第280話 番外編 8


「こいつは…、友達のノエルの家の…奉公人。」


「そうなんだ…。若いのに偉いね…。」


光は安藤を思いやるように言った。



奉公人! 


奉公人! 


奉公人!


俺のこと友達んちの奉公人って言いやがったな、今!


しかもこのイケメンも完全に俺のこと奉公人と思ってやがる!


俺、同情されてやがる!!!



エベレストより高い安藤の自意識が雪崩を起こしそうになった。


尊敬されこそすれ、一目置かれこそすれ、女達からは憧れられてきた安藤は、ここまでコケにされたことが無かった。


そのショックか、言い返す気力ももはや枯れ果て、足がフラフラになってぶっ倒れそうになった。


「大丈夫ですか?」


光というイケメンは、倒れそうになった安藤を支えた。


「はじめまして。今泉光です。妹がお世話になっています。」


光の笑顔からこぼれる真っ白な歯に、安藤は目が潰れそうな気がした。


「はあ…、光…さん…、いも…えっ? 妹? えっ? 何? お兄さん?!」


安藤は正気を取り戻した。


「んだよ、おまえ。お兄さんかよ! ったく、早く言えよ!」


妙に安心しきっている安藤を旭は面倒くさそうに見た。


光はせっかくだからと、二人をロビー横の喫茶に誘った。


旭は嬉しそうにメニューにならぶ美味しそうなデザートに目をキラキラさせていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る