第302話 番外編 30


「さすがお兄ちゃん! 頼りになる~! あっ! それはそうと、そこに木下君いるでしょ! 今すぐ木下君にお払い行くように言って! ものすごい悪霊が憑いてるの! お兄ちゃんも危ないから今すぐ逃げて!」


凜は慌てふためいて言った。


葵は振り返って、腰を抜かして倒れている、今にも瀕死の類を見た。


「栗原さん…、どうぞ行って下さい。悪霊が取り憑いた俺のそばなんかにいたら、あなたに危害が…。」


類は今にも死にそうに言った。


いかにも葵の為を思って言ったようにみえて、実は葵が怖くて早くそばを離れたい気持ちもあった。


葵は、ものすごい形相で類の腕を引っ張り上げた。


「ぎゃあぁぁぁぁーーーーー! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい! 助けてくださいぃぃぃぃぃーーーーー!」


類は泣きわめいた。


次の瞬間、類は葵の広い背中におぶされていた。


「あ、葵さん…?」


葵は類の学生カバンも拾い上げて、類と類におぶさっている怨霊をおぶって、お堂の階段を下っていった。


「お、俺、ものすごい悪霊憑いてますけど…。」


類の情けない顔に涙が流れ落ちた。


「困ってる人間を、ほっとくわけにいかないだろ! 寺に連れてくよ。」


「葵さぁ~ん! 俺、一生ついていきますぅ~!」


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