第182話


 ノエルの家は高い塀で囲まれていた。


門の入り口は二つあって、大きな二枚扉の入り口と、その横に勝手口風の小さな入り口があった。


小さな入口と言っても普通の家の玄関ドアくらいありそうな大きさだった。


門を入ると横に4~5台くらい入りそうな車庫があって、前は和風の日本庭園が広がっていた。


向かって左が母屋で右が離れで母屋と離れを渡り廊下で繋いである。


母屋はモダンな感じで、木材と金属をカッコよく組み合わせて、ガラスの壁と言ったほうがいいほどのデカイ窓がある。


ドイツ車のカタログに出てきそうなモダンな造りだった。


一方離れは和風モダンな感じですごく落ち着いた雰囲気だ。


多分こっちに澄子さんが住んでいたんじゃないだろうかと思った。


「こっちが私の家で、向かい側がおばあちゃんの家なの。」


思ったとおりだった。


ノエルは俺を連れて澄子さんの家の方へ行った。


鍵を開けて中へ入ると、木のいい匂いがした。


ノエルの見せたい物は、澄子さんの寝室にあるらしい。


ノエルは寝室のドアを開けて俺を中へ通した。


「どうぞ。」


澄子さんの部屋は、柔らかい空気に包まれていた。


いる筈もない澄子さんが、いるような気配が漂っていた。


窓から月明かりが漏れて、室内を照らしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る