第264話

 棺桶の中に横たわるじーちゃんは、とても穏やかで優しい顔をしていた。


葬儀には、ノエルも駆けつけてくれた。


そして旭と類、何故か安藤まで参列してくれた。


ノエルから聞いたのか、旭から聞いたのかは不明だが、安藤はじーちゃんと澄子さんの話しを聞いていたらしく、終始涙目だった。


あいつも涙する事があるのかと少し驚いた。 



俺は葬儀の間、不思議と涙一つ出なかった。


出棺の前に、あのラジオと澄子さんから預かったマッチ箱の入った封筒を棺桶に入れた。


じーちゃんの遺体を見て、人の体って、本当に入れ物なんだなと思った。


俺は霊感などないが、やっぱり魂はあるのだと思った。


魂の抜けたじーちゃんの体は、抜け殻という言葉がぴったりだった。


そもそも嘘とは思ってないけど、石田さんのように霊が見える人がいるのもわかる。


体から抜け出たじーちゃんの魂は、あの世へ行って、また然るべき時に生まれ変わるのだろう。


俺とノエルも生まれ変わったように。



次の人生でもまたあの二人が出会えますように。

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