第245話


 俺とノエルは、澄子さんが住んでいた離れに行った。


ノエルはかつて澄子さんがノエルにしてあげていたように、お茶を入れて和菓子と一緒に俺に出してくれた。


「うちはね、パパは本当に忙しい人だし、ママも仕事の鬼だから、おばあちゃんが私を育ててくれたようなもんなんだ。」


「へぇ~、意外だな。ノエルのママはノエルみたいにおっとりしてるタイプかと思ってた。」


「ううん、真逆だよ! すごいよ、うちのママ! パパと一緒にうちの会社で働いてるんだけど、陰の支配者は実はママで、社員さんたちからは鬼軍曹のように恐れられてるもん…。」


「…ノエルもいつか隠れた本性が開花して鬼軍曹になるのかな…。」


「えー、それは嫌だなー。あ、別にママが嫌いとかではないよ! ママは根は優しい人なんだけど、私に対する期待が大きすぎちゃって…。私、不器用だから、何やってもそこそこなんだよね…。勉強だって家庭教師までつけてもらってるのに、理系科目は絶望的だし。ママは私の為にいろいろ習い事なんかをさせてくれるんだけど、それもすごくプレッシャーで…。親の思うような子供になれないんだ…。」


ノエルは肩を落として溜息をついた。

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