第199話


旭が言うには、旭一家は旭が小学生だった頃、父親の仕事の関係で、何年間かスイスに住んでいたことがあって、向こうにいるときに母親がものすごくおでんが食べたくなり、でもおでんの材料すら存在してなく、向こうのスーパーに売ってある食材でなんとかおでん風の鍋を作ったらしい。


「練り物系は現地のスーパーに無かったんだけど、タイの人がやってるショップには練り物っぽい魚のおだんごがあって、それを使ってたの。タイだけあって、辛くておいしいんだよね。あと、向こうの野菜とか手羽先とかドイツソーセージみたいなハーブが入ってたり塩系のパンチのきいたソーセージ煮込んだりして、美味しいんだよ。おでんの出汁は売ってないからブイヨン使ってた。」


旭は今にもヨダレを垂らしそうな顔で言った。


「それって、ポトフ…?みたいな…?」


俺が恐る恐る言うと、


「おでんっ!!!」


クワーっと言った…。



俺たちはスイスおでんに想いを馳せながら家路を急いだ。


ああ、ダメだ…。


完全に口の中がおでんになってしまった。


今晩のごはん、おでんでありますように!



なんだかんだ言いつつ、俺の自習にさりげなく付き合ってくれてるこいつらは、やっぱ優しいな。


持つべき物は友だ!俺は感謝と好意を顔面に表して二人に微笑んだ。


二人も俺に生暖か~い微妙な笑顔を返してくれた。


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