第282話 番外編 10


 光は大学の仲間や教授たちと今日はこのままこのホテルに泊まる事になっていたので、安藤が旭を家まで送って行った。


「何かずっと不機嫌じゃん。」


帰りの車の中で、旭が安藤に言った。


「不機嫌とかじゃないけど…。」


「自分よりハイレベルな男に会って落ち込んでるな?」


「…。」


「図星だ!」


「…。」


「私の自慢の兄ちゃんだからね!」


「ブラコンかよ。」


「そかもねー。実際、光よりいい男って見たことないし。」


「あっそ。」



 そうこうしているうちに車は旭の家の前に着いた。


「送ってくれてありがと。」


「…あのさ。」


「ん?」


「…。いや、何でもない…。」


「そっか。じゃね。」


旭はドアを開けて外に出た。


しかし何か思いついたのか、また車の中に入ってきた。


ハンドルを握っていた安藤の手を取ると、ポケットから何かを取り出し、安藤の手のひらにのせた。


「つまらないものですが。」


そういうと、旭は車から降りて、家の中へ入っていった。


安藤は旭が家の中に入るのを確認して、改めて手のひらを見てみた。



― 自分が大嫌いなあなたへ 

     なりたい自分になる方法 ハンドブック ―



はぁ~???


何なんだよ!この本!


アイツ、俺のこと何だと思ってんだ!

 

クッソー。


 

…つか、いつの間にこんな本持ってきてたんだ…。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る