第247話


 じーちゃんのいる施設に着いたのは昼過ぎになってしまった。


ノエルと話していると、あっという間に時間が経ってしまう。


ノエルがじーちゃんと会うのはこれが初めてなので、少し緊張しているようだった。


じーちゃんはあんな性格なので、緊張する必要など全く無いと言ったのだが、それでもやはり緊張してしまうみたいだった。


ノエルのおばあちゃんからあんな切ないラブストーリーを聞かされていて、その悲恋の相手と初めて会うんだから、まあ、それは無理はないかも…。


施設の入口に入ると、石田さんが俺たちに気付いて駆け寄ってきてくれた。


「乃海くん、いらっしゃい。こちらの可愛い子は、さては彼女?」


「そうです。」


俺が応えると、石田さんはニコニコして俺たちを見た。


「水原ノエルです。はじめまして。」


「こんにちは、ノエルちゃん。石田です。よろしくね。」


石田さんはそう言うと、しばらく何も言わず、ノエルの後ろの方を見ていた。


そして小さく頷いて、そっかそっか、と独り言を言った。


「おじいちゃん待ちくたびれてるよ。乃海はいつくるんだーって、いつも言ってる。ノエルちゃんが来ること、おじいちゃん知ってるの?」


「祖父にはまだノエルのことは言ってないんです。実は…ノエルはじーちゃんの探していた澄子さんの孫なんです。」


「そっか…。おじいさんも喜ぶね。」


石田さんは少し悲しそうな笑顔で言った。

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