季節が冬なら、俺はその中で寝続けたことになる。その想像をするだけで身震いするほど寒さ嫌いの空は、まずそれはないと考える。

 次に――誘拐された可能性。

 それを確認するために、ポケットに入っていた――たまたま入れたまま寝ていたスマホを取り出し、方位磁針を起動させる。ここが地球なら、どこが北でどこが南かも分かるはずだ。

 だが――開こうとした方位磁針のアプリを起動することすらかなわなかった。

 携帯の端に存在するはずの上に伸びた幾つかのバーはバツマークに存在を否定されていた。つまり、ここには電波がない。

 どれだけ深呼吸しても、どれだけ頬を叩いても、空の周りはやはり――変わることなく荒野のままだった。

 かくして最後の可能性。それは――。


「異世界転移……」


 まさか。いや、そのまさかの可能性が、今までで一番の可能性を秘めているなんて、思いたくもない。

 ――。

 ?

 何故。

 何故俺は、元の世界に。

 戻りたいと、思っているんだ?

 あの世界を見限って、この世界に来たのならば――。


「願ったりかなったりだ……」


 思わず笑みがこぼれる。

 ――この世界は、せめてあっちの世界より、マシであってくれよ……。

 そう心に誓い、空は何をするかというと――。


「――――ん――――。何をしようか……」


 空が持っている物は、今着ている服とポケットに奇跡的に入っていたスマホのみ。スマホに関しては、充電器がないため、その寿命が尽きたらもう出る幕のない電子機器になってしまう。――もちろん、この世界の文明の発達具合によって変化する話だが。


 いやねッ!? こういう世界って大体さ、魔法とか鉱石とかの類でどうにか出来ちゃうもんじゃない!?


 ――っと、取り乱した。

 さあ、これからどうしようか。

 とりあえず現状は――。


「荒野に召喚され、周りに家の一つもなく、人一人いなく……そして、食べ物があるわけもなく……」


 あれ? あれれ?

 もしかして――。


「俺の異世界人生――もう、詰んだ……?」


 いやいや。流石に、そんなことは、ないは、ず……。

 そしてもう一度周りを見渡してみても――誰もいない。

 ああ――。詰んだと。

 そう思ってしまった。

 きっとどんな異世界召喚ものでも空より絶望した人はいないだろう。

 異世界来てすぐ死ぬかもしれないってどんなんだよ……。

 でもまあ、何とかここから生きながらえるんだろーなー。

 と思っていると、スッと。

 岩陰から何か飛び出してきたのが見えた。

 影の大きさは――空の背丈の少し小さいぐらいだった。

 つまり、人間の可能性が高い。

 だが、二つ謎なことがある。

 その影は――とてつもなく速く動いていた。自転車より速く。いや、目視なのでそこまで正しくないだろうが、自転車よりは速かった。

 そして――謎のエフェクトが出ていた。

 もしかしたらあれは、魔法だろうか。

 そう思った瞬間――空は喜び、反面、がっかりした。

 魔法の存在を知れたこと――スマホの充電ができないことが高確率でありうること。

 はあ。

 とりあえず、あの人影を追いかけよう。――じゃないと俺の今後の生活が確立されない。

 そっと足音を立てず忍び寄る。

 幸い、その人影は岩の陰から出てくることなく、空はその人影の背中を見ることができた。

 全身を布で包み、顔はおろか髪さえも見えない。

 ――自分より小さいため、人間ではなくドワーフ的な何かかも、と頭によぎったが、よしておいた。

 さらに慎重に距離を縮め――。

 そして肩に手


「ぎゃああああああああああああ!!!!!」


「ぎゃああああああああああああああああ!!!」


 を乗せた瞬間、二つの――低い音と高い音が、荒野の中心で汚い音を奏でた。

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