第265話
ノエルは火葬場まで付き合ってくれた。
俺はノエルに一緒にいて欲しかった。
待ち時間、外のベンチに二人で座った。
風が冷たかったが、何となくそこに座っていたかった。
ノエルは自販機で温かいミルクティーを買ってきて俺に差し出した。
「乃海君のおじいさん、最後に会ったとき、うちのおばあちゃんと同じこと乃海君に言ってた。おばあちゃんも私に自分の気持ちを大事にして生きなさいって言ってた。」
「そっか…。うちのじーちゃんとノエルのおばあさんが、二人の長い人生から学んだ教訓だな。しっかり心に留めとかないとな…。」
「そだね…。」
ノエルからもらったミルクティーのプルトップを開けると小さく湯気が舞い上がった。
飲むと一気に体の中が暖かくなった。
じーちゃんの抜け殻を見て、俺も抜け殻のようになっていたのが、ミルクティーの温かさのおかげで我に返った気分だった。
「これ、ほんとに私が持って帰っていいのかな?」
ノエルは封筒に入っていた写真を見せて言った。
「じーちゃんが澄子さんの部屋に飾って欲しいって言ってたからそうして欲しい。遺言みたいなもんだからな。」
「そっか。じゃあそうさせてもらうね。」
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