第216話 トラクター王国の話 前世の恋よ再び3


「どこのどなたか存じませんが、私には心に決めた方がおります。ご好意は大変嬉しく思いますが、あなたのお気持ちを受け入れることは出来ません。」


娘は貴族の息子の申し出をきっぱり断った。


「そんなに簡単に決めないでください。私はあなたに贅沢な暮らしをさせてあげられる。あなたを幸せにできる自信があります。」


「申し訳ありません…。」


貴族の息子が必死に説得しても、娘は首を横に振るだけであった。


「今日はとりあえず帰らせてもらいます。でも私は決してあなたを諦めない! ちなみにあなたをそこまで頑なにさせる幸せな男はどなたなのでしょう? それくらい教えていただけませんか?」


貴族の男がさも悲しげに訴えかけてくるので、娘は男の事が少し哀れになって、自分の想い人の名を告げてしまった。

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