第281話 番外編 9


「安藤君20歳なんだ。僕より1こ下か。医学部なの? 優秀なんだね。」


「ま、一応。全然たいした事ないですけどね…。」


光が誉め言葉に安藤はまんざらでもない風だった。


「うん、確かに全然たいした事ないけど、安藤! 気にしなくていいから。」


旭はお気の毒に、と言わんがばかりの顔で安藤を見た。



は? 


この女は俺の謙遜をそのまんまの意味でとってんのか?


俺を哀れみの対象だと思ってんのか?


アホか? 


アホなのか?


俺は旧帝国大の医学部だぞ!


じゃ、おまえのにーちゃんはもっとスゲーのかよ?


んなわけねーよな!



「光はETHだよ。」


「何それ?TDLとかUSJとか、そういうの? アミューズメントパーク関係のお仕事?」


旭は吹き出して、おまえは計り知れないバカか? というような顔で安藤を見た。


安藤はムっとして、スマホでETHを調べた。



チューリヒ工科大学(スイス連邦工科大学チューリヒ校)


卒業生にアインシュタイン、レントゲン???


世界大学ランキングも10位以内の常連校???



安藤は一気に不機嫌になった。


「ま、海外の大学は日本と違って、入るのはわりと簡単だけど、卒業が難しいっていうよね。」


安藤は負け惜しみのように呟いた。


「そうそう! そうなんだ。レポート尽くめの毎日で、試験も難しいし、俺ほんとに卒業できるかなって。楽しい大学生活、憧れてたんだけどな~。」


光は安藤をフォローした。






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