第266話

 夕方、電車でノエルの家まで送っていった。


ノエルは俺の帰りが遅くなるから一人で帰ると言っていたのだが、強引に電車に乗り込んで、ノエルを無事家まで届けた。


「乃海君…帰り一人で大丈夫…?」


ノエルは俺を心配していた。


「男だから襲われるなんてないだろうし、心配しなくていいよ。」


「そういう事じゃなくて…乃海君のおじいさん亡くなった後だし、心細くなってるんじゃないかなと思って…。」


「心配いらない。家に着いたら連絡するよ。」


「そう? くれぐれも気をつけてね。連絡待ってるから。」


「じゃあ後でな。」


「うん。送ってくれてありがとう。」


そして俺はそのままとんぼ返りで来た反対方向の電車に乗った。

もう外は真っ暗だった。


車窓から大きな月が見えた。


月はすごい速さで俺を追っかけてくる。





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