第268話

「え~、これは親戚が送ってきたパウンドケーキで、それはもう栗がゴロッゴロ入ってて、もうほんとに超巨大な栗にかぶりついてる感がハンパない! という激ウマな代物です。続きまして~こっちはうちの母親がPTAのバスハイクに行った時にお土産で買ってきてくれたワラビ餅。これをそんじょそこらの野生のワラビ餅だと思うな! なんとこのワラビ餅には高級苺が練りこんであるっ! 心して食べなさい! え~、続きましてぇ~…。」


「…旭…、何? どしたの?」


俺の机の上に、旭は次々とお菓子を置きながら延々と講釈を垂れていた。


「え~、こちらは明太子を練りこんだおせんべいで~…。」


「だから、旭ちゃん、どした?」


俺はなだめるように言った。


「…、じーちゃん死んで、乃海が落ち込んでると思ったんだよ!」


「慰める為におまえの大事な大事な、ほんとは独り占めしたい宝物のお菓子を持ってきてくれたのかっ?」


旭は目を瞑って、苦虫を噛み潰したような顔で頷いた。



ほんとはきっと独り占め食べたかったのだろう…。


俺は旭の優しさに感動してうち震えた。


あの食意地の張った旭が俺にお気に入りのお菓子を差し出すなんてっ!


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