第276話 番外編 4


「栗原!これ、うちの運転手の安藤君。」


類は前髪をかきあげ、男前風に凜にそう言った。


「木下君の家って、運転手さんいるの~? すご~い! 車もすごいね~! カッコい~!」


凜は目をキラキラさせて言った。


「ま、それほどでもぉ~。」


類はまたもや前髪をかきあげ、いい気分で凜に自慢した。

 


「は? 何言ってんの? おまえ?」


安藤がそう言いかけていると、校門から旭が出てきた。


旭は車の方を見ると、安藤と目があった。



旭よ! 


この俺がまさか自分の高校の前までお出ましになっているとは思うまい!


強がりなのか恥ずかしさなのかは知らないが、大人の俺が許してやろう。


さあ、おいで!



旭は安藤と目は合ったが、ノーリアクションですぐに進行方向に向かってサッサと歩いて行った。



はぁ~~~?


あ~~~?



今、確かに目があったよな?


俺に気付いてないとか?


…というか…まさかほんとに俺の事忘れてんのか???



「栗原~、どっか行きたいとこない? 俺が連れてってやるからさ、この車でっ!」


類は何度も何度も前髪をかき上げまくって言った。


「え~、今から? どうしよ~。でも、木下君ちの運転手さん、カッコいいよね! 助手席に乗ってみたいな~。」


凜は安藤をチラチラ見ながら完璧なとまどい顔で言った。


安藤はそんな二人を無視して車を発進させた。


「おい、安藤先生~! どこ行くんだよ~! ま、行ってしまったものはしょうがない。で、どこ行く? 栗原。」


類は目力を入れて凜に迫り寄った。

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