第222話


 車は市街地へと向かった。柳並木の大通りで、路面電車が走っている。


「!」


俺はノエルの手を握り締めた。


この街は、夢の中で見た街だ!


俺が健二で、ノエルが由紀子だった街だ!



街の様子は変わっているけど、あの夢で見た街の名残が確かに残っていた。


横を見ると、ノエルも窓の外の街並みを見て驚いていた。


あの街だとわかったのだろう。


ノエルは俺を見て頷いた。


この先の角に由紀子の実家がやっていた書店があったはずだ。


車がその角の前を通った。


しかしその場所に書店は無かった。


かわりにコンビニになっていた。


初めて由紀子に会って、その横顔に釘付けになってしまった事や、四葉のクローバーを探してあの書店に届けた事や、四番橋で待ち合わせた事が走馬灯のように頭の中を巡った。


あんなに大好きで会いたかった由紀子が、今こうして横にいる事に、俺は泣きたいような嬉しい気持ちになった。


 車はさらに進み、大きな川に出た。


窓の向こうに四番橋が見えた。


そして柳の木も健在だった。


やっぱりあの夢は俺たちの前世だったんだと確信できた。


ふとノエルを見ると、目にうっすら涙を浮かべていた。



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