第249話

「ノエル、俺から言おうか?」


ノエルに聞くと、ノエルは俺の目を見て頷いた。


「じーちゃん、落ち着いて聞いて欲しいんだけど…、その…、澄子さんは、この間亡くなった。」


じーちゃんは表情を無くしていた。


「ごめん…。俺がもう少し早く探し出せていたら会えたかもしれないのに…。じーちゃん、ほんとにごめん!」


じーちゃんはしばらく動かなかった。


いや、動けなかったんだと思う。しばらくして、小さな声で呟いた。


「そうか…。」


俺もノエルも言葉を失っていた。


出来ることなら会わせてあげたかった。


心残りを残したまま会えなくなるのって辛すぎる。


俺はじーちゃんと澄子さんの事を思うと、涙が出そうになった。


「乃海、ノエルちゃん、ありがとうな。」


じーちゃんは笑顔で俺とノエルに言った。


俺はノエルから預かっていたカバンをベッドの上へ置いてノエルに目配せした。


「乃海君のおじいさん! 私、祖母から預かっていた物があるんです。」


ノエルはバッグからラジオを取り出してじーちゃんに渡した。


「…このラジオは…!」


じーちゃんは、信じられないような顔でラジオを見た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る