第269話

「おっ!ウマそうじゃん!」


類が横から手を伸ばして、広げてあったお菓子をパクパクッと食べた。


「おまえに持ってきたんじゃないー!」


旭が類に怒鳴り上げた。


「あぁ~? こんだけあるんだからいーじゃん、ちょっとくらい。おまえそんなんだからモテねーんだぞ!」


「はぁ~? モテますぅ~!モテまくりだっつーの! つかおまえの方が全くモテねーだろ!」


「あぁぁぁ~?」


まったくこの二人は仲がいいんだか悪いんだか。


「みんなで仲良く食べよ!」


俺が諭すと、二人はしょうがなく言い争いを止めた。


旭の持ってきたお菓子は本当に美味しかった。


あっという間にたいらげてしまった。


 じーちゃんがあの街の介護施設に入居してからこの何ヶ月間で、本当にいろんな事が起こった。


辛い事や嬉しい事が、怒涛の如く押し寄せてきた。


たった数ヶ月なのに、何年も経ったような気がする。


アインシュタインの言うように、時間の流れって、相対的なんだなって実感した。


そんな荒波のような時間も過ぎて、これからはまた普段の暮らしが戻ってくるのだろう。


今日みたいに類と旭とバカ話をしながら笑いあったり、テスト勉強で苦しんだり。


そして俺にはノエルもいる。


この先また辛い事があるだろうが、仲間がいれば乗り切れると思う。


この平和で自由な世界を大事にしよう。


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